遂に感動(?)の御対面
ピタリと馬車が止まり、遂に乙女ゲームは始まる
「お嬢様、学園に着きました」
「ありがとう。セバスチャン。行くわよリャイナ 」
「分かりました、お嬢様。お足元にご注意下さい」
「えぇ。ありがとう」
ここ、国立魔法学園は全寮制。魔力がなくともある程度の家格があれば入学でき、庶民でも一定数の魔力があれば入学が可能である
(普通、この手の乙女ゲームは庶民の少女がヒロインになるはずなんだけど、これは貴族の産まれで他人よりも魔力量が圧倒的多いクリュッセル・ナージャがヒロインになる話…だけど私の魂(?)が彼女の体に入った時点でもう破綻するのよね…)
学園の講義堂に入り、入学の儀と新学期の儀が執り行われるとなると総勢七百人余りが入ることになるから勿論、八百人も入る講義堂も狭くなるのも必然である
余りにも長過ぎる学園長の話が終われば次は学園の王子(いや、そもそも王子ではあるが)という二つ名を持つ生徒会長『シャラナーダ・クナーズ・ルーク』の挨拶だ
美しい容姿をしているため、壇上にあがった途端(あがる前からではあるが)に五月蝿い程の黄色い声があがると同時に倒れる人も出てくる
(いや、ちょっと待て!五月蝿すぎる!正直いって鼓膜破れるわ!!…男子はどんな感じ何だろう)
ふと気になり男子の方へと視線を向けると、なんということでしょう!女子同様に黄色い声…もとい野太い声があがっている
(……は〜…確かにさ、彼は太陽の様な瞳と髪を持ち、白い肌を持つ美形だが男子にまでモテてるとは…いや、あれはただの憧れだな!だって弟がヒーローを見てる時と全くもって同じ反応と顔だし)
一方で先生方は何事も無いかのように全てに関して無関心を貫く
(これは幾ら何でも無関心すぎだろ!注意くらいしてくれよ!)
無事(?)に入学の儀と新学期の儀が終わり、各教室に向かう事になったが、道中は誰一人として彼女に話しかけては来なかった
『ねぇ!なんかめちゃくちゃ避けられてる!酷い!いや、慣れてるけどさ!』心の中でそう叫ぶ
(クラスに着いたけど…いや、この子どれだけぼっちだったのよ…誰も話しかけてこないんだけど)
これからどうやって
「ねぇ貴女、名前は何と言うのかしら?」
頭上から降ってきたのは少しばかり艶っぽい声。そして顔をあげて声のした方を見上げるとそこには
宵闇に輝く月の如き輝きを放つ髪に透き通るほどの白い肌をもち、山を彩る紅葉の色をした曇りなき瞳をした可憐で気高い雰囲気を纏う美人であった
(あ、ありがとうございますぅぅぅぅ!!神様仏様イエス様!推しのご尊顔と声を生でありがたく見せていただきます)
私は立ち上がり、堂々とした態度で自己紹介をした
「ク、クリュッセル・ナージャと申します。ナージャ伯爵家の者でございます」
(あ、ヤバい緊張しすぎて声裏返ったんだけど)
流石に不敬かと思い、彼女を見てみると
「ナージャ伯爵家の御令嬢ですね。私はラスティーク・ナリュータと言うわ。爵位は公爵ですの。これからよろしくねクリュッセルさん」
と柔らかな微笑みを此方へ向けて自己紹介までしてくれた
一応言っておくが、ラスティーク的には『私の方が上なの。だから私の恋路は邪魔してないでね(圧)』的な意味を込めていたのだが…
(……っ!!!!ありがとう。私、死んで此方の世界のヒロインになれて良かった。推しに生で会えた嬉しすぎて心臓痛い)
やはり推しの目の前にいる人には真意は見抜けなかったようだった
「此方こそ、よろしくお願いします、ラスティーク様」
と幸せいっぱいの幸福の泉が溢れまくりながら台風と竜巻が同時に起こっている人には効果はまったくと言っていいほど無かったのだった
一方ラスティークと言えば此方の意図を理解したものと受け取り、腹の中では黒いことを考えていながらもあくまで友好的な対応を返す
(あ、あぁ、なんてこと…あのラスティーク様が私に対して友好的!嬉しい!ここに生きていけることに感謝!)
そんなやり取りをしている内に授業の時間となり、二人のやり取りはそこで終わった
(あ、もう時間…今ならシンデレラの気持ちが分かるわ。好きな人(推し)と出来るだけ沢山一緒に居たいものね)
授業は魔法のみかと思いきや科学や地理、歴史の他に計算などの至って普通の教育もされていた
(まぁそうでしょうね。国を担う人ばかりが通うから普通の教育も必要になるし)
計算と科学に関しては前の世界とまったくと言っていいほど同じであった。(科学に関しては遅れているようだった)
そんな、高校時代を彷彿とさせるような学習が終わればサロンで友人との会話やお忍びで下町へと出る人、寮に速攻で戻り、人との付き合いを必要最低限にする人もいた
(私はどうしようかな。まずはラスティーク様の動きを見てみよう。そして彼女と同じサロンに入るんだ!そしてお近づきの印に…うへへへへ)
なんて邪な考えを巡らせる間にもうラスティーク様は取り巻きの令嬢と帰っていることに気がつくのはあと十分後
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