第6話
それを遮るようにサトルが手を上げ、ゆっくりと首を横に振った。
その姿を見たマナミは動きを止め、ただ立ち尽くす。
サトルの手が上がり、人差し指を立てて口の前に持って来て、マナミに静かに、という合図を送る。
すると、蜘蛛の口から女の声が聞こえる。
どうやら、サエの声のようだ。
「……や ……坊や ……私の、私の坊や……」
サトルは目を閉じて集中しているようで、微動だにしない。
しばらくすると、サトルの目が開かれる。
その瞳の色は深い水のように青く輝いている。
「お前か、僕を殺したのは……」
サトルがそう呟くと蜘蛛の顔が苦しむように歪んだ。
マナミには意味が解らない。
「えっ? 殺したのってどういうこと? サトル!」
「ん~ちょっと待ってね。もう少しなんだよね」
サトルがそういう間も蜘蛛の顔はさらに歪み、サトルに向かって何かを話そうとするが言葉にならない。
―――その時
突然洞窟の入口付近から叫び声が聞こえる。
「汝の身は我が下に、汝が命運は我が手に。聖杯の寄るべに従い、この意この理に従え!」
「ちっ! もう少しだったのに」
サトルが舌打ちする。
叫び声を聞いた蜘蛛は、先ほどまで何かを話そうとしていたが苦しみ始める。
「マナミ! 奴を拘束して!」
「わ、わかった!」
マナミはすぐに立ち上がり、刀を抜くと洞窟の入り口に向かって走り出す。
そして、出口付近にいる人影を見つけた。
それは、先ほどの蛇目のトオルだった。
「あんの蛇目!!」
マナミが近づくとトオルがハッとした表情になり、何かを言おうとするが、それよりも早くマナミが斬りかかる。
ガキン!
トオルはその攻撃を剣で受け止めると、そのまま押し返す。
今度はトオルの番で、マナミに向かって突きを放つ。
マナミはそれをかわすが、少し体勢を崩してしまう。
そこに、さらに追撃をしかけてきた。マナミはそれを避けるが、反撃ができない。それどころか、どんどん押され気味になってくる。
マナミはこのままではマズイと思い一旦後ろに下がり距離をとるとトオルも同じように下がり構え直す。
(強い!)
マナミは心の中で舌打ちをする。
トオルもかなりの使い手のようだ。
だが、ここで負けるわけにはいかない。
マナミが気合を入れ直し一気に踏み込んで行くと、トオルもそれに合わせるようにして前に出る。
お互いの間合いに入った時、ほぼ同時に仕掛けた。
トオルが先に上段から振り下ろす。それをマナミは下から跳ね上げると、すぐに左から右へと横薙ぎに払う。
が、その攻撃を読んでいたのか、すでにそこにはおらず、後ろへ回り込んでいた。
そこで一瞬の隙ができてしまった。
その瞬間を狙い、トオルの攻撃が襲ってくる。
マナミは避けようとするが間に合わず、攻撃を受けてしまい体が吹き飛ばされるが、なんとか地面に足をつき踏ん張った。
そこへすかさずトオルが攻撃を仕掛けてくる。
マナミは何とかして防ぐが、さっきよりも明らかに威力が増していて、必死で堪えているが、ジリジリと後退させられていく。
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