第2話 転校生は元パーティメンバー⁈
次の日の朝、俺は通学路を歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。
「おはよう、アルト」
振り向くと俺をあっさり捨てた元幼馴染の相川香奈美がいた。だが、その態度は俺を捨てた事を忘れてるかのような気安い態度だった。
「何だ、お前か」
「お前って呼び方はないでしょ、前みたいに香奈美って呼んでよ」
そいつのあまりにもあっけらかんとした態度に、俺の堪忍袋の尾が切れた、と同時に脳内アナウンスに
(スキル 威圧が発動しました)
と、スキル発動が知らされた。
「断る、そもそも俺たちの関係はもう終わったんだ!しかも、俺と付き合ってる間に他の男に靡いたお前から別れを切り出されるという最低最悪な終わりでな!その時点で俺にとってははお前は幼馴染でも何でもなくなった、ただの他人だ!だから、他人のお前を下の名前で呼ぶ事はない、あと学校でも事務的な用事以外で話しかけてくるな、以上だ」
「ひぃっ」
間抜けな悲鳴を小さくあげて、尻餅をついていた元幼馴染。
さっきの脳内アナウンスで分かったが、無意識にスキルを発動していたらしい。さっきのスキル、威圧は自分とレベルが同じか下だった者は強制的に恐慌の状態異常にする。だから多分、恐慌状態になっているんだろう。
俺はそれを無視して先に学校に向かった。
学校に着き、うちのクラスの担任、藍沢愛香(あいざわあいか)、ジャージ姿に気だるそうな目をしながら朝のHRを終わらせた後ある知らせを告げた。
「よーし、お前らよく聞けー、今日うちのクラスに編入生がくるぞー、しかも4人だ」
急な編入生が来る宣言に教室が一気にざわめいた。
「先生、編入生って男ですか?女ですか?」
「4人とも女子だ、それもとびきりの美人揃いだぞー」
「よっしゃー!」
「やったぜー!」
「4人とも女子かー、一人ぐらい男子来て欲しかったなー」
「あたしらって、男運ないのかな」
女子と聞いていろめき立つ俺以外の男子ズ
逆に不満そうな女子ズ
「よーし、お前らそろそろ落ち着け、編入生達を紹介できないだろ」
一気に鎮まる教室、こういう時だけ見事な一体感である
「じゃあ、入って来てくれ」
教室のドア開くと俺はまさに言葉が出なかった。何故なら、入って来たのは俺のパーティメンバー達だったからだ。
「カルナ・エージルだ、剣術では一人を除いて誰にも負けない、よろしく頼む」
「イーナ・フォルス、得意分野は主に薬草学、よろしく」
「リーファ・ユグドラシルよ!世界の神話について勉強しているわ、神話についてが知りたいなら私に聞きなさい、わかる範囲で教えてあげるわ」
「初めまして、私はエリーゼ・メイムと申します。教会出身なので世間知らずではありますが皆様、どうかよろしくお願いします」
4人がそれぞれ自己紹介を終えた後は軽く質問タイムになった。
「エージルさん、剣術が得意って本当ですか?なら、剣道部に入りませんか?」
「けんどうぶ?とやらはよく分からないが剣が得意なのは本当だ。だが、私は彼だけには勝てなかった」
「それって誰ですか?」
「世間からは勇者と呼ばれていた」
「エージルさんにとってはその人は勇者って事ですか?」
「あぁ、彼は私だけではなく多くの者の勇者となった、彼は力だけではなく、志まで勇者と呼ぶにふさわしかった」
「勇者様はとても優しかった、私が中々新しい魔法を生み出せなかった時、「焦らなくていい、ゆっくりで良いんだ。初めからできる人なんていないんだからな」って言ってくれた」
「ちょっと、抜けてるところもあるけどそういうところも含めて、勇者だったわね」
「他人のためにあそこまで身を粉に出来る人は中々いません、いえ、むしろ勇者様だからこそ出来たと言えます。そうですよね、勇者様」
エリーゼはにっこり微笑んで、俺に視線を向けた。
全員の視線が一気に俺に集まる。異世界のことを言っても信じないだろうし、どう説明したら良いのか考えてると俺が困ってることを察した先生が空気を変えてくれた。
「よし、他にも聞きたいことがある奴もいるだろうが、そろそろ授業始めるぞー、続きが聞きたい奴は休み時間にしろ、それじゃ始めるぞ。あ、4人は後ろの空いてる席に座ってくれ」
先生のお陰で何とか事なきを得たが、これからどうなることかと思うと気が気でない俺である。因みに4人の席順は俺と同じ1番後ろの廊下側からエリーゼ、リーファ、イーナ、エージル、俺だ。
「これからもよろしく頼むぞ、勇者殿」
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