第2話

「ってかバカなの? なんでいきなり突っ込むのよ!」


「仕方ないだろ? あんなのが出てくるとは思わないじゃないか!」


 二人は言い合いながらお互いの状況を確認しあう。


 サトルは油断して六つ目に吹き飛ばされ意識を失っていたらしい。


 マナミの方は六つ目の攻撃をまともに受けていたように見えたが、特に怪我もなくピンピンしている。


 ちなみに六つ目の正体だが、先ほどまで六つ目がいた場所を見ると備後守氏房の脇差を想わせる鋏の片刃が落ちている。


「これね」

 そう言ってマナミが拾い上げる。


「ちゃんとイレイスできてるか?」


「ええ。でもこれ、なんで憑いちゃったのかなあ?」


「さあねえ、ま、俺たちにはそんなこと関係ない。これを持ち帰ればいいだけだよ」


「うん、まあそうだけどさ」


「マナミ、お前は入れ込みすぎるんだよ。こないだもそれで時間食って結局間に合わなかっただろ?」


「ごめん。でもサトルもいけないんだよ、いつも一人で先に行っちゃうから」


「あのなあ……」


「じゃあさ、今度は二人で一緒に行こう。そうすれば問題ないでしょ?」


「いや、もういいわ。あのな、もっかい言うよ。俺たちイレイサーはね、防衛省にある国家情報保安局からの依頼に応えればいいだけなの、わかる?」


「うん。だけどね、モノにもやっぱり心というかなんというかね、持っていた人の意志や想いがね……」


「そんなの知らないよ。ま、この仕事、人に言っても信じてもらえないし、身分も偽らないとだし色々大変だけど。今の日本でこんなことやってるって言っても誰も信じないよな」


「それはいいのよ、人知れず物に憑りついている「モノ」を消すのが私たちの仕事だもん」


「まあな、ない「モノ」にするってのは大前提だけどな」


「ええ。だけど今回のこれ、鋏の片方の刃よ? こんなものがなんで?」


「いいんだよ、どうだって。とっとと防衛省のお偉いご婦人に連絡しろって」


 そう言うとサトルはマナミから受け取った刀身部分を指でなぞりながら刀身を透かして見ている。


 その様子を見てマナミは大きくため息をつくと、携帯を取り出して防衛省の連絡員アヤカに依頼達成の報告を終える。


「あー、疲れた。明日も仕事かあ」


「ええ、明日もピザの配達ね」


「ほんとなあ。まあ全国展開してるピザ屋だからこそ国内どこに行ってもこの格好で怪しまれないんだけどな」


「でもイレイスがないときはしっかりシフト組まれてるよね」


「ほんとな、どうかと思うわ。しかも今回のこれ。俺たち配達中だったじゃん? なんで緊急で呼ばれるんだよ。人使いが荒すぎるわ」


「あ、返信きた。アヤカさんからだ」


「なんて?」


「なにこれ、『おめでとう! これで君たちも立派なイレイサーだ! これからの活躍に期待している!』だって。もう何回もイレイスしてんのにさ、ムカツク。上から目線じゃない? 私たちのことまだ高校生くらいと思ってるんじゃないかしら。サトル、あんたのせいよ」

とマナミはサトルをジト目で見ながら聞く。


 サトルは実年齢より十歳ほど下に見られることが多く、マナミはマナミで幼く見られがちだ。確かにサトルは童顔なのだが、マナミはそのことが気になるらしくよくサトルに文句を言う。


 二人とも二十歳をとっくに越えているというのに。

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