第20話支援職はランク昇格試験を受ける3

俺は失意の元、次の魔法試験の会場である郊外に向かった。場所はどうやらギルドや街の魔法の訓練施設のようだった。


そりゃそうだな。街中で魔法ぶっ放すとかあり得ないからな。


何とか、剣術の試験の失敗を取り返さないと、Cランク昇格しないとアリスと街道沿いの護衛の仕事を受けながら帝都への旅が続けらない。その上、エルフのクロエの里に救援に行くためには一日も早くCランクに昇格したい。


俺はかなり気合を入れて試験に臨んだ。


「私が試験官で副ギルド長のカス・ズラだ。君がCランク昇格希望者か?」


「はい。レオと言います」


俺は姿勢を正してお辞儀した。やはり初対面の時の礼儀が大事だと思う。 できるだけ、好印象を持たれるように、礼儀正しくする。


この手の年寄りは大体、敬うような感じで、礼儀正しくしとけば、イチコロだ。


心の中では、ケッ、何カッコつけてるんだこの禿げとか思ってた。


と、思っていたが。


「君……何か、すごく失礼なことを考えてなかったか?」


「い、いえ、滅相もないです。副ギルド長カス様自ら試験をして頂けることに感謝しています」


「そうか、今……私の頭部を見て、歪んだ笑みが見えたような気がするが」


「とんでもないことです」


俺は真顔で次々と嘘と美辞麗句が出て来る自分にちょっとだけ引いたけど。


被害妄想だよ! 見て思って、ちょっと、歪んだ笑いが漏れたけどな!


「まあ、そんなことより、これより魔法試験を開始する。試験は簡単だ。攻撃魔法が使えるなら攻撃魔法を、治癒魔法や他の魔法が使えるなら、それを私の前で披露してくれ。安心しろ、威力は問わん、基本を理解出来ているかどうかを確認するだけじゃ」


「は、はい!!」


やった!!


そうだよな。Cランク位の冒険者が強力な魔法使える訳ないよな。俺の符術でも十分やれるよな?


だが、困った。俺は世界図書館で、多分、誰も知らない魔法を使えると思う。


ここは自重しよう。


そうだ。


基本の初級符術のフリーズブリッドでも使うか。


「では、符術フリーズブリッドでお願いします」


「おお、基本の符術の攻撃魔法じゃな。良い心がけじゃ、基本は大事じゃからな。では、あちらの誰もいない方に向かって撃ってくれ。ここから先は立ち入り禁止区域だ。安心して放つがいい」


俺はここで思案した。あまり強力な魔法では不味い。


しかし、ここで爪痕を残すにはどうすればいいか?


この試験官は基本が大事と言っていた。


ならば。


俺は探知の魔法を発動した。


すると3km先にラッキーラビットを発見した。なんてラッキーなんだ!


ラッキーラビットとは滅多に遭遇しない魔物で、その肉が最高に美味いことで知られている。


しかも、この魔物は驚く程素早しっこくて、そう簡単に捕獲できない。


更に、魔法や弓矢などで大きな傷を負うと、急激に肉が不味くなるという、美味しく食べることは極めて難しく、国王でさえ、1年に一度食べられるかどうかという希少な肉だ。


ここは俺の攻撃魔法の魔法操作の精度を見せるのが良いかなと思った。


威力だけなら、上級魔法でもかませばいいだろうけど、そんなの悪目立ちする。


それより、魔法操作の正確さ、緻密さをアピールした方が基本がどれだけできているかアピールすることが可能だろう。


俺は3km先のラッキーラビットを氷の弾丸の魔法フリーズブリッドで射抜くつもりだ。


まずは射撃指揮装置の符を切る。射撃式装置の魔法は魔法を誘導する初級の魔法だ。


放った攻撃魔法を誘導してくれる便利な魔法だ。しかもこちらは撃ちっぱなしで何も考え無くても勝手に探知で捉えた目標に向かって誘導してくれる。


そして、頭上に10のフリーズブリッドを出現させる。


俺が同時に展開できる符術は12だ。これは魔力量によって決まる。俺の魔力はかなり大きい方だ。だから符術の威力も大きめだし、同時展開できる魔法も多い。


氷の魔法、フリーズブリッドを使うのは同じ初級の攻撃魔法でも火の攻撃魔法とかだと熱でラビットの肉に火が入ってしまって、台無しになるからだ。


そして、俺の頭上には10の氷の弾丸が魔力の翻弄を渦巻きながら、浮かんでいた。


「フリーズブリッド!!」


俺が叫ぶと、次々に氷の弾丸がラッキーラビットを襲う。


ただのフリーズブリッドではない。


重力を操作して、速度を音速のおよそ5倍にあげている。


たちまち、ソニックブームが起こり、ゴォという弾丸が音の壁を破る音が聞こえる。


「は?」


「もう」


「また、レオ君は……」


何? この反応?


俺の放った極超音速の氷の弾丸は、俺の魔法『射撃式装置』によって、正確に軌道修正しながら、ラビットを襲う。


しかし、ラビットは信じがたく素早く、探知能力に秀でている。


咄嗟に飛んで逃げて、最初の射撃を次々と避ける。


だが、俺はフリーズブリッドの符を1000枚程用意しているので、構わず次々とラビット目指して撃ち続ける。


すると、ようやく20射目でラビットの心臓を射抜くことに成功した。


「やりました! ラッキーラビットを仕留めました!!」


「悪い。君、何言ってんの? て言うか、フリーズブリッドって、普通同時に数発発動するのがやっとなのに、何で君はそんなにたくさん氷の弾丸を出現させることが出来るのだ? 同時に20発位目標に向かってたよな? いや……それ、上級魔法フリーズンと同じじゃない? ねえ、それに君、氷の弾丸を曲げてコントロールしてたよね? それって、失われた技術。攻撃魔法の目標への誘導じゃないのか?」


俺はなんかやらかしたような気がした。

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