第14話
旧校舎へ向かうと、入口の周りにはすでに3人の男子たちが到着していた。
「みんな早いんだね」
男子たちの姿を見てホッと安堵のため息を吐き出して、そう言った。
「あぁ。近藤先輩の言った通りだったよ」
健がそう言い、旧校舎を見上げる。
昨日と同じように近づくだけで肌寒さを感じる。
気のせいか、足元までずっしりと重たくなるような感覚だ。
それでも、気持ちは早く旧校舎へ入りたいと思っていた。
「全員集まったし、少し早いけど入ってみるか」
海がそう言い、誰からの返事も待たずに歩き出した。
「時間がこないと何も起きないよね?」
渚がそう聞いて来たので、あたしは首を傾げた。
もしかしたら入ってすぐになにかが起こるかもしれない。
あたしは唾を飲みこんで旧校舎を見つめた。
何が起きても大丈夫なように、覚悟を決めておかないといけない。
あたしは両手でライトを握りしめて、海の後に続いたのだった。
☆☆☆
旧校舎に足を踏み入れた瞬間、あたしは身震いをした。
やっぱり寒気がする。
渚があたしの服の袖を掴むので、あたしは渚の手を握りしめた。
とても寒いのに、あたしたちの手は少し汗ばんでいる。
「なにもないな」
広間まで来て柱時計を確認しても、時計は動いていなかった。
やっぱり、時間が早かったからだろう。
さっきまでは早く旧校舎へ行きたいと感じていたのに、今はその気持ちが少しも残っていない。
「2時になるまであと30分はある。少し校舎内を調べてみよう」
後ろから来た健がそう言った。
「校舎内を調べる……?」
あたしはそう聞き返した。
「あぁ。探し物のヒントになるようなものが隠されているかもしれないだろ」
確かにそうかもしれなかったけれど、この校舎内を歩き回る勇気なんてあたしにはなかった。
「この校舎はそんなに広くないもんな。どこにどんな教室があるのかくらいなら、すぐに調べ終われそうだな」
陽はそう言い、また歩き出した。
たしか広間を抜けると1年生の教室があったはずだ。
ライトの明かりがいつ消えるかとドキドキしながら廊下を進んでいくと、1年生の教室がすぐに見えた。
どの表札もほとんど消えかけているし、廊下側の窓も劣化しひび割れている。
あちこちに蜘蛛の巣が入っていたり、ホコリが積もっていたりして見ているだけでどんどん体温を奪われていくようだった。
1年3組までしかない教室を抜けるとその隣は2年生の教室になっていた。
こちらも3組までしかない。
今に比べると随分と生徒数が少なかったようだ。
2年生の教室を抜けると廊下は左右に別れていた。
ライトで照らしてみると、右手が職員室と会議室。
左手にはトイレと保健室があった。
「1階はこれだけか」
陽がそう呟いた。
3年生の教室と、他の教室は全部2階にあるようだ。
「階段ってどこにあった?」
健がそう聞くと「玄関を入ってすぐ右手だ。広間とは逆方向だから見落としたんだろ」と、海が言った。
少し口の悪い海だけれど、しっかりと見てくれていたようだ。
あたしたちは海の言う通り一度玄関へ戻ってみると、確かに階段が見えた。
木製の立派な階段だ。
階段を上っていくと、すぐに3年生の教室が現れた。
そして音楽室に体育館らしき大きな教室も。
「特に変わったところはないな」
健がそう言った。
あたしたちが通っている椿山高校に比べれば教室の数は随分と少ないが、昔は専攻科も少なかったようなので、不思議ではなかった。
5人全員で広間へと戻ってきた時、タイミングよく夜中の2時を知らせる時計の音が響き渡った。
心まで響いてくるその音に耳を塞いでキツク目を閉じる。
今日も始まる……。
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