余・小さな魔女の散歩道
#1
お正月も、私は散歩に出る。
私は家に居ない方がいい。お正月は何故か、家に『あっち側』の子達が増えるから。
怖い子も増える。お母さんとお父さんが私を怒るのを、あの子達には見せたくない。
暦は人間の都合で作ったと思ってる人が多いけど。
でもそれだけじゃ、説明できない。
#2
街頭のテレビから百人一首という言葉が聞こえてきた。
百人一首って怖いよね。
百人いて、首は一つだなんて。
きっとギリシャ神話の、一つしかない目と歯を代わる代わる使っている怪物の三姉妹みたいに、一つの首を百人で使ってるんだと思う。
#3
子供が公園の砂場で人形遊びをしていた。
埋めたり投げたり、好き放題している。
あっ。
……。
……そういえば「人形のように従順」っていう言葉があるんだって。私は人形が従順だなんて感じたことは、一度も無いんだけどな。
#4
夜の住宅地を歩く。
誰も歩いていない。誰も歩いていないのに、並んでいる家の玄関のセンサーライトが次々と点いてゆく。
目を閉じて道を歩く。
目を閉じていたら、何でも見えるよ。だって目を開けていたら、目で見えるものしか見えないから。
#5
公園の真ん中にある、大きな時計のついた街灯の柱の下に『鬼』が立っている。
その『鬼』は、かくれんぼの鬼がそこで目を閉じて数を数えたら、ゼロを数えた途端、その鬼の子を食べてしまう。鬼を食べて、入れ替わってしまう。『鬼』は、鬼を待っている。
#6
通りがかった家の庭で、お爺さんが怒ってる。
「みんなうちの庭にゴミを投げ込んで行く」
「この辺の連中はマナーが悪い」
お爺さんは住んでるのに知らないのかな。
その庭からはいつも手が出て、通りすがりの人の鞄から物を取るんだよ。
#7
小さい子供を連れた二人のお母さんが、道端で話をしていた。
「こんなに可愛がっても、赤ちゃんの頃の記憶はなくなっちゃうんだよね」
「なんで赤ちゃんの頃の記憶は忘れちゃうんだろうね」
私は憶えてるよ。
でもあんな怖い記憶は、憶えていたくないんじゃないかなあ。
#8
男子高校生達が話をしていた。怖い話をして、そのうちの一人が話の腰を折る。
「幽霊とか興味ねえよ。見えねえものを信じるなんて馬鹿だろ」
「あー・・・まあな」
見えないものを信じないって。
それって、心も信じないってことかな。
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