第4話 桜の樹の下に
「理想の死に方、ですか? あ、寿命がいつぐらいとか、時期とかそういうのでも良いんすね。もしくは死後どうなりたいか、スか。んー..................そうっすねぇ。あ、俺、結構小説読むんすけど、『桜の木の下には』ってわかります? お! ちゃんと知ってた。よかった。んで、あれって、死体が埋まってるから桜が異常に綺麗に咲くっていう、俺的には結構ゾクゾクするんすけど......あ、この手の話苦手だったらやめますよ。大丈夫ですか? ......大丈夫だから続けてくれ? あざっす。んで、アレ、なんでかっていうのを考えたんすけど......え? そういうのはリアルに考えずにいた方が? いやいや、ただの考察っすから。ていうか、特別珍しい意見でも無いと思うし、気軽に聞いてくださいよ。ネクロバイオームって耳にしたことあります? ......聞いたことない? んじゃ、軽く説明だけします。ネクロバイオームは人間が生きている時から体の中にいる細菌のことなんすけど、それって人間が死んだ時に異常に繁殖するらしいんすよ。んで、まあ死体って当然のことながら腐るわけで、肉は虫に喰われるわ液体が流れ出て悪臭がするわで悲惨な状態に......まぁ、なんとなく想像してもらえたらで良いっす。それで、ネクロバイオームは身体の腐敗が始まったその時から増殖して、地中の微生物達と混ざり合う......え? なんでそんなこと知ってるかって? 課題で調べてて......ちょっと。なんすかその目は。俺が今まで喋ったやつは、そういうのを研究している海外の大学の論文にあったことなんで。まぁ、大体で聞いててください。んで、話を戻しますけど。まぁつまりそういうことなんじゃないか?
と思ってて。で、あなたの質問の答えとしては、俺が死んだ後、俺の全細胞が何かの生物の養分であってほしいんすよ。ほら、生き物は皆等しく土に還るって言うでしょ。まあでも、この研究は行方不明の遺体を発見するためのものなんで、参考程度で忘れてください。......大胆な思考ですね? いや、大胆って言うか、自分で肉食動物とかに襲われに行くだけの勇気とかがあるわけじゃ無いんで。そもそも、人間って美味しくないらしいし。サメ映画のサメって、めちゃくちゃ人間喰いますけど、別に人間が好きな訳じゃないらしいすよ、アレ。......人間って、食物連鎖の上にいて、死んだ後も何にも身体が使われないんじゃ、ちょっとずるいかなって思うんです。まぁでも、小説を初めて読んだ時、ただ単純に良いなぁって思ったんすよね。なんでって、それはちょっと......所謂一目惚れってやつなんで、説明はできないすけど。え? 日本は火葬が99%? そう! そうなんすよ。だから、まぁ、海外に飛ー............あーでも、桜が自生してるところが良いなぁ。あ、でもいやそもそも、棺桶に入ってたら微生物と混ざり合うとかできるんすか? ......あ、はい。あなたに聞いても仕方ないっすよね。はい、自分で考えます......。あ、時間ですか? じゃあ、俺の回答は、『桜の樹の下に埋められたい』で、お願いします! じゃ、ありがとうございました!」
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