第30話スライム美少女が変態なのだが?

「ここは何処だ? お前は誰? それにこれはどうなっているんだ?」


「相変わらず、質問がベタね……」


他にどんな質問するのだ? ここで、突然スライムから美少女に変わったヤツに彼氏いるのか? とか、バストは何センチなんだ? て、聞けばいいのか? いや、俺は突然真っ白な空間で、この女と相対しているという、今の状況の方を確認したい。


例え目の前に美少女がいたとしても、普通そうだろ?


「相変わらずって? 変な事言っていないで、答えてくれ」


「私とじゃんけんして、あなたが負けたら、教えてあげる」


「俺が負けたら教えてくれるのか? 普通逆じゃないか?」


「いいの。その代わり、貴方が勝ったら、私はおしっこ我慢1時間ね」


何なんなのだ? この女? そもそもじゃんけんに俺が困る要素がない。


それにこの女のおしっこ我慢て、そんなに大した罰ゲームじゃないよな?


この時、俺はこの女のおかしさに気がつかなかった。


俺は女とじゃんけんをした。そして俺は中々負ける事ができなかった。勝ってばかりだった。


だが、ようやく10回目にして負けた。


こうして、この女からいきさつを聞けた。なんか、このじゃんけん意味無くね? って、思ったのは俺が浅はかだった。


女は今の状況を説明してくれた。


「ここは時間が停止した時空のはざまです。あなたは【スライム召喚】を見事使いこなし、遂にスライムのレベルアップに成功して、私に人格と、この姿を取り戻すことができたのです。運悪く、女神から極端なハズレスキルを与えられてしまったあなたにはチャンスが与えられたのです。私という美少女を獲得するというチャンスが」


俺は女をじと~と見た。さっきから、この女は俺のことを知っているような話し方だ。それに、運悪く女神にハズレスキルをだと? それに、この女の姿は見たことがあった。協会に飾られている肖像画や彫刻の姿と瓜二つだ。


「あのな、お前、女神だろ?」


「ええっ! なんでわかったの? 完璧な犯行だったのに!」


簡単に認めたな、この女神。それに完璧な犯行ってなんだ?


「もう、いいから、教えろ。お前、俺のこと知っているんだろ? そういう口ぶりだった」


「あら、随分と物分かりがいい子ね。物分かりが悪い子だったら……」


物分かり悪いとどうなるんだよ? 怖い女神だな!!


「じゃあ、説明するわね。私達女神とか神様って、不老不死で、それはそれはもう暇で暇で、それで、人の人生を狂わせたり、世界の均衡を崩したりして楽しむしか生きる術がないの」


迷惑な神だな!?  ていうか発言が悪魔サイド!!


「それで、なんで俺はお前と会っているんだ?」


「あなたには世界を救ってもらうため。ハズレスキルのお詫びに」


なんで、お詫びに困難を押し付けられるのだ?


「世界を救うって?」


「今はまだ言えないわ。ただ、あなたの能力は世界を救うためのもの。そう理解して」


俺は思案した。どうやらこの女神は全てを話してくれそうにない。だが、俺も最小限の情報が欲しい。


と、すると。


「じゃあ、話を戻すが、お前、俺のことを知っているのか? どんな経緯があるんだ?」


「それも今は言えないわ。レベルアップする度に少しずつ話すから。だから頑張ってね、私のために」


いや、おかしい。私のために頑張って? あまりにも自分勝手な言いぐさだろ?


俺はかなり不安になってきた。


「おい、私のために頑張っていうの、詳しく教えろ?」


「それも駄目。禁則事項です。ただ、300年前の魔王との争いに関係している……ことだけは教えておくわ。悪いけど、過剰に未来の知識は教えられないの。全ては300年前のあなたとの約束だから我慢してね。その代わりに私が後8時間おしゃべりに付き合ってあげるわ」


コイツって、暇? いや、暇って公言してたか。それにしても8時間って? 俺は不思議に感じた。8時間おしゃべりするんなら、もう少し意義のあることを話しあうべきだろう。いくら暇でも、何故そんな事をするのか? 全くさっぱりわからん。


俺にこの女神の魂胆がわかったのは、それから8時間後だった。どうでもいい女神の愚痴を散々聞いて、突然、女神の目に狂気の光が宿った様な気がした。


「あん! 私、も、もう限界!?」


「はあ? どうしたんだ?」


何が限界? 何言ってんの、この女神? でも俺はようやくわかった。この女神、10時間もトイレ行ってないんだ。女神はぷるぷるとまるで生まれたての小鹿のように震え始めた。ギリギリを楽しんでいる様な感じだ。俺は嫌な予感がした。


「ああ、もよおしてから、もう18時間も我慢を! この膀胱の圧迫感で壊れてしまいそうな感覚と、力まないと漏れ出してしまいそうな尿意は……ごほうびです!」


いや、最初から尿意があったのだなんて、計画的過ぎる!


「……ちょっと待って! 尿意って?」


「ん、もう、むり、れす……」


「おい! 駄女神! トイレ、早くトイレ!」


「あ、あん、お腹が圧迫しゃれてぇ、しゅ、しゅごい…」


「だから、急いで、トイレへ!」


「んぁああああああ、らめれす! もう漏らしちゃいますよぉぉ!」


な、何なんだ、この女神?


「んんっ! お腹の中が、もう、全部、押し出されちゃいます……もう、ぁぁ……駄目」


そういうと、女神の膀胱は限界に達した様で。長時間我慢した事で体に力が入らなくなっていき、なんとかギリギリのところで保たれていた堰が、一機に決壊した。一度決壊してしまえばそこから漏れ出す水の勢いは止まらず、当然途中で抑える気力などとっくにない女神は、そこ場でダムの中の水を全て出し切った。


「ん、ああ、もう大丈夫れすよ。もう、すべて終わりましたから……」


確かに全部終わった様な感覚だ。それはこの女神の大切な何かが終わってしまった様な気がした。


女神の言葉を聞いて恐る恐る女神の下半身の方に目を向けると、そこは大洪水となっていた。下半身から漏れ出した液体は服を、そして床をも全てを濡らし、今もなお浸食を続けている。そして全てを出し切った女神は、何かをやり遂げた様な清々しい顔になっていた。


「……女神……大丈夫か?」


「はい、大、丈夫れす。ただその、体に、力が入らないので、しばらく待ってもらえるかしら……」


「……」


こうして、全く無駄というか、見たくないものを見せられた俺は、ようやく女神が回復すると現実世界に帰還した。

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