第6話 球技大会

「恋?恋ってあの恋?」

いきなり4人に言われた「恋の成せる技」に困惑している。


「勿論、あの恋だ」と答えるカルナ

「恋以外あり得ない」と続けるイーナ

「それ以外に何があるっていうのよ」当然だというリーファ

「恋でなければ勇者様を追ってまで異世界まで来ません」はっきりと告げるエリーゼ


正直美少女4人にここまで好意を向けられて健全な男子高校生として嬉しく無いと言えば嘘になる。だが、幼馴染に裏切られたばかりの俺は、当分恋はしないと思っている。でも、4人が俺に向けてる好意は本物だと理解できる。だから、自分も正直に今の気持ちを伝えないと4人に失礼だ、そして俺は意を決して今の想いを伝える。


「分かった、美人なみんなにそこまでの好意を向けられて、俺も正直嬉しい。でも、直ぐに返事はできない。だからもう少しだけ俺に考える時間をくれないか、頼む」


4人に向き直り頭を下げる。しばらくの間沈黙の後4人は何か小声で相談した後俺に頭を上げる様に言った。


「分かった、納得のいく返事を期待している」

「勇者様がそういうなら私も待ってる」

「確かに、ちょっと返事を急ぎすぎたかもね、そういう事なら私も待つわ」

「私はいつまでもお待ちしております」


何とかみんなの了承を得られ、一先ず俺は安堵した。その後家に着き、事前に(魔法で認識を改変して)知らせておいたとイーナが言った通り母さんも姉さんも4人を快く迎え入れていた。その後母さんと姉さんに誰が本命なのか色々質問攻めされたり、俺の過去話を色々暴露されて羞恥に悶えて色々あってベッドに入るとあっという間に眠りに落ちた。


「うーん、まだ身体がだるい気がする」

「大丈夫か、アルト殿?」

「私が回復魔法をかけます、神は仰せになった、汝を苛む疲れを癒さんと"リフレッシュ"」

「ありがとうエリーゼ、少し楽になった」

「アルト様、私が調合した回復薬もあるからまた疲れたら使って」

「イーナ、それ本当に回復薬?」

「あ、間違えた、これは滋養強壮薬だった」


次の日、5人で学校に向かってる、身体ではなく心の方が疲れているのだが、エリーゼの魔法で少しだが体力が戻った。回復魔法にはいくつか系統が存在する。

傷や怪我を癒す"ヒール"

体力回復する"リフレッシュ"

毒や呪いなどの状態異常を治す"リカバリー"

だが、エリーゼは回復術師(ヒーラー)としてだけではなく強化術師(エンハンサー)として能力も持っている、まぁ、職業が"聖女"たる所以だろう。エリーゼは回復、支援、強化系統のスキルを一通り覚えている、これくらいはお手のものだろう。

そんなアルト達を見ている人物がいることにアルトのスキル"気配感知"で分かってはいたがアルトは黙ってることにした。だって気配がよく知ってる気配だったからだ。


「アルト、どうして....」


賑やかな雰囲気をだしながら学校に着き、朝のHRが始まる。

「さてお前ら、昨日編入してきた4人以外はもう知ってると思うが、来週は待ちに待った球技大会だぞ!ここでいい成績を残せば評価も上がるのは勿論のことで、学園祭の予算も上がるからな!どの種目に出るか今のうちに決めておけ、今日は一限目から四限目まで体育だからHRが終わったら着替えて体育館に集合してくれ、以上だ。」


それから男子女子それぞれ着替えを済ませ、移動中にイーナが俺に話しかけてきた。


「アルト様、球技大会って何?」

魔法研究一辺倒だった彼女が知らないのは当然だろう。


「簡単に言えば球を使ったスポーツだな、いくつかあるみたいだから自分の気に入ったやつを選べばいいんじゃないか?」

「なら、アルト様の選ぶやつが良い。」


イーナは自分が選ぶやつにすると言った。

「カルナもリーファもエリーゼも同じ気持ちだと思うから」

「え?でもチーム分けがあるから同じチームなれるとは限らないぞ。」

「大丈夫、私、運はいいから」

「運頼みかよ」


語る球技大会に不安しかないと思うアルトだった。

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