イレイサー:File03_樹島の奇病(oriental version):現代日本の憑き者落としイレイサーは全国各地で起こる不可思議事件を解決します。
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第1話
「サトル! 無事っ?!」
マナミは刀の切先を黒いモヤに向け、身構えながら尋ねるが返答はない。
辺りはすでに真っ黒な空間に赤い蜘蛛の巣のような光が走る世界に変わっている。
良くない兆候だ。
マナミが睨みつけている先にある黒いモヤが人のような形に集まっていく。
「あんのバカッ!」
悔しそうにそう呟くと刀を握りなおす。
黒いモヤから赤く光る目が左右に三つずつ縦に並び、人型のモヤが音をたてながら大きく膨らんでいく。
ギ、ギギ……
ギギ、ギギギギ
身長はおよそ二メートル、足軽武者姿で、顔には六つ目の仮面を付けているように見え、両手で禍々しいオーラを放つハサミの片刃ような大刀を持っている。
六目の化物がマナミを視認すると同時にマナミに向けてゆっくりと歩きだし、ハサミ片刃を大きく振り付ける。
「クッ! やるしかないのっ! ねっ!」
とハサミの攻撃を刀で受け流しながら
ハッ!
と一声、気合を入れる。
六つ目の太刀を捌きながらサトルが吹き飛ばされた方を見ると、部屋の隅がガラガラと音を立てて瓦礫を払いながらサトルが立ち上がる姿が見える。
「サトル! 無事? 行ける?!」
頭を振っているサトルはその言葉を聞くと
「ほんとね、どうかと思うよ。オレたちこうだったか?」
と言いながら六つ目に吹き飛ばされてできた瓦礫の山からサトルの武器である魔銃を拾い上げる。
「マナミ〜、いつでも〜」
「オッケー。とっとと倒しちゃいましょう、でなきゃまた…… っと!」
六つ目の攻撃を受け流すとサトルの方に走り込む。
サトルは銃口をマナミに向け引き金を引く。
その瞬間、マナミの刀全体が青く光り輝き、刀本来の力が溢れ出してくる。
「んじゃあ行くよ、 っと!」
そう言うと刀を振り下ろす。
すると青い光の線が走り振り下ろした軌道に氷の柱が現れる。
ハッ!
マナミが気合を入れると六つ目の足元の氷柱が粉々になり六つ目の足元に張り付いていく。
六つ目はそのまま凍った床に足を取られ動きが鈍る。
そこにすかさずサトルが銃口を向け魔力弾が放たれると、氷の礫となり六つ目の足元から上に凍結させていく。
それを見たマナミは一気に間合いを詰め
ザンッ!
ザシュッ!
と二つ切りつけると、今度は下から上に切り上げながら後ろに下がる。
二人が一斉攻撃を続け、マナミが一気に数十回切りつけると、ついに六つ目の動きが止まる。
マナミは六つの目を見据えながら、ふぅーと息を吐いて呼吸を整える。
サトルも同じように六つ目を睨むと持っている銃で印を結ぶ。
それを見てマナミは再び刀を構え
フゥン!
と勢いよく上段から袈裟斬りにする。
サトルもそれに合わせるように銃弾を撃ち込み、二人同時に飛び退る。
六つ目の切口から赤い光が広がると黒いモヤが拡散していき、足軽姿がモヤと共に消え去っていき、その姿が完全に消えると同時に世界が元に戻る。
サトルとマナミはお互いを見て笑みを浮かべる。
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