第23話

お母さんの意外な忘れ物を見つけただけでこの日の探し物は終わってしまった。



夜中の2時から3時の間だけ、しかも映像を見た後から探し始めるからなかなか探し物は進まない。



冷気がスッと消えて行くあの瞬間は深い安堵に包まれるが、今日も成果はなかったと落ち込んでしまう。



翌朝。



あたしはまだ眠い目を無理やりこじ開けて渚と2人で学校の図書室へと来ていた。



最近は課題が全く進んでいないので、さすがに不安になったのだ。



「新校舎って新鮮だね……」



校内を歩いて図書室まで向かっている途中、渚はしみじみとした表情でそう呟いた。



「そうだね。昼間だし、明るいし」



あたしは何度も頷いてそう言った。



綺麗に掃除をされている校舎はとても気持ちがいい。



これからは掃除をもっと真剣に頑張ろう。



そんな妙な気合まで入って来る。



図書室でしばらく課題をしていたが、不意にポケットの中のスマホが震え始めた。



膝の上にスマホを隠しながら確認してみると、健からのメッセージだった。



《今から学校へ向かおうと思うんだけど、咲紀と渚も来れないか?》



そんな内容のメッセージを渚に見せる。



「学校って、旧校舎?」



「わかんない。でも、旧校舎なら旧校舎って言うよね?」



小声でそんな会話をして目を見交わせた。



健はここへ来るつもりなのかもしれない。



あたしは自分たちが今学校の図書室へいる事を伝えた。



すると《すぐに行く》と返事があり、あたしたちは再び課題へと視線を向けたのだった。


☆☆☆


健1人が来るのかと思っていたけれど、海も陽も一緒だった。



そういえばメッセージが来た時に渚の名前も書かれてたっけ。



全員で集まろうって意味だったようだ。



「なんだ、真面目に勉強してたのか」



海が渚へ対してそう言った。



「あたしは海と違って真面目ですから」



渚はそう言い返して舌を出した。



「冗談だろ? 咲紀に教えてもらわないと問題が解けないからだろ」



「それは海の方でしょ?」



「さっそく喧嘩を始めるなって」



呆れたように陽に言われて2人はようやく大人しくなった。



「男子たちはどうしてここに?」



あたしはそう聞いた。



見たところ勉強をしに来たわけじゃなさそうだ。



「あぁ、そうだったな。俺たちは先生に話を聞きに来たんだ」



思い出したように健がそう言った。



「先生に?」



「あぁ。今日は小藪先生が来てるからな」



小藪先生とはオカルト部の顧問の先生で、怖い話ならどんなことでも知っているような男の人だった。



「そっか。小藪先生なら旧校舎についてなにか知ってるかもしれないんだ!」



思わず声が大きくなってしまい、慌てて周囲を見回した。



真面目に勉強をしに来ている生徒たちが何事かと視線を向ける。



「あぁ。この学校の事だし、何も知らないってことはないはずだ」



健はそう言い、大きく頷いた。



「じゃぁ、さっそく行こう」



あたしはそう言い、立ち上がったのだった。

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