上手くいくかしら……


 「いや〜!流石は王子の側近であり、攻略対象の一人でもあるガスティン様ね!これならきっとラスティーク様と二人きりになれるわ!」

 校内を上機嫌で歩きながら爽やかな雰囲気を纏い、サロンへは寄らずに寮へと向かう(普段はこっそりラスティーク様の使用しているサロンを覗いている)

 クリュッセルは寮の自室に戻るとリャイナに『シンプルな便箋を用意して。それと、自分が書いたとバレないように便箋と封筒、それから蝋印を用意して』と伝えると早速どのように呼び出しをするのかを考えていた。

 (自分が書いたとバレないように。それでいて警戒されて取り巻きと来ることがないようにしなくちゃね………でも、来なかったらどうしましょう!?そんなっ!ラスティーク様!私というものがありながら他の人と添い遂げるつもりなのですか!?いや!ラスティーク様は私と将来を添い遂げるのよ!絶対にそんなの有り得ないわ!だって、だって───)

 「─セル様。クリュッセル様!」

 リャイナの問いかけに暴走していたクリュッセルは意識が戻ってくる

 「あ、あら、リャイナ。どうしたのかしら?」

 「クリュッセル様…クリュッセル様が頼まれた便箋と封筒の用意が出来ました。蝋印も此方に」

 そういうリャイナの持ってきたトレイにはシンプルかつシックな便箋と封筒。封蝋と蝋印があった

 「ありがとう。リャイナ。でも、蝋印はいいわ」

 「?なぜですか?」

 本来なら使うはずの蝋印を必要ないということは一体どういうことなのだろうか?とリャイナが問いかけると

 「秘密の手紙なの。だから、誰にもバレないようにコレを使うのよ」

 と告げ、どこでいつの間に用意したのか何も刻まれていない蝋印がクリュッセルの手元にあった

 「…!…わかりました。それでは私はこれで。何か御用があればお申し付けください」

 「えぇ、分かったわ」


 リャイナがクリュッセルの部屋から出るとクリュッセルは筆を走らせた。サラサラと止まることを知らないように





 ───翌日(放課後)───




 ラスティーク様の机に移動教室の時にこっそりと昨日の手紙を入れ、先に庭園へとクリュッセルは向かう

 (ラスティーク様、私の手紙に気付いてくれるかしら?一人で来てくれるかしら?)



 ──ラスティークside──


 (手紙を出した相手は一体…いいえ、それはこの際どうでもいいわ。取り敢えずはこの条件を飲み込まなくては…)

 「ラスティーク様!本日もお美しいですわ!」

 「やはりシャラナーダ様のお相手はラスティーク様しか考えられません!」

 (まずはこの二人を遠ざければね……)

 「ふふふっ…ありがとう。…ねぇ、アイリス、マニカ」

 「「はいっ!」」

 「今日、私は用事ができてしまったの。だから、今日はサロンには行けないわ」

 「そうですか……」

 「あの、その用事って私達も付いて行ってよろしいですか?」

 「いいえ、これは私一人でしなければならない事なの。ごめんなさいね」

 「いっ、いいえ!私の方こそ身の程を弁えず申し訳ありません!!」

 物凄い勢いでペコりと頭を下げ、謝るマニカを見て、ラスティークは『気にしなくていいわ』と告げると一人で示された庭園へと向かうのだった

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