第2話 できれば一緒の棺で

「理想の死に方、ですか? あ、死後どう成りたいかでもいい? わかった。そうだな......。一人で死にたくはない、と思う。でも、難しいだろうな、とも思う。だって、人間って、どこまで行っても他人同士なんだよ。血のつながりとかはまぁ、置いといて、好きな人ができて、運良く結婚できて、子どもを授かることが出来たってなった時、子どもには自分の血が入るけど、結局自分の好きな人には入ってないわけじゃん。セックスしたって、それで相手が自分のものになるとは到底思えない。それって、なんか虚しくないか? 別に、愛情に必ずしも性欲が付き纏うとは限らないと思うけど。愛してるなら証明して、みたいなセリフとかよく聞くだろ。どこでって......漫画とか、ドラマとか......。あんた、あんまりそういうの興味ない感じなの? いや、恋人できたことないとか、そっちの話じゃなくて。漫画とかドラマとか。少女まんがとか読んだこと無い? あるんじゃん。待って話が逸れた。なんだっけ......ああそう、愛情の証明。キスをたくさんするとか、連絡をこまめにするとか、相手を大事にするとか。でもそれって、友達相手にも成り立つことじゃん。いや、キスはしないけど。そういう、損得じゃなくて無償の愛で接する心っていうの? そういうのって、恋愛だけで育つものではないじゃん。でもとにかく、親友とか恋人とか、そういう関係になっても明日っていうのはそれぞれにやってくるもので、それを友達だからって、恋人だからって、侵害するわけにはいかないだろ。相手が大事だから、相手の明日を奪うことはしたくない。......信頼が無いわけじゃない。相談はする。相手をいい奴だとも思う。ああでも、相手がそうやって気遣って潰れて、気づいたら遠くに行ってしまったとか、そういうのは嫌だな。そう考えると、この考えは良くないかも。すまん。結局話が逸れたな。要約ができなくて悪い。......そうだな。もしも恋人が......いや、恋人じゃなくても友達とかできて、そいつを失うくらいなら、そいつと一緒に死にたい。連れてってほしい。え? 棺は一人しか入れない? あんたさぁ、そういうこと言わないでよ。まぁ、それはそうなんだけど。だから......二人で死ねる棺桶とかあったらいいな、と思う。合法的心中。運よく一緒に死ねることなんてことそうそう無いから。こういうの、マッチングアプリとかで『一緒の棺に入ることを前提にお付き合いしてください』って書くの? え? そこは墓じゃないかって? いや、それだと時間差心中でも良いことにならない? 死後も一緒にいられる? ああなるほどね。うーん、でも、そこまで縛らなくても良いかな。ほら、友達や恋人以外にも大事なやつはいるだろ。あ、でも、もし地球が終わったら、それってもう地球規模の同時多発心中になるね。それはそれで良いかも。俺以外にも、俺みたいな考え方の人が居たら、みんな寂しくないよね。あ、時間になった? じゃあ、俺の答えは『できれば一緒の棺で死ぬ』でお願いします。じゃ、ありがとうございました」

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