第10話

「夏帆さん」

居酒屋で仁一朗が串カツを二度漬けしながら

告白した。

「好きです。愛しています。ボクと結婚してください。」

「だって、アナタ親のすねかじりのプータローの

ひきこもりのニートのクソッタレじゃない」

だが、夏帆はにべもなかった。

「ウッ、きついなあ。でも夏帆さん。ボクは愛情だけは

誰にも負けません。きっとアナタを幸せにします。

だから」

「愛情ねぇ」

そこで夏帆が軽く仁一朗を嘲笑った。

「おかしいですか」

真顔になる仁一朗。

「ううん、別に。昔、わたしに同じようなことを

いって告白したどっかのバカがいたから」

「はあ」

「お金を用意して。わたしと結婚したかったらなるべく

たくさんのお金を用意して、あなたの誠意を見せて頂戴」

「千円ぐらいでもいいですか」

「いいわよ。それがあなたの最大限の誠意ならね。でも

わたしはきっとあなたのわたしへの愛情はその程度のものじゃないかと

判断するでしょうね」

「親から無心した金でも」

「いいわよ」

「ふーっ」

仁一朗が大きくひとつため息を吐いた。




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