ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~才能がないと実家を追放された少年、実は世界最強の魔法使いでした。俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~
第15話なんか両方から柔らかいものに挟まれているのだが?
第15話なんか両方から柔らかいものに挟まれているのだが?
馬車が急に止まって、俺たちは体勢を崩してしまった。
俺はなんとか踏みとどまったが、クリスとリーゼは見事ひっくり返った。だが、これ幸いにと俺の方に二人とも抱きついてきた。
二人に密着されて、思わず、二人が転ばないように支えてあげたが。
当たっとる。二人とも、胸が思いきり、俺の胸板に当たっている。左右両方からクリスの推定Fカップの胸とリーゼの推定Dカップの胸に挟まれる。
――むにゅ。
弾力があり、それでいて柔らかい感触が伝わってきて、俺は気まずさを覚える。
て、これ絶対わざとだと思うんだが。
「あの、二人とも大丈夫か?」
「……えへへ、アル様の汗の香りが素敵…。って、あわわわわ!!」
「こ、これがアルの汗の香りね。ああ、私、汗じゃないのがでちゃう!」
二人ともしばらく俺にスリスリしてたが、急に我に帰ったのか、ばっと姿勢を元に戻す。
二人とも顔が真っ赤だ。俺の汗、臭かったのかな? 心配になる。
「ご、ごめん。嫌だったよね……?」
「すいません。ご主人様、……嫌でしたよね?」
二人とも上目遣いで俺を見る。
「いや……大丈夫だ。クリスとリーゼは大好きだから」
「だ、大好き……」
「……リーゼのこと好き」
二人とも更に顔が赤くなる。
なんで、そんなに顔を赤くする。女はよくわからんのだが。
……しかし、どういうことだ? 突然、災害級の魔物が出たという情報と共に馬車が急ブレーキだ。いったいなにが起きているんだ。
俺とクリスはリーゼを残して、状況を知るために馬車の外へ出た。
「こんなところで、本当に災害級の魔物が出たのか? 信じられないぞ?」
「騎士様、大変申し訳ありません。俺はディセルドルフの冒険者です。ギルドの正式決定で街道封鎖になっています。先を急がれるんもでしたら、この街道ではなく、一旦戻って、ベルンからの街道を利用して頂けませんでしょうか?」
「そ、それではあまりにも遠回りではないか? ディセルドルフとはもう目と鼻の先ではないか!」
クリスを守る騎士と冒険者の一人が話しあっている。
冒険者はたくさんいるな。だが、罠とかではなさそうだ。ディセルドルフ領の領の旗を掲げている。
騎士と話している男の装備はかなりのものだ。クリスの騎士団と比べても遜色ない。かなり腕の立つ奴と見た。
その冒険者が俺とクリスに気がついた。
「失礼ですが。あなた方は……貴族様?」
俺とクリスは自己紹介する。
クリスも俺もやや抵抗があったが、手短に自己紹介した。
「クリスティーナ・ケーニヒマルクです。よろしくお願いします」
「アルベルト・ベルナドッテです。クリスの臣下です」
「クリスティーナ様、それにアルベルト様……では賢者様の……」
俺の名前を聞いて賢者の息子と知れた。だが、この冒険者は俺をバカにすることはなかった。
それどころか、頭を大きく下げて、挨拶をしてくれた。
「レオンと言います。A級冒険者です」
「A級冒険者……」
流石としか言いようがない。道理で装備だけでなく、騎士への受け答えも礼儀正しい筈だ。
それに彼からはどことなく、優しさを感じた。俺に向ける目が王都の奴等と違っていた。
ここは彼に協力すべきだろう。クリスは上級貴族で、災害級の魔物討伐に貴族が尽力するのは当然の責務なのだ。
「レオンさん。ならばこそ、私達はあなた方に協力すべきでしょう。災害級の魔物ならば、その討伐に尽力するのは貴族の務めです。私達は安全な街道へ行くべきではなく、前に進むべきです」
「しかし、この先に現れたのはキングタイガーなのです」
「キングタイガー……か」
流石に驚いた。 Sクラス災害級の魔物だ。Aクラス以上の魔物が災害級と指定されている。Sクラスの魔物は当然災害級だが、何故こんな安全なはずの街道沿いに突然出現したんだ?
普通、災害級の魔物は魔の森の奥に潜んでおり、出てくる道中で、冒険者や騎士団に発見されて討伐される。街道は魔の森から遠くに整備されていて、こんなことは聞いたことがない。
「現在、私達ディセルドルフの冒険者の仲間が戦ってくれているのですが……戦況が思わしくなくて。街だけでなく、王都の貴族様へ救援要請を出している位です。もしかしたら、王都から救援が来るまで決着がつかないかもしれません」
「王都からの救援は3日間は必要ですよ!! 貴族の務めです。参戦させてください!」
クリスが語尾を強めて参戦を督促する。貴族なら当然の立ち振る舞いだ。
しかし、街の冒険者達が協力しても勝てない魔物とは。
やはり、災害級のSクラスの魔物ともなると違うな。
「失礼ながら、魔物はSクラスです。貴族様数人がかりか、それこそ第一王子殿下にでも救援に来て頂かないと命の保証は致しかねます。クリスティーナ様の申し出は大変ありがたいのですが、ここは王都の救援が来るまで待つべきです。ご理解ください」
「……わかりました。しかし、ならばこそ私の出番では無いですか? 私の魔法は光魔法です。治癒を必要としている方がおられるのではないですか?」
レオンが苦渋に満ちた表情に変わる。冒険者にとって光魔法は貴重だ。
クリスは貴重な治癒魔法の使い手、どこぞかのバカ王子は治癒魔法なんて必要ないと言ったそうだが、俺が領で魔物の討伐を手伝っていた時、治癒の魔法を使える水魔法の適正者は重宝された。
ましてや、クリスの光魔法は最大級の治癒力を誇るのだ。
「貴重な光魔法の使い手であるケーニスマルク家のご令嬢を危険に晒すわけにはいきません」
かたくなにクリスの参戦を渋る冒険者、レオン。
俺は我慢できなくなった。
「レオンさん。俺たちにも協力させて下さい。微力ながら、俺も参戦します」
「え……?」
レオンは驚きの声をあげた。
「参戦する……? アルベルト様が?」
「もちろんだ」
「し、しかしあなたは!?」
「レオンさん。俺はハズレスキルで大して役にたたないのだが。……だが、俺だって領で何度も魔物討伐の経験を積んだし、厳しい訓練もしてきた。せめて何か俺にできることだけでもさせてもらえないか?」
「た、たしかに猫の手も借りたい位人員不足ですが……」
レオンはしばらく熟考すると、結論が出たのか、ふっと大きく息を吐くと、俺の目正面から見据える。
「わかりました。ただし、相手は災害級の魔物です。俺が危険だと判断したらすぐ撤退します。それでいいですか?」
「ああ。もちろんだ。微力だが、サポートさせてくれ!」
クリスは俺がサポートさせてくれと頼んだところで、何故か胡散臭いものを見るような目で俺を見た。何故だ? 気になるんだが?
クリスの治癒魔法、それに俺のハズレスキル、二人の力を合わせれば、少しでも彼らに協力できる。俺のハズレスキルの力が何処まで通用するか? それにクリスの攻撃魔法の威力を確かめるチャンスだ。
俺は逸る気持ちを抑えきれないまま災害級の魔物の元へレオンと向かうことになった。
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