第25話

「でも、どうしてこの人だけアルバムの最後なの?」



渚が不思議そうな顔を浮かべてそう言った。



そう、その写真はクラス写真ではなく、アルバムの最後に大きく印刷されているのだ。



「ちゃんと呼んでみろ」



健にそう言われてもう一度ページを確認すると、写真の下に名前。



飯田アキラと言うらしい。



その下に享年16歳と書かれている。



「享年16歳って、高校1年生で亡くなったってこと?」



渚が聞く。



「当たり前だろ、お前頭悪いな」



海がいちいち憎まれ口を叩く。



「ちょっと待てよ、これっておかしいだろ」



アルバムを見ていた陽が眉間にシワを寄せてそう言った。



「おかしいって、なにが?」



あたしはそう聞き返した。



「死んでいるのは飯田アキラって生徒だけか?」



その質問に、あたしは顔の歪んだ3人の男子生徒たちを思い出していた。



「そっか。他の3人はどうなんだろう?」



「どっちかといえばあの3人の方が幽霊じゃん」



渚が言う。



「死んだとしても、高校を卒業してからとか?」



健が首を傾げながらそう言った。



アルバムに載っていないのだからきっとそう言うことになるんだろう。



ん?



じゃぁなんで彼らは学生服で出て来るの?



記憶の中の彼らが学生服なのはわかる。



だけど、それ以外の場面で出て来た彼らもちゃんと学生服を着ていた。



「あの3人も探そう」



疑問が浮かんできた時、陽がそう言ってアルバムをめくりはじめた。



隅から隅までくまなく探していくと、すぐに3人の姿を見つけた。



1人は五十嵐孝(イガラシ タカシ)。



1人は松田邦夫(マツダ クニオ)。



1人は武田陽太(タケダ ヨウタ)。



というようだ。



3年生になった彼らは随分と大人っぽく見える。



陽はノートを取り出してその4人の名前をメモして言った。



「昔のアルバムだから住所も書いてあるかもしれないよ」



横からそう言うと、健がページをめくって住所欄を見つけ出した。



やっぱり。



今のアルバムは個人情報の取り扱いとかで住所を載せなくなったけれど、昔は住所が書かれていた。



「この住所に訊ねて行ってみれば、本人たちの家族がまだいるかもしれない」



陽は興奮気味にそう言った。



確かにその通りだ。



でも今日はもう……。



図書室の時計を確認すると、午後3時になっている。



夜中に旧校舎へ向かうから、少しでも眠りたい。



「今日はこれで一旦解散しよう。随分と重要な事もわかって本当によかった」



健はそう言い、ほほ笑んだのだった。

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