第2話
車の中で時間を潰してから式場に入るともう始まっていたみたいでスタッフの説得に少しばかりの労力を消費して入る。
ケーキ入刀。お涙頂戴の親への感謝。波乱壮絶映画顔負けの恋愛。新郎サイドの友人によるレクリエーション。
当然だが全部知らない。相手のことも。突如行われたサプライズのことも。
数ヶ月とかかけて2人で考えたりしたのだろうかと思ってしまう。
きっとあの数ヶ月より何倍も重く何倍も幸せであっただろう数ヶ月。
さっきの騒ぎでヒビが入った心にしっかりと釘を刺された気分がした。
やっぱり来るべきじゃなかったんかなと思う。
でも間違いなく最後なのかと思うと来るべきだったのかとも思う。どっちなんだよ。
気づけばマスクの下で唇を噛んでいた。そうしなければ嗚咽が漏れてしまいそうだったからだ。
全身が痛くて退出する。トイレに向かう。
幸いこんな時に式場の中に入らずトイレに来てるアホは他にいなかった。
これまで抑えていた感情が溢れ出す。
これまで枯れていたと思っていた涙が溢れ出す。
他のことで押さえつけ焦点を合わせなかった感情が。
必死に言い訳をして幸せを願ってたということにしていた感情が。
好きだったんだ、ずっと。
忘れられなかったんだ、ずっと。
だから祝えなかったんだ。
幸せになってほしいから始まったおもいは一緒に幸せになりたいを通り越して俺以外の奴と幸せになるなんて許せない、までいってしまったのだ。
もっと一緒に過ごしたかったし、高校生なりに永遠なんて幻想を夢見て重いよななんて笑ってたかった。
もう機会なんてない絶望的な状況。
あの日からそうだったはずなのだが。
どうやらこの期に及んでまだ希望を抱いていたらしい。
ただただ全身が痛かった。内側からグチャグチャになりそうだった。
でも、嬉しかった。ほっとした。
どこまでも悲しかったけどどこまでも穏やかだった。
あれから俺は忘れてなかったのだ。この気持ちを。あれほどまでに好きだった気持ちがそのままだったのだ。
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