放っといて


 ──午後の授業──

 着替える間も無く授業が始まる。クリュッセルは濡れ鼠状態でシャラナーダの元へと向かい、授業を受けようとする。

 「あぁ、やっと来たね。遅れていたようだけれ……っどうしたんだい!?怪我やどこか怪我をしていたりは……?」

 「大丈夫ですわ。少し手を滑らせて水を被ってしまいましたの」

 周りの令嬢からは驚きと侮蔑、冷笑が見える。しかし、此処でラスティークとその取り巻きにされたことを言うと更にラスティークに嫌われてしまう為、声には出さなかった。するとラスティークが現れ、わざとらしく驚いた振りをして声を掛けてきた。

 「あら?どうかされましたの?……まぁ!そんなに濡れていては風邪を引いてしまいますわ!早くこちらへ!着替えを用意しますわ!」

 そう言うとクリュッセルの手を引いて先生に『着替えをさせてくる』と告げ、クリュッセルとラスティークは校舎へと戻って行った

 「……何かあるな」

 そう、シャラナーダが独り言を零したことに気付かずに



 ──校舎・着替え室──

 「ラスティーク様、着替えを用意して頂き、ありがとうございました」

 (やったーー!!きた!好きな人の香りのする服!あぁ!幸せ~!)

 「別に。ただ、あの時に手を差し伸べればシャラナーダ様からの評価が上がるでしょう?貴女、本当にバカなのね」

 (あぁ、良いっ!その冷たい目と態度!幸せです!)

 「それでも、ラスティーク様は私に服を用意してくれました。それだけで充分嬉しいのです」

 はにかみながら答えるとラスティークは頬を少し染めでそっぽを向きながらぽつりと呟く。

 「本っ当に調子が狂う…なんでドキドキなんてしてるのよ…」

 するとコツコツコツと足音が聞こえ、扉が開くとラスティークの取り巻き令嬢達が入って来てクリュッセルを部屋から追い出し、廊下へと投げ出した。

 (そんなっ!いい雰囲気だったのに…)

 あまりのショックに悲しみにくれながら歩いているとシャラナーダと鉢合わせになる。悲しんでいるクリュッセルを見るとシャラナーダが手を差し伸べながら声をかけた。

 「どうしたんだい?そんなに悲しんで。僕で良ければ話を聞こう」

 しかし、ラスティークとの時間を邪魔されたクリュッセルはふいとそっぽを向きながら自分で立ち上がった。

 「なんでもありませんわ。放っといて下さいまし」

 と告げ、走り去ってしまった。その背中を見てシャラナーダはひとつの結論にたどり着いた。

 「もしかして、ラスティーク嬢に嫌がらせを受けたのだろうか…?これは、探りを入れる必要があるな」

 一方、走り去ったクリュッセルは授業をサボタージュして、木陰で休んでいた




 そして、全ての授業が終わるまでの約一時間、1人で悲しみにくれていた

 授業が終わるとクリュッセルは寮へと戻ろうとした。しかし、戻る際にまた2人っきりの時間を邪魔された事を思い出し、思わず涙がこぼれる。そうして泣いているとたまたまガスティンと出会った。

 「そんなに泣いてどうしたんだい?俺でよければ話を聞くよ」

 そう告げられ、あまり関わりのないガスティンになら。と思い、名前を伏せながら相談する事にした。

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