第46話

水原先生の意外な素顔にショックを受けていたが、今日もまた随分と前進できたことが嬉しかった。



もう少しで腕時計を探しだす事ができる気がする。



みんなでファミレスに向かい、昼ご飯を食べている時だった。



健のスマホに近藤先輩から連絡が入った。



「今からここに呼んでもいいか?」



という健の質問に、嫌がる人は1人もいなかった。



数十分後、こんがりと日焼けした近藤先輩がファミレスに姿を現した。



「やぁ、久しぶり!」



そう言って大き目のグラサンを外す。



目の周りだけ白くなっていてなんだかおもしろい。



アロハシャツに短パン姿で、すぐにでも海に行けそうな格好だ。



「先輩は夏休みを満喫してるんですね」



あたしはオレンジジュースを飲んで恨めしそうにそう言った。



「もちろんだ! 君たちも、随分と頑張ってるみたいだな」



そう言いながら、近藤先輩は開いている渚の隣に座った。



一瞬、海が嫌そうな顔を浮かべた。



しかし近藤先輩は気が付かないようだ。



「近藤先輩にも連絡がいってるんですか?」



健がそう聞いた。



「あぁ。校長から聞いたんだ。前回の時の話も俺から校長に伝えたからだろうな」



「あたしたちも結構時間かかってると思うんですけど、まだメンバーは減ってないんですよ」



あたしは気になっていたことを聞いてみた。



近藤先輩は、探し物をしている間に仲間が1人、また1人といなくなってしまうと言っていた。



「あぁ、それについてもちょっと考えてみたんだけど、先に俺の話を聞いてくれるか?」



またなにかオカルト話だろうか?



それならもうお腹一杯だ。



今年の夏は毎日旧校舎に入りびたりだもん。



「君たちが見ている映像と、前の経験者が見えていた映像は劇的に違う」



「へ……?」



近藤先輩の言葉にあたしたちは目を見開いていた。



「それって、どういうことですか?」



陽がそう聞いた。



「君たちが見ている映像は毎日別の物で、どんどん真相に近づいて行ってるんだよな?」



「はい、そうです」



陽が頷く。



「だけど、前の経験者の時は毎回同じ映像が流れていただけみたいなんだ。探し物が見つからなくても当然だったんだ」



「うそ……」



渚が小さく呟いた。



同じ映像ばかりが流れる中で探し物なんてできるハズがない。



「それで君たちの行動と前の経験者の行動を照らし合わせてみたら……事件の真相を暴くために昼間も行動していたのは、君たちだけだった」



「つまりそれって、探し物の時間以外にも積極的に行動していれば、映像もそれについてくるってことですか?」



陽が聞く。



近藤先輩は大きく頷いた。



「おそらく、そういう事なんだろうな。君たちが1人ずついなくならない原因も、その辺にあると思うんだ」



そうだったんだ……。



死んでしまった飯田アキラからしても、自分の大切なものを本気で探してくれる人がいるというのは、嬉しいのかもしれない。



「おっと、もうこんな時間か。じゃ、俺は行くから」



そう言い、慌ただしく立ち上がる近藤先輩。



「もう行くんですか?」



「あぁ。今日は君たちに報告をしに来ただけだからね。それに、ひと夏の彼女を待たせちゃ悪いしな」



近藤先輩は自分で言って自分で頬を赤くし、ファミレスを出て行ったのだった。

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