第13話
それから渚はあたしの家に来ていた。
1人でいるのも嫌だし、少しでも今夜どうするかを考えておきたかった。
「近藤先輩の話って、全部本当だよね……?」
テーブルに向かい合って座っていた渚がそう聞いて来た。
「たぶん、そうだと思う」
あたしは頷く。
あたしたちを驚かせるだけであそこまで細かな話をつくるとは思えないし、現に旧校舎についてはこの目で見ているのだ。
「経験者は海外か……」
渚はため息交じりにそう言った。
「経験した先輩が日本に入ればもっと協力してもらえたかもしれないよね」
「そうだね。だけどその場合はたぶん、もう……」
そこまで言い、渚は口を閉じた。
渚が言おうとしていたことの意味はだいたいわかった。
日本にいた場合はすでに消されているだろう。
「幽霊の力は海外までは届かないってことだね」
渚はそう言い、外を見つめた。
「まさか、海外に逃げようとしてる?」
そう聞くと、渚は「う~ん」と、首を傾げた。
「でも、いざとなればそうするしかないよね。これ以上人数を減らさないようにするとすれば、全員で海外に行ったほうがいい」
一番安全な解決策であり、一番現実離れしていることでもあった。
全員で一気に海外へ逃げるなんて、無理な話だ。
「なにをどう考えてみても、旧校舎へ行くしか方法はないだよね……」
あたしはそう呟いたのだった。
☆☆☆
それから少し仮眠をしたあたしと渚は夜中の1時になった頃出かける準備を始めていた。
「ライトはまた消えるかもしれないね」
渚が鞄にライトを入れながらそう言った。
「そうだね。でも、彼らが出てきている間周囲は明るいから、探し物に支障はないはずだよ」
「そっか。そういえば、それもおかしいよね」
ふと準備をする手を止めて渚が言った。
「おかしい?」
「うん。なんであの幽霊たちが出て来た時だけ周りが明るくなったんだろ?」
そう言われると、返事はできなかった。
幽霊なら暗い場所に現れて脅かした方が効果的な気もする。
「なんでだろうね……?」
「今日はもっと慎重に周りを観察した方がいいかもしれないよね」
「うん」
あたしは頷いた。
頷いたけれど……あの旧校舎で周りを観察することができるかどうかは、不安だったのだった。
☆☆☆
旧校舎へ行きたくなると、近藤先輩は言っていた。
準備を終わったあたしたちは時間が来るのを部屋の中で待っていたのだが、気持ちが先立っている事に気が付いていた。
「なんか、落ち着かないよね」
渚が苦笑いを浮かべてそう言った。
「だよね。今すぐにでも行動に出たい気分」
これから怖い場所へ行くと言う気持ちは変わっていない。
できたら行きたくないという気持ちも変わっていない。
なのになぜだか体がソワソワしてくる。
これが近藤先輩の言っていたことみたいだ。
「少し早いけど、行ってみない?」
ついに我慢の限界が来たようで渚がそう言って、立ち上がった。
「そうだね、行こう
1時10分を回ったところで、あたしたちは家を出たのだった。
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