第22話
「咲紀、なにか見つかったか?」
そう聞かれて顔を上げると頭からホコリをかぶった健を目が合った。
「まだなにも。健、どこを探したらそうなったの?」
あたしは健の髪からホコリを払いながらそう聞いた。
「あぁ、カーテンの奥だ」
そう言われてあたしは窓辺へと視線を向けた。
カーテンは引かれているが、劣化であちこち破れている。
「ここの窓は狭いけど出窓みたいなスペースがあるんだ。小さなものならそこに置いてあっても不思議じゃないと思ったけど、何もなかった」
「そっか……」
「おい、これは?」
陽の声に振り返ると、陽は生徒手帳を手に持っていた。
「生徒手帳!?」
あたしと健は陽へ駆け寄った。
他の2人もすぐに近づいてくる。
「写真も入ったままだ」
そう言って手帳を開いてみると、女子生徒の写真が出て来た。
おさげ髪ではにかんだ笑顔を浮かべている。
「これ、なんか関係あるのか?」
海が生徒手帳をマジマジと見つめてそう呟いた。
「わからない。だけど学生が落としそうなもの上位だろ」
陽は自信満々にそう言った。
でも……「ごめん、これは全く関係ないと思う」あたしはそう言い、ため息を吐き出した。
「は? なんでそんな事言い切れるんだよ?」
陽はムッとしたようにあたしを睨んだ。
「ごめん陽、悪気はないんだけど……この生徒手帳に写っているのはあたしのお母さんだから」
あたしはそう言い手帳を自分の顔の横にかざした。
「まじかよ」
海があたしと生徒手帳のお母さんとを交互に見つめる。
「うわ、ほんとだ! 咲紀そっくり!!」
渚が興奮気味にそう言った。
「お母さん、生徒手帳をここに忘れたままだったんだ」
あたしはそう呟いて笑った。
「咲紀、念のために聞いておくけど……」
陽がジッとあたしの顔を見て真剣な口調でそう言った。
「な、なに?」
「そのお母さんは亡くなってないよな?」
「健在です!!」
あたしは陽の質問に即答したのだった。
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