第29話事件の犯人を見つけたのだが?
「おそらく、ここが奴らのアジトなんだろう。本当、簡単に見つかって良かった」
「ところで、どうしてアルベルト様はさっきのローブの男の居場所が分かったんですか?」
「そうだ。今、簡単にって……あんなに距離があったのに、追跡できるなんて、それを簡単にだなんて……普通出来ない」
「いや、俺、探知のスキル持っていて、その」
「探知のスキル? 上級攻撃魔法のスキル以外に? と言うことは
クラウスが驚愕の表情を浮かべ、レオンが俺の方を見て。
「は、ははは……。すごい! 凄すぎますよ。アルベルト様は桁が違う」
他にもいっぱいスキル持っていることは黙っておこう……
そして、ダンジョンを進むが、幸い、魔の森のダンジョンの様な魔物は出て来なかった。
「アル、扉があるわ。かなり怪しいわ。アジトか罠かどちらかよ」
「ああ、クリス、俺もそう思うが、突入するよりないと思う」
「アル様突入しましょう。罠でもは入るしかないですよ」
「うん、わかった。レオン、クラウス、行くぞ」
コクリと頷く二人。俺を先頭に
「グォォォォーーーーーォォォオ!」
魔物の声が聞こえたのは俺達が突入した瞬間だった。
やはり罠か。俺の探知のスキルに反応はなかった。つまり、突入と同時に召喚されたのだ。
目の前にホワイトハングが5匹ほど。
牙の生えた口から涎を垂らしながら、俺達を舐めるように見ている。
「……やっぱり、罠か」
「いや、そうでもないぞ」
俺は言った。何故なら、隠ぺいの魔法で隠れているが、俺の探知のスキルに薄っすら反応が。
「そこの米櫃に誰か隠れている。多分、さっきの白いローブを着た男だ」
「ここはリーゼに任せて、アル様やクリスの魔法だと、ダンジョンごと壊すから」
リーゼ……失敬だな。否定できないけど。
「
リーゼはダンジョン内ということを加味して、魔力を練らず、詠唱破棄で魔法攻撃する。
詠唱破棄や無詠唱は高度な技ではあるが、魔法の威力を下げてもいいと言う条件をつけるとハードルが下がる。それに魔力を練るのではなく、魔力を減ずることも簡単な技能だ。
上手い。リーゼは魔力を半減させ、詠唱破棄で、魔法の光球を普段の四分の一以下のサイズに。
バズンという音と共に、ホワイトハングが瞬殺される。
俺は米櫃に向かって、言い放った。
「観念しろ。そこにいることはわかっている。さっさと出て来い」
「くっ、くっくっく。せっかくやり過ごして、命だけは許してやろうかと思っていたのに、やたらと嗅ぎまわりよって、私が一人だけだと思ったのが、運の尽きだな」
白いローブの男は米櫃から立ち上がり、血走った目で、大きく叫んだ。
……うっせいわ。
正直、多分仲間がいるだろうと思っていた。何故なら、この部屋には数人は潜んでいた痕跡があった。テーブルや椅子。食器。一人分じゃない。それに、米櫃はかなり大きく、かなりの人数の胃袋を数週間は満たすことができる筈だ。
「さあ、白鷲教三騎士よ。我らの聖敵を滅ぼせ!」
――?
男が大声で叫ぶと、目の前に魔法陣が現れて、三人の白いローブを纏った騎士風の男達が。
「やれやれ。侵入者か」
「我らを嗅ぎ回るとはな」
「聖戦も近い、邪魔をしおってからに」
……こいつらは騎士か。
三人共、帯剣している。そして、鋭い視線を俺に向けている。
鍛えられた身体が騎士の甲冑の上からも見てとれる。
一部の隙もなく、身のこなしにも素早い。
「ふん。馬鹿め。のこのことついて来てしまったようだな……キジも鳴かずば打たれまいに。わざわざ命を捨てにくるとはな」
騎士の一人が前に進み出る。よほどの自信なのだろう。俺達を一人で相手にすると言うのだろう。ならば、こちらも一騎打ちを所望すべきだろう。クリスやリーゼの傷つくところは見たくない。もちろん、レオンやクラウスも。
「なら、俺が一人で相手しよう」
明らかに動揺する騎士。
「馬鹿か? おい、聞いたか? こいつ、我相手に一人で相手する――とわな!」
「フッ……彼我の差もわからんとわな。哀れ」
「たかが冒険者風情と白鷲教三騎士との差を教えてやろう。志有る者の真の強さというものをな!」
そう言うと、騎士は抜剣した。剣を構え、右斜め上に剣を構える。
騎士の標準的な構えだ。堅守にして、いつでも攻撃に転じることができる所作。
口だけではなく、本物の強さを持ったヤツだろう。
「アル、気を付けて!」
「アル様、ご武運を!」
クリスもリーゼも相手が強敵なことを察したのだろう。俺を激励する。
「ほう、良く見れば見目良い女を連れておるな。どうだ、その女を差し出せばお前だけは見逃してやろう」
フフフっとほくそ笑む騎士。腹が立つ男だ。丁寧に断ろう。
「魅力的な提案だな。だが……断る」
次の瞬間、俺は抜剣して、騎士へ一撃を加えた。
しかし。
キン
涼やかな音と共に、俺の剣は折れてしまった。俺の一撃をなんと、この男は受けた。
そして。
「冒険者にしておくには惜しい腕だ。だが、道具は相応のものを持ったほうが良いな」
「忠告ありがとう。帰ったらその通りにするよ。だが……俺は召喚士なんだ。残念だったな」
俺は無詠唱でスライム召喚の魔法を唱え終わっていた。こいつらが俺を侮ってくれたおかげで、心の中で呪文を詠唱する無詠唱魔法で、魔法陣を描き終わっていた。
「サモン・スライム」
青い魔法陣が俺の後ろで輝いている筈だ。青い光が目に入る。
「な、なに!?」
「「我らも加勢する!!」」
他の騎士も抜剣して、こちらに向かってくる。
だが、もう遅い。
「やれ、スライム!」
「ぴぃぃぃぃぃぃぃ」
「「「うおおおおおおおっ!!」」」
スライムが可愛い声を上げると共に、騎士達の悲鳴が上がる。
ドコ、ボコボコボコ、ガツン、ガツン、ガリガリガリ。
様々な異音を発して、騎士達は10秒後、誰も動かなくなっていた。
「そ、そんな……」
「馬鹿なっ……」
「無念……」
スライム無双で、騎士達は蹂躙された。
そして、天の声が聞こえた。
戦闘の勝利より、スライムのレベルが上がりました。
スキル【義人】が解放されました。
スキル【鑑定】を入手しました。
マスターへのスキル付与がなされます。
スキル【義人】が付与されました。
スキル【鑑定】が付与されました。
「は?」
俺は思わず間抜けな声を上げてしまった。
スライムが美少女に姿を変えてしまったのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます