第5話
暗闇から黒いモヤがあふれ出し集まり始めるとその中の赤い目が光り、それを中心にさらに黒いモヤが集まってくる。
「あー。これはヤバい」
「ヤバいに決まってんでしょうが! 早く動け! サトル!!」
冷静に言うサトルにマナミが怒りをぶつける。
「サエさん、取り込まれちゃったよ。どうする?」
サトルがサエの方を見ると彼女はすでにそこにはいなかった。
代わりに現れたのは体長二メートル近くある巨大な蜘蛛だった。
目は真っ赤に輝き、胴体部分には人間の女性の顔が模様のようにいくつもついていて、そこから伸びる八本の脚は太く長い。
それがゆっくりとこちらに向かって歩き始めた。
サトルはマナミを抱えて走り出す。
「蜘蛛かぁ、まあそうなるよなあ」
「何ブツブツ言ってんのよ。もう! 降ろしなさいよ! てかあんたどこ触ってんのよ!」
マナミが必死で話すがサトルは全く気づかないようでやはりブツブツ言いながら何かを考えている。
しばらく走っていると急に立ち止まり振り返ると、蜘蛛の背中にある大きな羽が開き、宙に浮かぶ。
ズンッ!!
次の瞬間、サトルたちがいた場所に大きな穴が開く。
間一髪避けたが、その威力を見て冷や汗を流す。
蜘蛛は空中で静止すると、体を丸めてコマのように回転し始め、次第に足を大きく広げるとサトルたちに向けて突っ込んでくる。
二人は左右に散開し避けると、そのまま地面を転がるようにして移動し、すぐに起き上がると再び走り出した。
蜘蛛は先ほどと同じようにまたもや突進してくる。
今度も回避したが、蜘蛛は方向を変えて追いかけてくる。
必死で逃げるが徐々に距離が縮まり追いつかれそうになる。
その時、突然、蜘蛛の体から女の悲鳴が聞こえ、蜘蛛が苦しみはじめ動きが鈍る。
その隙に二人は洞窟内の岩場に飛び込むと、身を潜める。
「ねえ……あいつ苦しんでるみたいだけど」
マナミの言葉を聞き、サトルは岩場の隙間から見ると確かに苦しそうに震えている姿が見えていた。
「ねえサトル、どういうつもりなのよ。あいつ、倒していいの?」
「うーん、そうだねえ。マナミ、あれ、あの蜘蛛ね」
「うん」
「サエさん」
「ん?」
「サエさん」
「何が?」
「蜘蛛が?」
「なんで疑問形なの? 疑問形を疑問形で返さないでよ」
「どうするかなあ?」
「いや、だからなんで疑問形なのよ、倒すよ!」
そんな会話をしていると、目の前の壁が崩れて黒い影が現れゆっくりと立ち上がり、壁の破片を踏みつぶしながら歩いてきた。
蜘蛛は黒く染まって顔に無数の目があり、腹からは人間の腕が何本も生えていたのだ。
あまりのおぞましさにマナミは刀に手をかけ叫ぶ。
「こいつ…… やっぱり倒―――す!!」
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