第18話

家に戻って来たあたしは家にいたお母さんにさっそく話を聞いてみる事にした。



今42歳のお母さんは26年前あたしと同じ16歳だった。



「ねぇお母さんの高校生時代ってどんなだった?」



「なによ急に」



リビングでおせんべいを食べながらテレビを見ていたお母さんは怪訝そうな顔を浮かべた。



「ちょっと気になって」



あたしは曖昧に笑ってごまかした。



「お母さんたちの時代はとっても穏やかだったわよ」



お母さんは懐かしむように目を細めてそう言った。



「そうなんだ?」



「えぇ。少し昔にヤンキーブームがあったけれど、それもひと段落して安定している時代だったと思うわ」



ヤンキーブームって……。



産れる時代が少し早ければお母さんもヤンキーになっていたのかな?



「お母さんにとって、その頃の宝物ってなに?」



「宝物? なんだったからしらねぇ?」



お母さんは頬に手を当てて首を傾げた。



一生懸命思い出そうとしているけれど、眉間にシワを寄せたまま黙り込んでしまった。



「あ、そういえば……」



「なにか思い出した?」



「自転車だったかもしれないわね」



そう言い、懐かしそうに目を輝かせるお母さん。



「自転車……?」



「そうよ。通学用の自転車を自分のお小遣いをためて買ったのを思い出したわ」



「そうなんだ?」



「えぇ。今よりも価格が高めで、お金をためるのに随分時間がかかったのよ。だから自分の好きな自転車を買えたときはとっても嬉しかったの」



お母さんはまるで少女のように頬をピンク色に染めてそう言った。



自転車かぁ……。



あたしはぼんやりと3人の顔を思い出していた。



あの3人は広間を探し歩いていたし、当てはまらなさそうだ。



「そっか、ありがとうお母さん」



あたしはそう言い、自分の部屋へと向かったのだった。


☆☆☆


部屋に戻ったあたしはさすがに睡魔に襲われて、ベッドに横になった。



目を閉じるとすぐに夢の中へと引き込まれて行ったのだった。



「咲紀、なにしてるの!」



そんな声が聞こえてきて目を開けると、瞼がとても重たかった。



まだ寝ていたいという気持ちがあり、寝返りをうつ。



「いつまで寝てるの!?」



そう言われ、無理やり布団を取られてしまった。



渋々目を開けると、窓の外が暗くなっているのが見えた。



「え……?」



一瞬時間の感覚がわからず瞬きをする。



「部屋で大人しく勉強してると思ったら!」



ハッとして上半身を起こした。



ドアの前に仁王立ちをしているお母さんがいる。



「お母さん、今何時?」



「夜の11時よ! ご飯とっくに冷めてるわよ!」



「すぐ行く!」



大慌てでベッドを起きだす。



夕飯とお風呂を終わらせて旧校舎へ行く準備をしなくちゃいけないのに!



バタバタと慌ただしく階段を駆け下りてダイニングへ向かう。



ラップにくるまれたハンバーグが置かれている。



すっかり冷めてしまったそれをご飯の上にのっけて一気にかき込んだ。



慌てたせいで何度もむせたけれど、どうにか晩ご飯を終わらせた。



ぬるめのシャワーを頭から浴びていると、ようやく目が覚めていくようだった。



「今日こそは、なにを探せばいいのか突き止めないと」



シャワーを浴びながらあたしはそう呟いたのだった。

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