第3話 聖騎士少女の話:自称勇者と聖剣

 気絶した強盗達は騎士が引き取った。移動中だった貴族様からお礼をたんまり受け取って、俺は女性達と共に近くの村の居酒屋みたいなところにいた。木で作られているので、暖かみがあって、大変良い所だ。揚げ物とかも美味いし。


「とりあえず自己紹介を。私は聖騎士マリー・デア・フィールズと言います。あなたがいなかったら、被害が出ておりました。この場でお礼を申し上げます。彼らを助けてくださって、ありがとうございました」


 金髪赤目の美少女が丁寧に目の前でお礼を言った。しかし意外だ。正直俺がいなくても、どうにかなっていた件だと思っていたので。


「えーっとどうもいたしまして? あ。ども」


 さっと小皿にサラダを盛ってくれた。めちゃくちゃデカい蛇を召喚した女性。改めて見ると露出度が高い。南国でいるような恰好だろう。スリットのある長いスカートがあるので、まだ許されている感がある。てかおい。そこの水色の小さい蛇。勝手にフライドチキン(名前が分からないので適当に付けた)を奪うな。やっぱ蛇だからか、丸呑みしちゃってるし。おのれ。


「テッド君。戻って戻って」


 女性の命令にテッド君は従う。どこに行ったかと言うと、腰にある大きい壺。これはテイマーというものだろうか。よし。聞こう。


「テイマーですか?」

「はい。家系的に蛇を専門としております。あ。申し遅れました。リサーノです」


 蛇を専門としたテイマー。そう言うタイプあまりいない気がする。あ。そろそろ名前を言っておかねば。


「ウダユウタです。ただ現在は」


 本名は宇田裕太。しかし容姿が日本人男性のものではない。ゲームプレイヤーの分身のままだ。白い髪と黒い目。少し顔立ちが整った男。それがユーダだ。


「ユーダと名乗り、活動させてもらっています」

「そうですか。ならユーダとお呼びした方が?」


 盾使いのボーイッシュ系の女性と握手を交わす。前だとこういう経験がないから新鮮だ。


「そうしてもらえると」

「分かりました。そうさせてもらいます。なら私のことをセルマと」


 正直見知らぬところに来て、不安だった。人と交流できるのだろうかと。それがまさか女性グループとこうして食事である。ガッツポーズは心の中でしておこう。


「全然自称勇者の足が掴めないよぉ」


 酒といっしょなのか、十数分後に本音が出始めていた。マリーという聖騎士、酒が弱いにも程がある。ちょっと気になる点もあるので、そこを突こう。勇者というワードは女神様から出てきたものだから。


「自称勇者というのはどういうことですか」

「えっとね」


 彼女達は教えてくれた。数十年前、とある男が化け物を食い止めたため、勇者として崇められたと言う。伝説的な聖剣を使い、打ち倒したため、彼の故郷の祭壇にその剣を保管していたらしい。その村出身でもなく、子孫でもない自称勇者がその聖剣を盗み出し、いる可能性が高いこの辺りを探っていたのだとか。


「ただでさえ他のことで手一杯なのにぃ」


 マリーが泣いている。ほぼ酒のせいだと思う。ここまでボロボロ出るものなのか。しかしこれはチャンスだ。


「出来る範囲で構いません。聖騎士は何をしてるんですか」

「封印されてた魔王が復活して、その手下達が攻めてきたんですよー。まだ被害は少ないですが、今後もっと大きくなるからって」


 おっとこれはビッグなものだ。引っ掛かった。大物釣れたぞ。


「噂は本当だったのね。聖騎士って大変ねぇ」

「リサーノさーん」


 リサーノさんとマリーのやり取りから察した。出会ってそこまで日にち経ってない奴なのではないかと。


「えーっとこれは」

「はい。察してるかもしれませんが、私とマリー様はリサーノ様と会ってそこまで経っておりません」


 まさかのパターンだった。


「本来は聖騎士の領域ではありませんが、黒騎士団長様がマリー様に命令を出し、私が護衛として任務に同行。この村でリサーノと出会い、協力関係にある。そういう流れですね」


 聖騎士。黒騎士団。厨二病満載である。ネーミングが。


「あの。ユーダ」

「いや。何でもないです。それで進捗は」


 反応がよろしくない。つまりは進んでいないのだろう。


「出来る限りのことを行いましたが、未だに見つかっておりません。早めに解決しておきたいのですが」


 セルマが悔しそうだ。かなり時間を使ったと仮定するとこうなるか。


「ひょっとしたら高度な魔法を扱える可能性があるでしょう。私達には破る術がないのも痛い」


 魔法。高度な魔法。そうだ。手伝えばいいんだ。結果次第でミッションクリアに近づくことが出来る。失敗しても有益な情報を入手できる。どう転ぼうとこっちが徳する。


「あのもしよかったら俺も手伝ってもいいですか。魔法なら対応できると思うので」


 彼女達の顔が明るくなる。


「お願いします!」


 声がめっちゃ力強かった。強力な助っ人が来た。そういう嬉しさが溢れんばかりだ。

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