実質二人きりの昼食
──昼食の時間──
今日の午後も魔法実技を行うため、昼食は魔法実技場でメイドが持ってきた昼食を先生が出したテーブルとイスに座り、各自で摂るようだった。
「リャイナ、今日のお昼は何?」
「本日はチキンのハーブ焼き、オニアのスープ、ロールパン、ムーンフルーツでございます」
「えぇ、お願いするわ」
そして、クリュッセルがリャイナから貰ったオニアのスープをゆっくりと味わっていると
「相席、よろしいかしら?生憎、知り合いと一緒に座れる所が空いていなくて」
ラスティークがわざわざメイドと共に来て、クリュッセルに声を掛けて来る。
「ありg…えぇ、勿論ですわ。私、もう一度ラスティーク様とお話をしたかったのですわ」
(危ない危ない…うっかり心の声がダダ漏れになるところだった)
笑顔で始まったラスティークとの昼食。しかし、笑顔の裏にはお互いに思惑があった。
──ラスティークside──
それにしても、何で魔法実技場の端なのかしら?まぁ丁度いい所だし、昼食を摂るだけだからと人払いも済ませることもできた。これで、二人きりになれたわ。これなら十分嫌がらせも出来るわね。
でもまぁ、嫌がらせは昼食を摂ってからで良いわね。私だって昼食位は優雅に摂りたいもの。
けれど…なぜ此方をキラキラとした目で見ているのかしら!?
本っ当に調子が狂う。
──クリュッセルside──
はわわわわわわ!どうしましょう!ラスティーク様と二人きりに!そう!“ふ・た・り・き・り!”
あぁ!私!この世界に転生できて嬉しいわ!でも、どうしてヒロインなの!?どうせなら取り巻きに産まれたかった!あっ!でも我儘は良くないわ!だって二人きりになるために人目のつかない魔法実技場の端に座ったんですもの!でも、こうして上手くいくなんて嬉しいですわ!
…………少し興奮しすぎたわ。でも、昼食を食べ終わったら恐らく私に嫌がらせ(?)をしてくるでしょう。先程の誤発魔法も取り巻きの1人。けれど私には全くもって効かないわ!前世では小中高とぼっち&嫌がらせを受け続けたからね!…あれ?なんだか目から水が…まぁ良いわ。取り敢えず、私はこの世界の嫌がらせなんて効かないってことよ!
昼食を摂り終わるとラスティークがそっと口を開いた。
「……ねぇ貴女、どういうつもりかしら?」
クリュッセルにそう告げると取り巻きの令嬢達も私たちの所へ来て、彼女を取り囲んだ。
(ラスティーク様との時間を邪魔しないで欲しいわ!…じゃなくて、やっぱりね)
「どういうつもり。とは何の事でしょうか」
「っ!貴女!ラスティーク様の話を聞いていないの?」
「いえ、聞いているもいないも何の事を指しているのか理解出来ないので問いかけただけですが」
「何の事、ねぇ…私がシャラナーダ様の婚約者候補として一番という事を知っている?」
静かで落ち着いた声。けれど、確かにその声色には怒りが含まれるいる。
「えぇ、存じ上げております」
「それならば、何故シャラナーダ様が私の手を振りほどいて貴女のような格下貴族と組むのでしょうね?」
「それはっ…私には本当の意図は分かりません。なんせ貴い御方の考える事ですから。けれども、私のような者が可哀想と思い手を差し伸べてくれたのでしょう」
クリュッセルの答えに取り巻き令嬢は呆気にとられ、ラスティークは麗しい顔に潜んだ怒りを解いて告げた。
「そう、ならば仕方が無い事ですね。けれど、貴女が調子にのり今回の様な事を他の殿方とも繰り返すようでしたら…分かっているわよね?」
恐ろしい程の威圧を感じる。しかし、めげずに『はい』と告げるとラスティークは踵を返して魔法実技場の中央へと向かう。しかし、此方を振り返ると、
「あぁ、そう忘れていたけれど」
クリュッセルに向き合い、手を伸ばす。
「シャラナーダ様は貴女を哀れんだのでしょう?それならばより相応しい姿にしてあげましょう。」
パチンと指をならすと頭上から水が降ってきて濡れ鼠となった。クスクスと取り巻き令嬢達は笑う。
「良かったですわね。これで更に哀れんで優しくして貰えるわよ。まぁ、その姿では流石に人前には出れなさそうだけれど」
冷笑を浮かべラスティークは取り巻き令嬢と共に改めて魔法実技場へと向かった。
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