第16話

しばらく教室内を探していたあたしたちだけれど、不意に明かりが消えて暗闇に包まれていた。



「もう、なんなのよ!」



渚がすぐにライトを付けて文句を言う。



「時間切れ……か?」



陽がそう呟いた時だった、柱時計が3回鳴り響いた。



夜中の3時だ。



冷たかった空気が徐々に夏の暑さを取り戻して行く。



「1時間内に見つけ出せってことなのかな……」



あたしは周囲を見回してそう呟いた。



「たった1時間じゃ無理だよ……」



渚が眉を下げて弱気な発言をした。



せめて何を探せばいいのかがわかっていればいいのに……。



そう思い、あたしは1年3組の教室を見回した。



彼らのクラスと顔はわかったけれど、そこからどう進めていいものか。



「とりあえず、一旦帰ろうぜ。明日もここに来るなら少しは休んだ方がいい」



健の言葉に、あたしたちはぞろぞろと旧校舎を後にしたのだった。


☆☆☆


こっそり家に戻って自分のベッドに身を沈めても、全く眠れる気配はなかった。



何度も何度も彼らの顔を思い出してしまう。



1人は色黒で体格がいいスポーツマンタイプ。



1人は背が高くてヒョロリとしていた。



そして最後の人は中肉中背の釣り目だった。



しっかりと脳裏に焼き付いている。



彼らは大人しいクラスメートに何を話しかけていたんだろう?



返事をしてもらえていなかった様子だけれど、仲が悪いのかもしれない。



あの映像を見せたと言う事は、あのクラスメートも関係しているのかな……。



そんな事をベッドの中で考えていると、窓の外が明るく鳴りはじめてしまった。



小鳥のさえずりが聞こえ始めてあたしは眠るのを諦めた。



きっと、みんなも今日は眠れていないだろう。



その考えが的中していたと知ったのは6時半になって突然スマホが鳴りはじめたからだった。



驚いて布団を跳ねのけてテーブルの上のスマホを手に取った。



健からのメッセージが届いている。



《朝早く悪い。今日みんなでもう1度集合しようと思う。来られるか?》



その文面にあたしは大きく息を吐き出した。



あたしも、1人で悶々と考えているよりもみんなと一緒にいたかった。



あたしはスマホを片手にベッドに座った。



《もちろん会えるよ。何時から?》



そう送ると、すぐに返事があった。



《できたら朝から集合したいと思ってる。ってか、咲紀ちゃんと寝たのか?》



この時間にすぐ連絡を返したことで、眠っていない事がバレたようだ。



《眠れなかった。健もでしょ?》



《あぁ、そうだな。さすがに寝る気にはなれなかった。早く探し物を見つけて栞を返してもらおうぜ》



その文面にあたしは大きくうなずいた。



あたしだけじゃない。



みんなが一緒にいるから、きっと大丈夫だ。



そう思い、あたしはシャワーを浴びて頭をスッキリさせることにしたのだった。

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