幕間 異世界少女達の旅立ち

アルト達が魔王の娘、ルナを慰めている間

その頃異世界では


ーアヴァロン神王国ー

「姫様、どうかお考え直しください!勇者様はもう元の世界に帰られたのですから、それに姫様は西の国の王子との縁談の話がすでに決まっておられるのですから、勇者様の事が忘れられないのは分かっておりますが、どうか今一度よく考えてから」

「よく考えた上での決断です、爺や、王子との縁談は王女の権限で白紙にします。私にはとって理想の相手は勇者様しかおりません。

ですので、私は勇者様を追います。それに王位ならお兄様が継ぐので問題ありませんね」

「いえ、そういう訳ではなく、姫様と西の国の王子の縁談が成立することで西の国との同盟関係が結ばれることが」

「そんな事どうでも良いです、その権利は妹に譲ります」

「いえ、姫様、イリス姫様は未だ幼い故、まだ婚約できる年齢に達しておりません」

「つべこべうるさいです!私はもう決めたのですお父様達には爺やが説明しておいてください、それでは!」

と言い残し、走り去ってゆくアヴァロン神王国の第一王女、アリシア=ロア=アヴァロンと去っていくその背中を見つめるのは、王女そば付きの執事、セバスチャン=ローゼンハイムである。


「はぁ、行ってしまわれた。とにかく今は国王陛下と王妃様にご報告しなければ」

そう言いながら王のもとに行こうとした時


「大変です!執事長!」

廊下の奥から同僚のメイド長が慌てた様子でやって来た。


「どうした、何があった」

「イリス姫様の姿が何処にも見当たらず、お部屋にも居なかったのです!」

「なにっ、一大事ではないか!直ぐに陛下にご報告し、騎士団と他の執事やメイドを総動員して捜索せねば!」

すぐさま王のところに行こうとしたセバスチャンをメイド長が止めた。


「いえ、待ってください、姫様のお部屋を探していたらこのような書き置きが残されていたのです」

そう言ってメイド長は一枚の紙切れを渡す。


「何?見せてみろ」

そこにはこう書かれていた。


「城のみんなへ

ごめんなさい、イリスはどうしてもアルトお兄様を忘れることができません。ですのでイリスは姫の地位を捨ててでもアルトお兄様を追います、勝手なことはわかっております。それでもやっぱりアルトお兄様を忘れることなんてできなかったのです。勝手なイリスをどうかお許しください、それでは。イリスより」


「あぁ、アリシア様もイリス様も変なところで行動力を発揮するところは昔の王妃様そっくりだ」

元々セバスチャンはかつてはまだ侯爵家の令嬢だった現王妃に昔から仕えていた従者の家の生まれだったのだ。

故に今では落ち着いているが、かつてはかなりお転婆な上に元冒険者だった現王妃にかなり振り回された経験がある。その変な行動力は娘二人にしっかりと受け継がれたらしい。


「ともかく、直ぐに国王陛下と王妃様にご報告せねばならん。お前はまだ城内にいないか他のメイド達と共に探すのだ」

「はいっ」

そうして二人は再びいつもの業務に戻るのであった。


ーガレオス獣王国ー

「さてと、必要なものは全部入れたニャし準備も整ったニャ」


まるで何処かに旅行にいくかの様な荷物を整え終えたのはこの街の描人族族長の娘、ミーニャであった。

オレンジ色の髪

翠と青のオッドアイ

元気で明るく誰にも分け隔てなく接する性格

何より17歳とは思えない2つの自家製メロン

そしていざ家を出ようとする時、呼び止められた。


「ミーニャ、何処に行くんだ?」


ミーニャを呼び止めたのは、彼女の父親にして族長のアレスだ。

「決まってるニャお父さん、勇者様のところニャ」


当然のことの様に言う娘に対し、アレスは一度考え込む様に後ろを向いたがすぐに娘に向き直り納得した様な顔で


「分かった、ミーニャ、お前ももう17だ。お前の決めた道なら私は止めはしないし、反対もしない。だが、これだけは覚えておいてくれ、帰って来たくなったらいつでも帰って来るといい。父さんはいつでも待っているからな。さぁ、勇者様のもとにいくのだろう、行って来なさい!」

「はい!行ってくるにゃ、父さん!」

「それと、出来ればでいいから孫の顔も見たいから、頑張るんだぞ」

「一言余計にゃ!」


こうして3人の異世界少女達がアルトのもとに行く為に動き出したのであった。


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