いつになったら二人きりになれるの?
─ラスティークside─
(何なのかしら、クリュッセルとかいうあの女!この私が折角シャラナーダ様と組んで魔法実技をしようと思っていたのに!シャラナーダ様は私の誘いには断りを入れ、あの女を誘った。信じられないわ!これはきっとあの女に誑かされたに違いありませんわ!)
シャラナーダには未だに婚約者がいないため、全ての令嬢が狙っている。しかし、婚約者にはラスティークが最も近い。
何故なら高位貴族で婚約者がいなく、王族に相応しい教養があり、血縁関係が比較的薄いのはラスティークのみだったからだ。
なぜ、ラスティークには婚約者がいないのかと言うと父がラスティークには国内では王族しか釣り合わないと考えているから。ラスティークには、王族の血が少な過ぎず、かと言って多過ぎないほど流れている丁度良かったからだった。
だから、ラスティークはずっとシャラナーダを追いかけ、その婚約者の座を虎視眈々と狙っていた。
しかし、ラスティークよりも身分の低いあの女がシャラナーダの手をとり、ペアを組んだ瞬間に苛立ちと憎悪が心の底から溢れたのだ。
あれだけ、手を出すなと忠告したのに無意味だった。それならどうすればあの女は身分を弁える?そう彼女が考えながら辿り着いたものは
“彼 女 を 学 園 か ら 追 い 出 す ”
という結論だった。
(どうすれば良いのかしら?手始めに恥をかかせる?それとも、怪我をさせる?どうすればあの女はシャラナーダ様を諦めるのかしら?……そうだわ!私の取り巻きに魔力の暴走に見せかけてあの女を攻撃してしまえば良いのよ!)
「本当は恋をして結婚したい。クリュッセルがシャラナーダ様と御付き合いするならば祝福したい」そんな心の声はクリュッセルをどの様に苦しめ、貶めるか考える声に掻き消された。
─クリュッセルside─
(ヤバいヤバいっ!さっきからラスティーク様が此方を睨んでいるっ!)
クリュッセルとシャラナーダがペアを組んでからはあっさりとペアが決まり、先程までの喧騒は消え、先生から伝えられた事に注意しながら、それぞれの適性魔法を使っていた。
「どうしたんだい?もしかして体調でも…?」
「い、いいえ!私はこの通り元気です!」
(まずかった…今は授業に集中しないと。もしシャラナーダ様に好意を向けている(この場合は見惚れるのも含まれる)とラスティーク様に勘違いされてしまったら……そんなっ!私には耐えられませんっ!)
「なら良かった。クリュッセル嬢だよね。確か昨日寮までの道を迷ってた」
「え、えぇ、長期休暇でうっかり迷ってしまったのですわ。あの時はありがとうございました」
このまま話を区切って授業に集中した。しかし、話を区切って授業に集中していても無慈悲にイベントは起こった。
「きゃぁぁぁぁ!魔法の暴走よ!」
「おい!シャラナーダ様とクリュッセル嬢の方へと火球が行ってる!」
「御二人とも逃げてくださいまし!!」
(あ、忘れてた!出会いイベント後のそれぞれのイベントの内、シャラナーダ様のイベントは授業中に起きた魔力の暴走とそれによってできた火球からヒロインを守るんだった!)
「おや、危ないな」
シャラナーダ様はそう言うと防衛魔法を構築し、火球を防ぎ、魔力を空気中に分散させた。
「クリュッセル嬢、お怪我はありませんか?」
防衛魔法の術式を解くと私に駆け寄って心配をする
「…え?今、詠唱…?あれ?」
「お怪我は無さそうですが頭が混乱しているようですね。今のはクリュッセル嬢の魔力量を考えても練習すれば可能ですよ。詠唱無しというものは基本的には高位の能力が必要ですけれど」
ぽかんとするクリュッセルを横目にシャラナーダは優しく微笑み、『先生、クリュッセル嬢を少し日陰で休ませておきますね』と告げると私の手をひいて魔法実技場の林の入り口へと連れて行き、二人で少し休憩をする。
本来ならばシャラナーダは戻らなければならないであろうが、先生は魔力を暴走させてしまった生徒への対処で忙しそうで少しくらいならバレなさそうであった。
少しの休憩の後、クリュッセルは再びシャラナーダと魔法実技の練習を行い、小一時間したところで昼食の時間となった。
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