第4話

オカルト部の1年生は女子3人、男子3人の6人だった。



あたし、栞、渚、健。



そして池田陽(イケダ ヒナタ)。



的場海(マトバ カイ)。



6人とも心霊が大好きだけれど、一度も幽霊を見たことがないメンバーだった。



だけど、今年の夏は本当に幽霊に会う事ができるかもしれない。



そう思うと、浮き足立っていた。



近藤先輩の話をメールや電話で伝えると、全員がその話に興味を持ち、さっそくきもだめしに行くことになっていた。



「なんだかピクニックに行くみたいだねぇ」



栞がおにぎりを作りながら楽しそうにそう言った。



きもだめし当日の昼過ぎ。



あたしたち女子3人はあたしの家に集まってお弁当を作っていた。



きもだめしと言えば夜中の2時。



という安易な発想で、全員で集まるのは夜中の1時頃ということになったのだ。



晩ご飯を食べて来てもその時間にはきっとお腹が空いてしまうと思い、こうして女子だけで集まってお弁当を作ることになったのだ。


「健はトマトが苦手だから入れないようにしないと」



あたしがそう言うと「え、でも陽はトマトが好きだよ?」と、栞。



渚はさっきから黙々と海の好きなおかずを作っている。



う~ん、それぞれに作っているからまとまりのないお弁当になりそうだ。



「オカルト部に入らない方がよかったかなぁ」



不意に、渚が料理の手を止めてそう呟いた。



「え、なんで?」



栞が驚いて目を丸くしてそう聞いた。



「だってさ、オカルト部って可愛くないじゃん」



渚の言葉にあたしは瞬きを繰り返した。



オカルト部に可愛げがあるかないかで言えば確かにないと言えるけれど……。



「海に可愛いって思われたいんだ?」



栞が渚のわき腹をつついてそう言った。



渚はわかりやすく頬を赤く染める。



「なんだそんなこと? だったらきもだめしなんてチャンスじゃん!」



あたしはそう言い、渚の背中を叩いた。



「きもだめしで怯えるふりをして一気に距離を縮めるんだよね!?」



あたしの言葉に栞が乗って来る。



「そうそう! 悲鳴を上げる渚を可愛いやつって思ったりして」



「きゃぁ~! ひとなつの思い出ができちゃったりして!?」



盛り上がるあたしと栞に反してどんどん口数が少なくなっていく渚。



「でもさぁ、あたしたちオカルト部だよ? 最初から幽霊大好きって言ってるんだよ? そんな子がいきなりキャァキャァ言うのって、変じゃない?」



そう言われ、あたしと栞は黙り込んでしまった。



そうだった。



あたしたちは日ごろから怖い物を愛し、怖い物を見たくて活動をしているんだった。



きもだめしくらい、やって当然のイベントだ。



「ま、いいじゃん。細かいことは」



栞が料理を再開してそう言った。



「そ、そうだね。当初の目的は幽霊を見る事なんだし」



あたしはそう言い、おにぎりをお弁当箱に詰める。



ただ1人、渚だけは納得のいかない表情を浮かべてため息をついたのだった。

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