優しい先輩
ラスティーク様との二人きりの時間を邪魔されてしまったクリュッセルは校舎裏の庭園の外れに来ていた
(確かガスティン様は公式資料ではこの辺りで放課後を過ごして……)
辺りを見渡しているとガスティンが木陰に座り、本を読んでいた。クリュッセルはガスティンへと近付く
「こんにちは、ガスティン様」
すると、ガスティンは読みかけの本から顔をあげるとクリュッセルを見る
「あぁ、こんにちは、クリュッセル嬢。こんな所に一体何をしに来たんだい?ここはあまり華やかでは無い上、人気もない。誰も近付かないような所だが……」
「風の噂で聞いたんですの。ガスティン様が此方で放課後を過ごしていらっしゃると。そして本日はガスティン様に少しばかり話を聞いて欲しくて参りました」
そう告げるとガスティンは静かに微笑み
「そうか」
と一言、言うと隣へ座るようにと手招きをした。クリュッセルが隣へと腰を下ろすと
「それで、どんな話なんだ?」
「実は、私にはお慕いしている方がいるのです。けれど、その方とは二人きりになれたと思ってもすぐに人が集まって来てしまってほんの短い間のみしか会話ができないのです。それに、その方とは添い遂げることが世間一般的には出来ない方なのです」
と、ラスティーク様の名前は出さずに嘘偽り無く悩みを語ると
「その相手とは本当に二人きりになれないのか?」
「と、言いますと?」
「放課後に呼び出したりして二人きりになれる時間を作ることが出来ないのか。ということだ。そうすれば二人きりになれるのでは?」
「確かに!その手がありましたわ!…けれど、良いのでしょうか?もし、私の言っている方が婚約者が居るならば、宜しくないことを教えてしまったのでは?」
「…はははっ!それなら大丈夫だよ。君の相手は婚約者が居ないけど婚約が出来ない。って顔に書いてあるからな」
「なっ…!」
声を出して爽やかに笑うと、ガスティンはクリュッセルを見て優しく告げた
「まぁ、もしもそれでもダメだったら俺の所に来い。大したことは出来ないが、また相談相手になってやるよ」
「…ありがとうございます!」
クリュッセルが勢いよく立ち上がり、一礼して走り去っていく。心地よい風がその姿を優しい目で見送るガスティンの肌をなぞった。クリュッセルの姿が見えなくなると再び本へと視線を落としてから暫くして呟いた
「君を好きになってしまったのかもしれないな…」
そう呟いたガスティンの顔はほのかに紅色に染まっていた
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