第8話 勇者パーティ復活⁈(球技です) 2

ドッチボールが始まった瞬間、俺はスキル

"念話"で4人に指示を出した。


「みんな、最初は回避に徹するぞ。とにかく攻撃を避け続けるんだ」

「了解した」

「任せて、避けるのは得意」

「森育ちをなめないでよね」

「回復や支援だけが取り柄の聖女はいませんので」


それからあっという間に俺たち以外のチームメイトが外野に行ってしまった。


(そろそろ、か)

自分のパーティメンバー以外が出たなら存分に暴れられそうだ


(よし!もう良いだろう、みんな、これから攻撃に移るぞ。陣形はいつも通り、俺が攻撃と防御を、カルナは遊撃、リーファはとにかく動き回って撹乱して余裕があれば攻撃、エリーゼは全員に支援魔法を、イーナはエリーゼの守りを頼む。)

(了解した)

(任せて)

(やっと攻めに回れるのね)

(承りました)


そこからはまさに一方的だった。

「皆さん、バフをかけます。"身体強化"(フィジカル・エンチャント)!"神の祝福"(ゴッドブレス)!」

エリーゼの強化魔法で全員に身体強化系のバフがかかり、力がみなぎって来た。


「取った!カルナ、任せたぞ!」

「任された、勇...アルト殿!」

相手が投げたボールは自分が受け止め、攻撃役であるカルナにパスする。あとカルナ、また勇者って呼びかけただろ、学校にいる時はやめてくれ。


「全然遅いわね、こんなの当たる方が難しいわよ。強化魔法、いらなかったんじゃ無いの?」


そう言って周りからくる攻撃をひらりひらりと躱しているリーファ、その並外れた身体能力は流石は森で育ったエルフと言える。


「これくらいの速さだったら、私でも受け止められる、けどエリーゼ、さっきは助かったありがとう」

「いえ、勇者様は勿論、イーナさんもカルナさんもリーファさんも、仲間ですからお互い助け合っていきましょう、それに勇者様のパーティメンバーになる聖女には戦闘能力も求められますから、魔法の修練に加えて聖騎士の方達とレベリングもしていましたので」


イーナはエリーゼを守り、エリーゼはイーナが取り損ねたボールを自身の素の力で受け止める。


アルト達勇者パーティのまるで何度もやった事があるような連携プレイ(実際何度もやった事がある)で的確に相手陣営の人数を減らしていく、そしてとうとう相手は残り人数一人になってしまった。


「アルト殿、最後は貴殿が決めてくれ」

と、カルナがボールを渡してくる。

「え、いいのか?」と、俺が聞き返すと

小声で

「最後は勇者殿が決めるべきだろう?」

「ああ、分かった」

カルナからボールを受け取り、ボールを高く投げ、重力で落ちてくるところを狙い、スキルを発動する。


(スキル 始原流が発動しました)


「始原流 流星!」

超手加減した光速の拳がボールに突き刺さった超超豪速球が一直線に飛んでいく。

そのボールは相手の頬を掠め、壁にあたり、反動で戻ってきて相手の背中に当たり、その時点で試合が終了した。


「強化魔法、本当にいらなかったんじゃ」


俺はそう呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る