第5話 最前線まで駆け上がれ!

 本当に都合の良い流れになった。俺は王に呼ばれ、城で直接会う事になった。何故という疑問もある。自称勇者を倒したからといって、大した功績にならないことを理解しているからだ。にしても凄い煌びやかだ。ヨーロッパの宮殿と言われても納得するレベルだ。


「お初お目にかかります。ユーダと名乗り、魔術師として活動をしております」

「うむ」


 赤いマントと王冠のご老人。実際目にするとオーラが違う。それでもこれを聞かなければいけない。


「差し支えなければ、何故一端の魔術師の私を呼んだのでしょうか」

「やってもらいたいことがあるからだ」

「……と言いますと」

「今現在、数百年前に封印した魔王が復活してしまった。今度こそ討伐せねば、この世界は滅びる。魔王を滅ぼす聖剣を持つ者が懸命にやっておるとはいえ、限界が出て来るだろう。ユーダよ」

「はい」

「前線に立ち、戦う者達を支援し、魔王達を討伐せよ。案内人と護衛の派遣。報酬等。手配してやる」


 そういう流れで俺は魔王を倒せるかもしれない者を支えることになった。土地勘がないので、案内人などの手筈を整えてくれるのはありがたい。部下によると城の外にいるという話だが……マジか。聖騎士少女と蛇使いの女性と盾使いの女性。全員顔見知りだ。


「それじゃ。出発するわよ」


 とりあえずここで説明してもらいたいが、ゆっくりしている暇はない。歩きながら聞いてみることに。


「何故君たちが」


 マリーが答える。


「聖騎士団長の命令でね。リサーノが案内役。私が橋渡し役。セルマはいつものように私の護衛。こんな感じよ」


 王都の中で移動していた時は平和だったと思う。しかし外に出て、森の中で歩いていた時に遭遇した。赤い目のゴブリン数体。黒い霧に包まれている時点でアウトな奴だ。


「これは操られているわね。やりづらい!」


 マリーが拳で応戦する。下手に傷を付けるわけにはいかないのだろう。観察をしてみると、支配されていることが分かる。解除で終了だが、数が増えている。弓を持つ奴もいる。


「防御は私にお任せを」

「セルマ、ありがとう」


 何故かセルマの頬が赤くなっている。今はそれを気にしている場合ではない。


「マリー。リサーノ。出来るだけ引き付けられるか」

「何か策があるのね。ええ。やれるわよ」


 作戦開始だ。マリーとリサーノの大蛇が派手に動き、ゴブリンの注目を集める。俺は魔法の名称を言う。


「ドミニオンステイト キャンセレイション!」


 ゴブリン達は正気に戻ったのか、俺達を見てどこかに逃げてしまった。狩りをする冒険者ではないのでスルーだ。


「多分これ足止め目的でやってるよな」


 移動をし続けていたわけだが、敵との遭遇がどんどん増している。これでは間に合うのか怪しい。マリーが真剣に考えながら答える。


「そうね。被害が出ないように騎士たちがいるし、さっさと合流したいところよね。何か短縮できるようなものがあればいいんだけど」

「お空で行けばいいのよ。うちの子、そういうの出来るから。何か良い付与は?」

「あるよ」


 というわけでリサーノの思わぬ提案である大蛇の空の移動+俺の透明化の付与魔法で一気に前線地域まで行く事が出来た。三人寄れば文殊の知恵とはこういうことか。

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