第7話

「もう、夏帆と結婚しちゃえ」

野菊が腕組して怒ったように言った。

「なに、プンプンしてんだよ」

仁一朗がわけがわからずに、聴き返した。

部屋の中には二人以外誰もいなかった。

飛行機の音が聴こえた。

音はだんだんと大きくなり、そして小さくなって

やがて消えた。

「オレには心に決めてる人がいるんだ」

「えっ?」

「野菊」

「プータローのくせに」

「やかましいわい。せっかくいいところなのに」

「ごめん。本当に嬉しかったわ」

「なんで」

「なんでって」

二人の間に気まずい空気が流れた。

「あたしじゃないのよね」

「あっ、あたりまえだろ、なにいってんだよ」

「ひきこもりのニートだもんね。女を愛する

資格なんてないわよね」

「やかましいわい。いちいち言葉にトゲがあるな、

おまえ」

仁一朗が腕組みして野菊を睨んだ。

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