本当の恐怖 中編
別の男は日本刀と携帯電話を持って助けを求める為に誰かに電話を掛けた。
プルルルル……プルルルル……。
携帯電話はコールしているが、真夜中が祟ったのか一向に繋がらなかった。
「くそっ!なんで出ねぇんだよぉぉっ!!」
携帯電話に悪態を付けていると、目の前に女子高生が男に向かってコツコツと音を立てながら近付いて来ていた。
「なっ、なんだてめぇわぁっ!!俺の仲間を殺したのはてめぇか!?」
男は怒鳴り散らしながら女子高生に日本刀を突き付ける。だが、女子高生は眉一つ動かさず向かって来る。
「この野郎っ!仲間の仇だっ!死にやがれぇっ!!」
頭に血が上っている男は一心不乱に日本刀を振り回し、女子高生の胴体を切り落とした。
「へへへっ、ざまぁみろ! 今のうちに助けを……」
男はその場を立ち去りながら携帯電話を操作して再び誰かに電話を掛け始める。しばらくコール音が鳴ると、
《もしもし……?どうした?》
「もしもし!俺だ、今すぐ○○倉庫に来てくれ!仲間が大勢殺られたんだ!応援を寄越してくれっ!!」
《もし……ザザッ……何?……電波……ザザッ……悪いぞ?》
「だから!○○倉庫に来てくれって!!」
《ザザッ……ブツッ……ツーツー》
無情にも電話は切れてしまった。
「くそっ!なんなんだよっ!今日に限って!!」
男は携帯電話を操作していると、斬り殺された女子高生の上半身だけが起き上がった。女子高生は腕を使って這う様に動くと、異変に気付いた男は携帯電話を耳に当てながら振り返る。そこには物凄い素早さでこちらに向かってくる女子高生が目に入った。
「このぉっ!バケモンがぁっ!!」
男は日本刀を片手で振り上げようとしたが、抵抗虚しく女子高生が一瞬で男の胴体を切り落した。吹き出す鮮血で倉庫の壁が赤く染まった。
別の男2人組はマフラーを巻いた女に追い掛けられて逃げ出しており、倉庫の外を走っていた。マフラーを巻いた女をようやく撒いたと思い、道路のど真ん中で肩で息をしながら立ち止まる。
「はぁ……はぁ……ここまで……来れば……なんだよあの女……」
「はぁ……はぁ……あの女ぜってぇ仲間を殺したやつ……だろ」
「かもなぁ……」
「早く乗り物探そうぜ……」
「ああ……この先にコンビニが……ある筈……」
2人組が再び走り出そうとしたその時。
ブォン!ブォン!
突如、マフラー音が響き渡ると黒い服に黒いヘルメットを被ったライダーが2人組の前に現れた。2人組は顔を見合わせる。
「だっ、誰だアレ……」
「わ、わかんねぇ……○○かも知れねぇな」
「バイク好きだからな。そうかもしれねぇ……おーい!助けてくれぇ!」
2人組は仲間と思ったのかライダーに近付く。ライダーはヘルメットを外すと……首が無かった。首が無いのに気付いた2人組は腰を抜かす。
「くっ、首がない……」
「もっもしかして……くっ首なしライダー!?」
「うっうわぁぁぁっ!」
「おっおいっ!置いて行くなぁっ!!」
2人組は逃げ出し、来た道を戻って行く。ライダーは背中から日本刀を抜来ながらバイクで追い掛け始めた。人間の足ではバイクのスピードに勝てずあっという間に追い付かれてしまう。ライダーは2人の首を同時に切り落とした。落とした直後にバイクはスピードを緩め止まった。それと同時にマフラーを巻いた女がやって来た。マフラーを巻いた女はヘラヘラと笑い出す。
「ひっひひひ……ささ先をここここ越されちゃった」
「わりわり、1人だけ狙ったんだけど勢い余って斬っちまった」
「べべべべ別にいいいいいよ。こ、これれれですすスッキリしたから」
マフラーを巻いた女は2人組の片方の生首を優しく抱きかかえる。首なしライダーはマフラーを巻いた女の謎の行動に首を傾げる。
「その首どうすんだよ?」
「ななななはなにって、ひひっこっコレクションにするだよひひひひ」
マフラーを巻いた女は男の首を優しく撫で回した。その瞬間、倉庫の方から銃声が聞えて来た。マフラーを巻いた女と首なしライダーは銃声の方に顔を向けた。
その銃声がした場所では、倉庫の中では上半身は巫女の様な姿で下半身は蛇の化け物を相手に拳銃を撃っている男がいた。
「うわぁぁぁっ!!来るな化け物ぉぉっ!!」
銃弾が効いていないか、ものともせずに化け物はにぃ~っと不気味な笑みを浮かべて尻尾で締め付けた。ぐしゃっと音が鳴り響く中、化け物は次の獲物を探しにその場を去って行った。静まり返ったその場の木箱の蓋がゆっくりと開くと別の男が現れた。
「なんなんだよあの化け物……早くここから逃げねぇと……」
男はゆっくり木箱から抜け出し、倉庫から出ようとしたその時。
「みぃ~つけた」
男の目の前に赤い服に長くサラサラの髪をした長身の女がアクロバティックに現れた。男が懐中電灯で照らすと、女の左腕には自傷痕のような切り傷があってその眼窩には眼球が無かった。
「なっ、なんだよコイツ……っ!?」
男は慌てて逃げ出すが、女に先回りされてしまった。
「逃がさないよぉ?」
「た……たすけ……」
女は男を押し倒し、片手で顔を抑えもう片方の手で男の目を抉り始める。
「ぎゃぁぁぁっ!!やっやめっで!だずげでおかぁぁぢゃぁぁん!おがぁぁぢゃぁぁんっ!!」
女は抉り出した眼球を口に含むが、直ぐにぺっと吐き出した。
「まっずい目玉ね……グミの方がマシだわ」
女はその場を立ち去った。同時刻、アジトの中でも悲惨な事が起こっていた。アジトの廊下で他の仲間が7人の女に四肢を引きちぎられているのを目の当たりにした男が逃げ惑っていた。男は階段を駆け降りようとした時、下には黒いドレスを来た花嫁がいた。
「こっ、こいつは……」
男が金属バットを構えると、花嫁の目からドス黒い涙が流れ始める。男は首を傾げながら、
「な、なんなんだよコイツ……」
男が怯えた途端。
「キャァァァァァァッ!!」
花嫁は男に向かって耳を塞ぎたくなる様な悲鳴を上げた。その悲鳴によってガラス窓は全て割れてしまう。身の危険を感じた男は来た道を戻って通りかかったトイレに入った。
「はぁ……はぁっ……ここまで来れば……」
男は安心したのか洋式トイレに座り込むと、ドアの向こうからはドンドンと叩きながら悲鳴が聞こえて来る。男が耳を塞いで縮こまると、音が止んだ。
「……行ったのか?」
男が顔を上げてドアに耳を当てるが何も聞こえなかった。
「はぁ……良かった……顔でも洗うか」
男は蛇口を捻って水を出し、顔を思いっきり洗った。びしょ濡れの顔で鏡を覗くと男の顔では無く、血まみれの金髪の女が見えた。
「えっ?」
男が唖然としていると、
「Fuck you!!」
「うわぁぁぁっ!!」
金髪の女はそう吐き捨てなかまら鏡の中から腕を伸ばして男の首を掴み、そのまま鏡に突っ込んだ。男の頭は鏡を突き抜け、ビクビクと痙攣しながら壁の中で息絶えた。
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