第11話 勇者パーティーの懺悔
アルト達勇者パーティが全員それぞれの霊装を発動させ、魔王の娘とカオス・ヒュドラゴンに向けてそれぞれのスキルを放った。
(始原流が発動しました)
「始原流 聖刃一刀!(セイントセイバー)」
「エージル流 轟雷斬!(ブリッツスラッシュ)」
「大いなる氷王よ、全てを凍てつかせ永劫の時の中に閉ざしたまえ 永久凍土の牢獄!(コキュートスプリズン)」
「世界樹よ、悪しき者を縛りたまえ 世界樹の拘束!(ユグドラシル・バインド)」
「聖なる炎よ、悪しき者を焼き尽くせ!
聖炎(ホーリーフレア)」
リーファの世界樹の拘束がヒュドラゴンをガッチリと抑え込み、イーナの永久凍土の牢獄で巨大な氷塊の中に閉じ込め、エリーゼが中から聖炎で焼く。その隙をアルトとカルナが始原流とエージル流の一撃の威力が強い技を放つ。
ドガガガーーン‼︎
もの凄い爆発が起こり煙が晴れたところには既に満身創痍だが、辛うじて銀色のコブラの首だけ生き残ってその上でギリギリで魔力障壁で防いだのか同じく辛うじて生きてる魔王の娘、ルナがいた。
「おのれ、勇者め!」
「これでフィナーレだ」
その言葉と同時にアルトは駆け出してヒュドラゴンの最後の首に向けて突っ込んだ。
「甘いわ!ヒュドラゴンよ、勇者を喰らえ」
するとヒュドラゴンが大口を開けてそのままアルトを喰らった。
「勇者殿!」
「勇者様!」
「アルト!」
「勇者様!」
カルナ、イーナ、リーファ、エリーゼが悲痛な声を上げた。だが、次の瞬間
ボボボン‼︎
くぐもった爆発音が響いてヒュドラゴンの身体が爆ぜた。その爆ぜた所からアルトが出て来た。
「ドラゴンが最強種の一角と呼ばれる所以は鋼鉄以上の硬さを誇る鱗の防御力、それ故に外側からの攻撃は利き辛いが、その分内側からの攻撃には慣れてない。だからドラゴンを倒すには鱗に覆われてない柔らかい口内を狙うのが良い、だから腹の中で自分の防御力を上げた後に火属性魔法の"フレアボム"をしこたま放ったんだけどこいつもやっぱり内側からの攻撃には弱かったみたいだな」
ドラゴンの生態を調べてたことがあったのでその方法が効くのでないかと、試したら出来たらしい。そしてカオス・ヒュドラゴンは光の粒子になり消え、消えた場所にはソフトボールぐらいの大きさの召喚クリスタルが落ちていた。
「勇者殿、心配したんだぞ!」
「そのまま食べられたから驚いた」
「もう!心臓に悪い戦い方するんじゃないわよ!」
「勇者様がいなくなられたら、私達は何の為にこの世界にやって来たのか分からなくなります!」
「ご、ごめんみんな、でも周りに被害を出さずにあいつを倒すにはアレしか方法が思いつかなくて」
「ならせめて事前に私達に説明しなさい!」
「はい、その、本当におっしゃる通りです」
「分かったならいいわよ」
「全く、本当に心臓に悪かったぞ」
「もうしないで」
「リーファさんが言った通り、やる時は事前に言ってください」
「ああ、分かったよ」
4人から少々怒られたので反省する事にした
アルト、そして先程からずっと俯いて何一つ喋らない魔王の娘、ルナの事をどうするか決める事にする。
「殺せ、父上の仇も打てず、切り札の召喚獣まで倒された。此方の世界に渡る際に魔力の大半を使ってしまった故に帰ることもできぬ。此方の世界に頼れる身内などもいるわけがない、ならもう生きてる意味はないのじゃ!」
最早全てを諦めたような顔しているルナ
「どうする、勇者殿」
どうするべきか聞いてくるカルナ、剣には敏感だが人の感情などにはとことん疎い。
「ちょっと可哀想」
少し同情するイーナ、元・戦争孤児で親を失った悲しみが分かる彼女の言葉は重みがある。
「殺せって言ってるんだからお望み通りにしてやればいいんじゃない?」
魔王軍に多くの同胞を殺されたからちょっと厳しいことを言うリーファ
「これは少し、悩ましいですね」
相手がどんな者であれ、どこまで慈しみの心を持つが故に悩むエリーゼ
「えっと」
同じく悩むアルト
(いくら魔王が人類の敵であったとしても、ルナにとってはたった1人の父親だったんだよな。そのたった一人の父親の命を奪ったのは他でもない俺だからな)
仕方なかったとはいえ、1人の少女の父親を殺してしまった故に今更ながら罪悪感が湧く。
「それなら、家に来いよ」
「情けなど無用!早く殺すが良い!」
「情けじゃない、確かに俺達はお前の親父を殺した。その事実は変わらない、でもな、お前の親父は悪いことしてたのも確かだ。お前の親父が全ての魔族の為に戦っていたのと同じように俺も全ての人類のために戦っていた。だから、お前は魔王軍の最後の生き残りとして多くの人に迷惑かけたことを心に刻みながら生きていくんだ。でもお前はこの世界に親類どころか知り合いもいないだろ。だから家にこいって言ってるんだ。
でも一応の誠意は見せておかないとな、お前の唯一の父親の命を奪ってしまい本当に申し訳ない。」
アルトはルナに向かって深々と頭を下げた。
「私達もすまなかった」
「ひとりぼっちの寂しさはよく分かるから」
「家族を失う気持ちは理解できるし」
「謝って済むことでない事は百も承知です」
アルトのパーティメンバーもみんな続けて頭を下げて謝った。
「今更謝られても何も変わらぬわ!そんなことしたって、ぐすっ、父上はもう、ひぐっ、帰っては、こぬのじゃ、えぐっ」
泣きたいのを我慢しているが、それでも嗚咽混じりで非難する。
こういう時気の利いた事が出来ないアルトだが、その中でも必死に思考を巡らせ何か策はないかと考え続けた結果、アルトはルナに歩み寄って、優しく抱きしめた。
「本当にすまなかった、悪いと思ってるのは本心だ。まぁ、信じられないかもしれないけど、我慢は体に毒だ。だから今はさ、思いっきり泣けばいい、苦しいことも悲しいことも全部涙と一緒に出せばいい」
そう言ってルナの頭を優しく撫でるアルト
「うっ、うわああぁぁぁぁん!! えぐっ
ひっぐ、ぐすっ、うえぇぇぇん! ひぐっ」
そのままルナが泣き止むまで頭を撫でてやった。
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