第4話 自称勇者を倒した!
伝説の聖剣。自称勇者。判明している情報を元に索敵魔法を発動させる。魔力がごっそり持ってかれるが、上位索敵魔法なので致し方あるまい。実感としてはネット検索みたいなもので、こんな簡単で良いのかという疑問がある。晴れた良い天気の空の下、ちまちまとSFっぽい透明の画面の操作である。
「うわーなんか色々出てる」
「その記号は何でしょうか」
しまった。地図は日本仕様だから、彼女達が地図記号なんて知るわけない。説明は後でだ。調査を専念。範囲を十㎞にし、事細かく条件検索してみたが……ヒットした。予定より魔力消費の数値が大きいことから、隠ぺい魔法の類を使っていたことが分かる。
「え。場所特定出来ちゃった?」
マリーが恐る恐る確認。
「多分ここにいる」
因みに貴族様からの報酬を使って、宿に泊まって、朝に合流したわけだが、敬語は使わなくていいと言われて、タメである。
「凄い凄い! 私達だと全然見つからなかったよ!」
マリーの目が輝いている。
「隠ぺいの魔法を使ってたみたいだから……多分元から探しづらかったと思うよ。それに情報があったからこそ、出来たことってのもあるわけで」
「いや。それでもここまで高度なものは見かけませんよ。お見事です」
女性に褒められると嬉しいものだ。だが頬を緩くしても良い場面ではない。切り替え切り替え。あ。リサーノが覗いてきた。
「歩いてそんなにかからないところね。この辺り記念碑があるところで、近くに誰も使わない建物があるわ。騎士に連絡できる?」
「ええ。やってみるわ」
あっさりと解決したなと思いながら、背伸びをした。騎士のお仕事を邪魔するわけにもいかなかったので、マリーから報告を待つしかない。現実はこんなものだ。ほんのちょっと活躍出来ただけ十分だろう。
時間が空いたので、俺は魔法のチェックを行うことにした。マップ上で人が来なさそうな原っぱ系の敷地を見つけたので、そこでひっそりとやっていく。あの透明の箱を定期的に作っておかないと、いざと言う時になかったら不便だからだ。それに今後のことを考えると、実験をしなくてはいけない。さあて。魔法の数を数えよう。さーっと無意識に出せるようになった透明の画面から目を通す。ひい。ふう。
「えーっと。そういえばメッチャ習得してたんだったわ。俺の馬鹿」
圧倒的処理数。どれぐらい経ったか不明だが、近づいてくることが分かる。
「敵意を持った人が登場か」
念のため索敵魔法を使っておいてよかった。実際、敵意を持つ誰かが来たのだから。
「ファイアージャベリン!」
不意打ち! 魔法抵抗を上げ、炎に効かないようにする。身体に影響が出ないことを祈るしかない。これで大火傷とかシャレにならない。
「な……何で効かない!」
正直俺自身も驚いている。無傷というぶっ飛んだ出来事が現実なのだ。ゲーム時代なら普通に体力減っている仕様だったと思う。振り返ってみたら、金髪青眼の十代後半の男って感じ。ずりずりと大剣を引っ張っていたことが分かる。騎士にやられたのか、服がボロボロだ。右手に持つものは水晶。魔力反応ありということは何か仕掛けてくる。
「まあいい。サモン!」
査問? 違った。召喚か。二本足で牛の魔物、ケンタウロスみたいなものか。何で口から火を吹く。斧だってかなり厄介なものだ。予知の目を咄嗟に付与したお陰でまだ戦えてはいるが、どうやって倒そうか。攻撃系は却下。誰もいない。そう言えば怯み効果のある魔法があった。召喚ものなら相手を気絶させるだけで、魔物が消える可能性が高い。手っ取り早くやろう。
「テラーシャウト! あーっ!」
効果範囲を広げて、男も巻き沿いだ。都会なら確実に近所迷惑、いやそれどころか逮捕待ったなしの声量の大きさ。計測したくない。お。ラッキー。上手く行った。そしてナイスタイミングだ。マリー。
「ユーダさんの荒ぶる声が聞こえたと思ったら、自称勇者を発見……どういうこと」
「何でか急に襲われたから。一応正当防衛ってことで許してもらえる?」
「大丈夫だと思うけど、面倒なことに巻き込まれるのは確定したわ」
哀れみの目で見られてしまった。しかしこちらとしては上等だ。どう転ぼうが、ミッションクリアに近づけられる。
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