第三章 学園編
第38話 波乱の幕開け! 今日から俺が学生!?
「クナン、王立の学園に通わないか?」
セレンさんにそう言われたのは俺が目覚めてからおよそ一週間後のことだった。
なんでも、この国では生徒の視野を広げることなどを目的として最前線に立つような実力のある冒険者を教師として毎年一人招くらしい。
その招聘される冒険者にセレンさんがどうやら選ばれたらしいのだ。
「もちろん、無理にとは言わない。ただ、学園に通えばたくさんのことを学べる。学園では生徒同士の決闘もあるから、対人戦も磨かれるだろう。そもそも、冒険者以外の生き方も見つかるかもしれない」
確かに。
学園に通うメリットは大きそうだ。もしかすると冒険者よりも稼げて安全な職業だって見つかるかもしれない。
《① セレンさんは俺についてきて欲しいんですか?》
《② 生徒と教師の恋愛ってどう思います?》
返事は殆ど決まっていたのだが、こんな時にも俺が神を名乗る存在から与えられた《ゲームシナリオ》という能力が発動した。
まあ、①については俺も少し気になる。
セレンさんに愛していると言ったり、セレンさんの弟に「セレンさんを幸せにします」とあいさつしたりとおよそ一週間前まで俺はセレンさん好きをアピールしていた。
まあ、半分は《ゲームシナリオ》のせいだが。
しかし、セレンさんは特にそこに触れてこなかった。
ここまで放置されると俺としても気になるところだ。その点、①の質問は非常にいい問いかけだと思う。
セレンさんが「はい」と答えれば、恋愛感情化はさておき、少なくともセレンさんに好意を抱かれているとみていい。
逆に「いや、別に」と答えられれば脈なしだ。さっさと諦めた方がいい。
②は遠回しに「セレンさんを狙ってるぜ☆」みたいな感じがしてキモいので却下だ。
「セレンさんは俺についてきて欲しいんですか?」
早速、セレンさんに問いかけてみる。
すると、セレンさんは固まった。
かなり長い間固まっていたセレンさんだったが、深呼吸を一度してから、
「ついてきて欲しい」
と小さな声で呟いた。
「勘違いするなよ。まだ私は師匠としてお前に全てを伝えきれていない。そんな中途半端な状態でお前を冒険者として独り立ちさせるのは、私のプライドが許さない。それだけだ。それだけだからな!」
「あ、はい」
早口で全部を聞き取れたわけじゃないが、とりあえずセレンさんは俺についてきて欲しいらしい。
え、俺のこと好きなの?
まあ、これだけで勘違いするほど俺も単純な男ではない。
なんにせよ、セレンさんからも求められているわけだし学園に通わないという選択を選ぶ理由はどこにも――
《① やれやれ、仕方ないですね。セレンさんがそんなに俺と一緒がいいっていうなら行ってあげますよ☆(ウインク)》
《② 誰が行くか! バーカ!!》
ウザスギィ!
行きます、でいいんだよ!
なんでわざわざウザい言い方させようとすんだよ!
とはいえ、②を選ぶわけにもいかない。
嫌で嫌で仕方ないが、ここは①しかない。
「やれやれ、仕方ないですね。セレンさんがそんなに俺と一緒がいいっていうなら行ってあげますよ☆」
と、ウインクをしながら告げる。
セレンさんはそんな俺を見て真顔に変わると、ため息を漏らしてからどこかへ歩いて行った。
穴があったら入りたかった。
*
まあ、そんな困難も乗り越え、無事に俺は王都にある王立パニエら学園に入学した。
ちなみに編入試験は楽勝だった。
嘘です。
算術と言語学はなんとかなったけど、歴史と魔法学はちんぷんかんぷんでした。
ただ、選択問題では《ゲームシナリオ》がいい仕事をしてくれた。
《① 2を選ぶバカとかいるわけねーだろ》
《② 3を選ぶ奴はカス。ハッキリわかんだね》
《③ 4を選ぼうとしてるやついる? いねえよなぁ!》
とまあ、こんな感じで俺が誤った選択をしようとすると煽りと共にヒントをくれたのだ。
数少ない《ゲームシナリオ》という能力に感謝した瞬間である。
そして、今日は遂に入学初日だ。
ちなみに俺が所属するクラスはアイアンと呼ばれているらしい。
なんでも、この学園では各学年ごとにプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズ、アイアンの五つにクラス分けが行われるらしい。
成績、家柄共に優秀なプラチナ、成績もしくは家柄が優秀なゴールド、ゴールドほどではないがそこそこ優秀なシルバー、成績も家柄も悪くはないがよくもないブロンズ。カスのアイアンである。
うおい! カスってなに!?
仮にも王立の学園が生徒のことカスとか言っていいの!?
ちなみにカスのアイアンに所属する生徒はここ十年いなかったらしいが、なんと今年は三人もいるらしい。
え、誰だよその恥ずかしい奴ら、ウケるんですけど。
『 クラス分け
〇プラチナ
……
〇ゴールド
……
〇シルバー
……
〇ブロンズ
……
〇アイアン
クナン
ノーマン
ルフス 』
俺かよおおお!!
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