第11話 筋肉、それは何処に行く?
肉体美を見せる店長に対して、タローはニヤリと嗤う。
「この店、脱ぎだす、裸を見せたい。値切りに殺意。俺たち驚異。見せるは胸囲。筋肉、自慢か? 違うぞ勝負は、そこじゃない。値段だ♪」
「おうおう、タロー。ノリノリじゃねーか」
そう言いながら店主はマッスルポーズ。威圧すると言うより筋肉を見せつけたいだけかも。一通りポーズを決めたあとで、カウンターを揺らすほど叩く。
「おうおう、タロー、
「あるのは定価、切るのは啖呵、気が短い店主が好きなのは喧嘩。けど、そんなのどうでもいい。俺たち値切らにゃ生きれん貧乏冒険家♪」
タローはリズムに乗せながら手を出す。すると、店主も怒りもしないで、さっと杖の価格表をタローに渡してくれる。
杖(特に規定しない場合、弾数5の場合の価格):
衝撃の杖 $50,000
魔法の矢の杖 $70,000
炎撃の杖 $100,000
氷撃の杖 $11,000
雷撃の杖 $120,000
死霊の杖 $150,000
睡眠の杖 $50,000
減速の杖 $50,000
加速の杖 $50,000
穴掘りの杖 $50,000
変化の杖 $500,000
魔物造成の杖 $10,000
灯りの杖 $20,000
透明化の杖 $100,000
探索の杖 $30,000
鑑定の杖 $40,000
解錠の杖 $40,000
施錠の杖 $40,000
瞬間移動の杖 $100,000
単なる杖 $0
願いの杖 応談
使用通貨は王国硬貨とし、他国通貨等を使用時は相談による。
「衝撃の杖、銀貨5枚、なのね。私が、衝撃の魔法、使う時、それくらいの価値」
覗き込んでいたロジーネがポツリと言う。
「いやいや、弾数が5発でだから、1回なら銀貨1枚だよ」
「安宿なら、泊まれそう。マスター、今、ここで、衝撃の魔法つかうから、買い取って」
ロジーネが言うと、店主は苦笑いをする。
「いや~タローに向かって撃ってくれるなら、銅貨3枚払ってもいいぜ」
「3分の1以下に値切られた……」
「こちとら商売人だからな。金には口煩いぜ。ちなみに、薬の価格表もあるけど、そっちも見るかい?」
「折角だから、頼むぜ」
薬(特に規定しない場合、呪祝無しとする):
レベルアップの薬 $500,000
知性の薬 $300,000
知恵の薬 $300,000
魔力の薬 $200,000
能力獲得の薬 $200,000
能力回復の薬 $30,000
回復の薬 $5,000
超回復の薬 $10,000
混乱の薬 $2,000
盲目の薬 $1,000
麻痺の薬 $5,000
幻覚の薬 $5,000
加速の薬 $10,000
減速の薬 $10,000
浮遊の薬 $10,000
透明化の薬 $10,000
可視化の薬 $10,000
魔物を探す薬 $10,000
アイテムを探す薬 $10,000
ウイスキー $20,000
ジュース $500
水 プライスレス
使用通貨は王国硬貨とし、他国通貨等を使用時は相談による。
「レベルアップの薬なんか売ってるのか?」
タローが目を大きくして訊く。すると、店主はマッスルポーズを解いて、少しだけ項垂れる。
「ない」
「でも、価格表にはあるじゃないか」
「ないな」
「安すぎるんじゃないか? 金貨25枚だろ。若しくは銀貨500枚かもしれないけど。で、売値がそれだから、買値は半額以下だろどうせ」
「レベルアップの薬なんて、普通の冒険者は使っちまうからな。若しくは領主とかにもっと高い値で売りつけるか。俺も、入手できたとしても店にはださねぇだろうな。若しくは、飾りとして置いておくかか。どちらにせよ、そんなレアアイテムは出てきてから考えるさ。で、後は、食料の価格表だが……」
「食料の価格表まであるのか。でも、それはいいかな。保存食の値段は1日、3食分で銅貨4枚だろ」
「だろ。だったら、計算が合わないだろータロー。5日の食料なら1人で銀貨2枚。3人分なら6枚。お前、銀貨4枚値切ろうとしてるんだぞ。流石にそれは値切りすぎだろ」
店主は、カウンターから身を乗り出してタローに顔を近づけてくる。今にもタローの首根っこを掴もうかという勢いに、オーガスタが口を出す。
「マスター、それほどまでにお金が重要ですか?」
「おうよ。重要だ」
「では、私が、と言うより父に買い取っていただきましょうか?」
「ほう。ありがたい。では、銀貨4枚は商会の方に請求すれば……」
「違います」
オーガスタは店主の言葉を途中で打ち消す。キョトンと間抜けな顔をしている店主を無視して、そのまま話を進める。
「このお店を買い取らせていただきます。金貨500枚くらいで大丈夫ですか?」
「待ってくれ聖女様。流石に、それは」
「では、金貨1000枚で良いですね。田舎で悠々自適で暮らしてください」
「そりゃないぜ聖女様。俺には田舎なんてねぇ。生まれも育ちもこの街だ」
「残念です。購入できないのであれば、商会に冒険者用の店を経営してもらいましょう。確か、ここの近くに……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。店を買い取ってもらうのも困るが、それはもっと困る」
「どうしてですか? お店を売るのは断られたじゃないですか。それとも売りたくなりましたか?」
「違うんだ。そうじゃないんだよ聖女様。商売も大事だが、俺はこの店を利益のためだけにやってるわけじゃないんだよ」
店主は筋肉を見せつけていたさっきまでとは打って変わってしおらしい態度になる。
「父は商会は儲かるからと言う理由で、王族や大貴族を中心とした商売、若しくは大量に出るコンシューマを中心とした
ニッチな冒険者相手の商売も知っておくべきでは? などと僭越ながら考えてみましたので、話してみたいと思います。えーと、確か
「や、止めてくれ~聖女様。頼むよ。俺はダンジョンから戻ってきた冒険者たちから土産話を聞いたり、アイテムの値切り値切られ合いをしながら、冒険者とかかわり合いを持ちながら和気あいあいと商売をしたいんだよ。それが、冒険者やってるころからの夢だったんだ。この商売が生きがいなんだよ~」
店主は項垂れながら、大きくため息をつく。そして、諦め顔で言う。
「わかったよ。持ってけドロボー。その代わりに生きて帰ってこなきゃ許さないからな」
「ありがとうマスター。優しいですわね」
オーガスタは店主に近寄り、ヒゲをナデナデ。そして、耳元に口を近づけてもう一度、お礼を言う。
「ありがとうございます。他にもおまけ、あります?」
「はいはい。これ以上は、駄目」
ロジーネが、もう店ごとあげちゃう。と言い出しかねない店主からオーガスタを引き離す。
これ以上、オーガスタが余計なことをする前に、と、タローとロジーネは荷物をまとめると、オーガスタを引っ張りながらそそくさと店を出た。
「タロー様、もしかして嫉妬なさいましたか?」
オーガスタがタローに肩を寄せながら訊いてくる。
「俺が店員さんに同じようにしてたら、オーガスタはどうする?」
「ぶちのめさせていただきます」
「……」
タローはよっこらしょっ。っと、荷物を担ぎ直す。
「そう言えば、昼飯まだだよね」
空を見上げると太陽はまだ真上にまで到達はしていない。だが、タローは空腹を感じていた。宿で朝食を食べていたとは言え軽いものだったし、何より大した買い物でもなかったのにスタミナを消耗したのだ。
「これからの、相談が、必要」
ロジーネの落ち着いた声が、妙にしっくりときた。三人は視線を動かして、意見一致を確認する。そして、逃げようとしたタローはオーガスタに引っ張られるようにレストランの中に連れられていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます