第39話
吉原先生は1人になりたくてここにいるのかもしれない。
そんな事を考えていると、不意に吉原先生が立ち上がった。
迷わず、真っ直ぐに歩き出す。
その目は真っ赤に充血していて、ついさっきまで泣いていたように見えた。
「先生、どうしたんだろうね」
渚がそう聞いて来たのであたしは無言のまま左右に首を振った。
吉原先生は真っ直ぐ生徒の机へ向かって、そして立ち止まった。
そこは五十嵐孝の机だった。
吉原先生は身をかがめ、机の中に手を突っ込む。
「ちょっと、あれ何してんの?」
渚があたしの手を握りしめてそう聞いて来た。
「たぶん、腕時計を探してるんだろうね」
武田陽太の話が本当なら、今まさに机から腕時計を盗んでいる所だ。
案の定、引き抜いた吉原先生の手にはきらりと光る腕時計がしっかりと握られていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます