シェルター

鯉川夏代

第1話 星に成りたい

「理想の死に方ですか? うーんそうですねぇ、とりあえず、溺死は御免ですね。苦しみが続くのは嫌なので。......え? 自殺とはまた話が別? ああ、そうなの、ごめんなさい。じゃあ、そうですね。宇宙葬とかロマンチックで良くないですか? いや、話飛ばしちゃって申し訳ないですけど、どうしてもこれがいい! ていう、死に方はないですね。さっきも言った通り、溺死とかは嫌ですけど。老衰、とか。それで......そうそう、宇宙葬。聞いたことないですか? 火葬後の灰を、ロケットで打ち上げるんです。それで、星に成る。ほら、よく天国に昇るとか、人は死んだら星に成るとか言うじゃないですか。そう言うお伽噺みたいなのが現実になるって、ちょっとワクワクしません? 迷信じゃないんだよ〜って。ほら、幼い頃に聞かせられた話が嘘だった時って、やっぱりちょっとショックだったこと、ありませんか? ......ですよね! だから......綺麗な星になれるんだったら、なりたいなぁって思って。まぁ、馬鹿ほどお金かかるんですけど。まぁ、普通に考えて、そりゃそうですよね。惑星探査機とか、まず機体を作るのにお金がどんだけかかってるんだって話だし。ちょっとうちの学費が可愛く見えますよ。......うーん、いや、高いですけど、うん、あなたの言う通り、まぁ可愛げは無いですね。あー、この話やめましょ、しんどくなるので......。そうだ、星に成るって話に戻りますけど、私達って太陽見るのが難しいじゃないですか。特殊なカメラで撮影したとか、映画とかドキュメンタリーのCGとかでなんとなくどんな星なのか知ってるくらいで。だから、もし私が星に成れたら、太陽を見てみたいですね。その時の私に自我があるのかどうかは置いといて......だって、これってもしもの話でしょう? もしも私が星に成れるなら、太陽が見てみたいです。とは言いつつ、他の惑星も見てみたいですねぇ。だって私が生きている間に宇宙旅行とか無理ですし。いやまぁ......宇宙葬できるだけのお金があるのかも問題ですけど......。え? 自分で稼ぐ以外に? えー、それ、もう地球が終わる時じゃないですか? 地球が爆発したら、私達間違いなく星に成れますよ。でも多分、私が死ぬまでに地球終わりそうに無いので。......え? 宇宙飛行士と結婚? ハードル高い! マッチングアプリの自己紹介欄に『私を星にしてください』って? いや、やばいやつでしょ。いや、今までまぁまぁやばいこと言ってた自覚はありますけど......。結婚を前提にっていうか、私より後に死んで私を宇宙に連れて行くことを前提にお付き合いしてください! やばいですよ。......確かに第一印象で覚えてもらえるかもしれないですけど! え? 冗談? 至極真面目に想像しちゃった......。まぁいっか。あれ、そろそろ時間ですか? じゃあ......まぁ私の回答は『星に成りたい』でお願いします。言うだけタダですもんね。でも、やっぱり夢がありますよ。星になれたら、銀河鉄道も見れるのかもしれないし。ね、いいでしょう? ふふ、じゃあ、ありがとうございました」

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