本当の恐怖 前編
監視カメラを確認していた男が異変に気付いた。
「……ん?おい、これ見てみろよ」
「なんだよ、どうしたんだ?」
モニターを見ていた男は近くにいた仲間に声を掛ける。仲間がモニターを覗いて見るとそこには、ずぶ濡れの女が写っていた。
「おいおい、女が写ってるじゃねぇかよ」
「どうする?連れて来るか?」
「へへっ、お楽しみってか?」
男達はニヤリと笑いながら懐中電灯を片手に部屋を後にし、モニター場所に向かった。
「確かこの辺だよな?」
「ああ、カメラがここだからこの辺に写ってる筈なんだよ。お前はむこうを探せ。おーい、隠れてないでで来いよ」
「抜け駆けさせねぇからな!」
男達はその場で別れて1人が辺りを探し始めると、物陰から女の顔が覗かせていた。
「なんだ、そこに居たのか?おい、こんな所で何をして……」
男が近付くと、女は姿を消していた。不思議な事に数センチの隙間しか無かった。
「え?ここに居たよな……おっかしぃな〜」
その場を離れようとしたその時。
ガシッ
数センチの隙間から腕が伸びて来て男の腕を掴んだ。
「えっ?」
その瞬間、ものすごい勢いで隙間に引き摺り込まれそうになった。男は慌てて引き離そうと暴れ始める。
「なっ、なんだこの……お、おいっ!助けてくれ!おいっ!」
助けを求めたが声は届かなかった。女の力は更に強まり、無理やり隙間に引き摺り込む。
「痛てぇ!痛てぇよぉぉぉ!」
男は叫ぶがお構い無しに引き摺り込み続ける。肩まで引っ張られるとミシミシと肩の骨が悲鳴を上げる。
「ぎゃぁぁぁっ!!」
べキッべキッと骨が折れる音が暗闇に鳴り響く。遂には頭がつっかえて隙間に引っ掛かってしまった。
「ぐええぇっ!ぐえぇっ!」
断末魔が響くと、女の手が男の頭をガシッと掴むとメキメキと音を立てながら首をへし折った。虚しく懐中電灯だけが地面に転がった。
「おーい、女は見つかったか?」
もう1人の男が仲間を探しに戻って来た。
「まさかもう見付けて抜け駆けしてるんじゃねぇよなぁ?」
嫌味を言いながら仲間を探す。そこで落ちていた懐中電灯を見付けた。
「これはアイツが持ってた懐中電灯……」
懐中電灯を拾い上げて地面を照らすと、血が流れていた。
「は……?」
血を辿ると、仲間が隙間にタコ詰め状態になっていた。
「うわぁぁぁっ!!」
男は慌ててアジトに戻り、部屋で寛いでいた大勢の仲間に声を掛けた。
「みんな来てくれっ!!○○が!○○が殺されたっ!!」
「なんだと!?どこだ!?」
「こっちだ!来てくれ!カチコミかも知れない!!【先生】にも連絡しろ!」
仲間達は金属バットや鉄パイプを手にして先程の場所に向かった。仲間達は死体を見て顔を青ざめる。
「な、なんだよこれ……」
「なんでこんな隙間に入ってんだ?一体どうやって……」
「分からねぇ……殺った奴がどこかに潜んでるかも知れねぇ。手分けして探すぞ!!お前らは向こうを探せ、俺達は向こうだ!」
男達はそれぞれ別れて犯人を探し始める。1人がコンテナが積み重なっている場所を探していた。
「あんな状態にするなんて一体どんな化け物だよ」
コツコツと足音を響かせていると、
ぽっぽっぽっ……。
ぽっぽっぽっと声が辺りに響き渡った。
「だ、誰だ!?○○か?ふざけんなよ!?」
男は仲間がふざけていると思い声を荒らげる。だが、仲間は現れ無かった。
ぽっぽっぽ……。
「ふざけんなよっ!そっちか?早く出てこいよっ!」
懐中電灯で照らすと、そこからは真っ白なワンピースを着た巨大な女が影から現れた。男は思わず腰を抜かす。
「なっ、なんだよこいつ……」
巨大な女はニコリと微笑みながら男の頭を両手で掴む。
「ぐぅっ!?はっ離せコノヤロウ!!」
男は鉄パイプで抵抗するが、巨大な女はお構い無しに掴み続ける。それどころか更にミシミシと力を込める。
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
そして。
バキバキッ!
男は頭から血を吹き出し、そのまま倒れた。近くで断末魔を聞きつけた他の男が駆けつける。
「なんだ!○○、どうした!?」
男が駆けつけると、巨大な女の姿は無く。頭を潰された男の死体だけが取り残されていた。
「し、死んでる……なんなんだよ、ここに何がいるってんだ!?」
男が怯えていると、
カタン。
物音が響いた。驚いた男は音の方向に懐中電灯を照らして見るとそこには日本人形が立っていた。
「なんだ人形か、脅かしやがって。ってかなんでここに……?誰かが拾って来たのか?」
男が日本人形に近付いて拾い上げようと手を伸ばしたその時。首に違和感を感じた。
「な、なんだこれ?髪の毛?」
上を見上げると天井にビッシリと髪の毛が蠢いていた。髪の毛は瞬く間に男の首に絡まり、首吊りをする様に引っ張られ始める。
「がっは……な、なんだ……!?」
男の首は髪の毛でギリギリと締め上げられる。男は咄嗟に日本人形に目を向けると、日本人形は怒りに満ちた顔をしていた。男が白目を向いて意識が無くなると、髪の毛と日本人形はすうっと消えてしまった。
他の場所を探していた他の男は、物置小屋を開けて懐中電灯を照らしていた。
「ここは問題無さそうだな。○○の方に行ってみるか」
物置小屋の扉を閉めて振り返ると、白いワイシャツに赤い吊りスカート、おかっぱ頭の女の子が立っていた。男は思わず声を上げる。
「うおっ!?びっくりしたぁ……おい嬢ちゃん。こんな真夜中に何してんだ?どっから来たんだ?」
男はおかっぱ頭の女の子に声をかけるが無表情だった。
「おい、なんもしねぇから……こっち来い」
男が近寄ろうとすると女の子は逃げ出し、近くの仮設トイレに入って行った。
「なんだ、トイレか?おーい、家出でもして来たのか?」
男はそう問い掛けながら仮設トイレのドアをノックする。男は何を思ったのかこう声を掛けた。
「はーなこさん、遊びましょ……なんつって」
呟いた瞬間。トイレの扉がキイッと音を立てながら開いた。男が鉄パイプを地面に置いて中を確認すると、おかっぱ頭の女の子の姿は無かった。
「はぁっ!?マジかよ……どうなってんだ!?」
男はトイレの中を確認していると、地面に置いた筈の鉄パイプが勝手に宙を浮き始める。
「確かに入った筈なの──────」
振り向いた瞬間、鉄パイプが男の口の中を貫いた。男は仮設トイレの中で座り込む様に崩れると、鉄パイプから血が流れ落ちた。おかっぱ頭の女の子はボソッと呟く。
「望み通り遊んでやったぞ……ふんっ」
更に別の場所では、仲間達の死体を目の当たりにした男が慌てて車に乗り込もうとしていた。だが、男はあまりの恐怖で手が震えてしまい車の鍵を取り出す事に苦戦していた。ようやく鍵を取り出て車に乗ろうとした時、背中に生暖かい風がフワッと吹いた。男がゆっくり振り向くと暗闇の中白い物体がクネクネと動いているのが目に入った。
「な、なんだよアレ……」
男が目を凝らしてじっと見つめた途端。
「ひっひひっひひひひひひ!」
声をあげ、泡を吹いて倒れてしまった。白い物体が近付いて倒れている男の前に立つと男をゴミを見るような目で見下ろしていた。
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