待望の寮生活
(ちぇっ!なんで、なんで親友である私を置いて取り巻きと帰ってしまわれてしまったの!?ラスティーク様…)
親友にすらなっていないラスティークに対して先に帰っていたことに気が付きなんとも言えない感情を持つ。しかしなんと言っても転生者クオリティ、推しの行動に対して何でもかんでもポジティブシンキングが出来るタイプだった。
(いや待てよ…もしかしてこれってラスティーク様なりの“愛情表現”で、もしかすると生徒会長じゃなくて私に好意を向けているけどバレてはならない恋だからあえて突き放すのね!…もう!ラスティーク様はツンデレなんだから♡)
とか何とか思いながら(と言うか脳内劇場を繰り広げながら)寮へと向かう途中、例の如く乙女ゲームイベントは始まる
「やぁ、どうしたんだい?さっきからフラフラしている様だけど…」
(こ、この声はっ!!)
後ろから突然声を掛けられハッと我に帰る(というより現実に戻る)とそこに居たのは、生徒会長のシャラナーダ・クナーズ・ルーク
(ま、マズイっ!ついに出会いイベントが始まってる!)
「い、いえ、ちょっと迷ってただけですわ」
(シャラナーダ・クナーズ・ルークの出会いイベントはこの会話のみ。それならば最低限の挨拶と会話を済ませれば用済みのはず)
「そうかい、ならこの廊下を右に曲がり、さらに30m先に行ったところを左に曲がれば寮だ。気を付けて行くんだよ」
(ま、眩しいっ!流石は王子!この輝きを放つから王子様キャラが好きな人であれば落とされてたわ。でも、私の心はラスティーク様の物。いいえ、心だけではありません!身体もラスティーク様が望むのならば捧げる所存でございます!)
「ありがとうございます。それでは私はこれで」
ぺこりと軽く頭を下げてその場を立ち去ると肩の力が抜けるのが実感できた
(これが乙女ゲームの…いいえゲームの強制力なのね。なら、なおのことラスティーク様を護らなければ!ラスティーク様に幸のあらんことを!……でも、
いきなり声を掛けられて驚嘆したけど、ここは取り敢えずゲームと一言一句違えない返しをするべきとの判断は正しかったわね)
寮に着いてから自室へと向かうと広い部屋にキングサイズのベット、豪勢な飾りのドレッサーが置かれ、シャワールームも完備されていた
(ひゃー、凄いわ。流石、国立魔法学園ね。生徒の殆どを貴族が占めるだけあって設備が豪華ね)
部屋には来客用のティーセット、机、ソファーも置いてあるが、ここは一人部屋。一人で全てするわけでもないが寂しい
(そういえば此処ってペット可なのよね…じゃあ猫か犬でも…?いいえ!やっぱり小鳥が良いわね!前世から飼ってみたかったのよ〜!それに猫や犬だとなんか色々壊しそうで怖いし…)
まだ飼うと決まってすらいないペットに思いを馳せていると部屋をノックされ、夕食の時間と言うことを伝えられた
夕食はどうやら食堂かサロン、個室の何処かで摂るようだったのだが何せクラスで一人ぼっち。誰も声を掛けてくれない。それどころか此方を見てコソコソと話をしている様だ
(まぁ、教室でも何か避けられてたし、しょうがないけどさ、他クラスの人は話しかけてくれても良くない!?泣くよ!私!ガラスのハートなんだから!)
というような寂しい食事を「誰か話しかけてくれてくれるかもしれない」と淡い期待を込めて1人食堂で摂った帰りに再び出会いイベントは発生する
「うわっ!」
少年が中庭で倒れていたのだ。怪我は浅いようだが傷が多いため痛々しく見える
「…何?僕に何か用ですか?用が無いなら帰ってください」
明らかに不機嫌そうな声色を出しながら少年は起き上がる
(か、彼はもしかしなくてもラスティーク様の弟、フィリオス・ナリュータ!彼は確か怪我をしていた所をヒロインに魔法で治療してもらうことによってヒロインに興味を持つはず…でも、私はラスティーク様とイチャイチャラブラブしたいから本来は無視するべきイベント。でも、此処でほっとくわけにはいかないわ!弟がいるならば弟という名の堀から埋めていけばいいのよ!)
「用ならあるわ」
「は?僕達、初対面ですよね。初対面の人に用って何なんですか?」
いきなり『僕に構わないで』という言葉をオブラートに包んでバットで打ったのにあっさりキャッチされたことにイラッとしたが、その感情はあっさり消えた
「貴方の怪我を治療するの。動かないでね」
「は?」と言う前に彼女は呪文の詠唱を始め、水魔法で消毒を始める
「水の精よ我が元にそなたらの力を貸したもうことを願う。今ここに清らかな水を形成し給え。ホーリーウォーター」
何処からか集まってきた綺麗で澄んだ水。魔法では再現不可能なはずの透明さを持つ水を目の前の彼女は僕の怪我に掛けてきた。痛い。手加減くらいして欲しい
「何してるの?」
少しばかり怒気をはらませて声をかけると
「治療前の消毒代わりです。それでは続きを始めますから」
なんて言い始めると今度は違う詠唱を始めていた
「宵を照らす月と共に我らを見守る星々よ我が元に癒しの力を収束し、彼の者、フィリオス・ナリュータの傷を癒し給え。ヒール」
私が持つ、星の魔力にしか出来ない回復魔法を使うとフィリオスは驚き、こちらを見て
「誰も助けてなんて言ってないんだけど。…でも、ありがとう。君のおかげで早く傷が治った」
というツンデレ好きには堪らない一言を残すとその場を去って行ってしまった
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