ガールフレンド

「あっ、さっきはすいませんでした」

「いえいえ、私こそ横取りしてしまってすいません」

 

 互いに何度も頭を下げる。すると、女性が口を開いた。

 

「あの、もしよろしければお茶でもどうですか?さっきのお礼もしたいので……」

「……えっ?」

 

 女性の言葉に俺は言葉を失ってしまった。女性は恥ずかしそうに頬を赤くしている。

 

「ダメですか?」

「い、いえまさか。誘ってもらうなんて久しぶりなもので戸惑ってしまいました。俺で良ければお供します」

「良かった。すぐそこのスタ○があるのでそこに行きますか?」

「はいっ!」

 

 俺と女性はSTA○BUCKS○○店に向かいコーヒーを注文し、他愛のない話しを始めた。彼女の名前は【山口恵美】という。恵美さんも彼氏と最近別れて寂しさを紛らわせる為にTS○TAYAでDVDを借りに来たと言う。

 

「ほんとに借りられて良かったです。龍星さん、改めてありがとうございます」

「いえいえ」

 

 緊張を解す為にアイスコーヒーをがぶがぶ飲む俺。すると、恵美さんが俺の目を見つめて、

 

「あの、龍星さん」

「は、はい?」

「あの……良かったら、LI○E交換しませんか?」

「ンゲッホゲッホゴホゴホッ!!」

 

 なんっだと!?

 

 恵美さんの言葉に俺は盛大に噎せてしまった。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「ゲッホゴホゴホ!大丈夫、大丈夫です」

 

 落ち着きを取り戻すと、恵美さんがスマホを取り出してLI○EQRコードを見せて来た。

 

「読み込んで下さい」

「あっ、はい。ではお言葉に甘えて失礼します」

 

 俺はQRコードを読み取り、恵美さんのLI○Eをゲットすることに成功した。

 

「夜に送りますね」

「は、はい!」

「それじゃ、先に失礼します」

「はい、お疲れ様でした!」

 

 恵美さんと別れて俺は上の空状態で家に帰った。おくまに挨拶もせずにスタスタ茶の間に行くと、お化け達が団欒を楽しんでいた。

 

「あ、おかりー。随分遅かったじゃん」

「うん」

「おい龍星、わしは腹が減った。早く何か作ってくれ」

「うん」

「おかえり、りゅーせー」

「うん」

「うんうんじゃなくて、何か言いなさいよ」

「うん」

「清々しい程の上の空だな。何かあったんじゃないか?」

「龍星さん、どうかしたんですか?」

「お身体でも壊してしまいましたか?」

 

 お化け達に色々言われても俺は上の空だった。すると、ピロンとLI○Eの通知音が鳴り響いた。俺は取り憑かれたかの様にスマホを操作する。

 

「あたしらを無視してスマホいじるなんて何に夢中になってんの?」

 

 メリーが俺のスマホの画面を覗くと……。

 

「うわぁぁぁっ!!龍星が女とやり取りしてる!」

「な、なんじゃと!?」

「龍星さんにガールフレンドが!?」

「わー!龍星モテモテ」

「今日はお赤飯にしましょーね!」

「なんかの間違いなんじゃないか?こんな変態に女だと?」

 

 だーりんが俺のスマホの画面を覗こうとしたその時。

 

「マ゛ッ!!アッ!!」

 

 思いっきり威嚇した。思わずだーりんはビクッと怯む。

 

「な、なにもそんなに怒る事ないだろ」

「マジで龍星にガールフレンド出来たの?信じられないんだけど?」

「そういえば、私を封印していた一族の巫女が龍星の彼女だったらしいな。巫女に専念する為にコイツを捨てたと言うが」

「あー、そうだった。んじゃ嘘じゃなさそうだね」

 

 メリーとだーりんが話していると、LI○Eの通知音が鳴る。俺は画面を確認すると、

 

「おぬあっ!?」

「こ、今度はなんですか!?」

「恵美さんが俺とデートしてくれるって!!」

 

 俺の言葉にお化け達は驚愕する。

 

「えっ、いくらなんでも展開早くない!?」

「た、確かに。お主、何かに騙されてるんじゃないのか?」

「そうだよ!後から大男が出てくるパターンよコレ!」

 

 メリーや花ちゃん、すーちゃんが色々言ってきた。俺は指を止めて振り返る。

 

「なんでそんな事言うの!?お前ら恵美さんの事何も知らない癖に!」

 

 怒りに満ちた表情でお化け達を睨む。

 

「そ、そうだけどあたしらはあんたが悪い女に騙されてるんじゃないかって心配してるのよ!デートってそんなすぐに出来るわけないじゃん!」

「メリーの言う通りじゃ、もう少し様子を見てからでも遅くないんじゃないか?」

「うるさいうるさーい!恋のデッドレースはもう始まってんだよ!いいか?これはもう競走なんだよ!モタモタしてたら競走に負けちまうだろうが!!」

 

 熱く語っていると、呆れてるのかお化け達の目から光が消えた。だが俺はそんなのお構い無しに立ち上がる。

 

「こうしちゃ居られねぇ!明日の為に服を選ばなければ!!」

 

 俺はドタバタと階段を駆け上がって部屋に閉じこもった。お化け達は集まる。

 

「ねぇ、龍星はあー言ってるけど、みんなどう思う?」

「うーん。そうじゃなぁ……確かに怪しい部分はある」

「あの変態にガールフレンドができる訳がないんだ。私は信じないぞ」

「だーりんさん、いくらなんでもそれは言い過ぎですよ!」

「確かに助平ではありますが、人間相手の時は至って普通ですよ?」

「あれだけ言っても私たちの言葉聞かないんだからほおっておいていいんじゃないの?」

 

 お化け達が話し合っている中、ゲージの中からおじさんが声を掛ける。

 

「まったくうるせぇなぁ。そんなにあんちゃんの事が気になるんだったら明日お前ら全員で尾行でもすりゃいいだろ?」

 

 お化け達は「その発想はなかったわ」と言わんばかりの顔をする。そして、顔を見合わせたお化け達は不気味な笑を浮かべた。

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