噂の電話ボックス
───────それから数日後、商業施設の応援期間が終了した。最終日の夜、俺は田中さん達と共に仕事終わりに新年会を兼ねてお別れ会を開いて貰った。行きつけの居酒屋の座敷に座り、ビールを片手に田中さんの金言に耳を傾けていた。
「えー、皆さん。今日で福島龍星君の応援期間が終了しました。慣れない環境で大変な中来てくれてどうもありがとう。個人的にも色々助けて貰った。今後、龍星君に何かあったら我々は全力で助けよう! 福島くん、お疲れ様でした!乾杯!」
「「「乾杯!」」」
俺達はジョッキで乾杯をし、ジョッキを軽く合わせる。ぐびっとビールを飲んだ後、俺は拍手を送られた。
「ありがとうございます。俺も楽しかったです」
「さぁさぁ、今日は私の奢りだ!どんどん食べて飲んでくれ!」
田中さんの粋な計らいで俺は楽しい一時を味わうことが出来た。俺がメニューに目を通していると、田中さんに声をかけられた。
「福島くん、飲んでるかい?」
「はい、頂いてます!」
「そうかそうか。そういえば、福島くんは帰り道怖くないのかい?」
帰り道?
俺は田中さんの言葉に首を傾げる。
「帰り道……?○○寺の事ですか?」
「いや、そこも有名だけど……君は知ってるかい?○○トンネルの先にある電話ボックスの幽霊」
田中が電話ボックスの幽霊と言った瞬間、渡辺さんが会話に混じって来た。
「○○トンネルの電話ボックスなら俺も学生時代に聞いた事あるよ。部長、まさか信じてるんですか?」
「いや、私も信じていないんだが渡辺君も福島くんの特殊な力を知ってるだろう?」
田中さんが渡辺さんにそう言い放つと、渡辺さんは顔を引き攣らせる。
「そりゃまぁ……監視カメラを見てる時、誰もいない所に指差して「あっ、幽霊います」とか言い出しますからね」
すいません、どぉーしても気になっちゃって。
俺は田中さんに電話ボックスの話を尋ねて見た。
「その電話ボックスの話、詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
「ああ、いいよ」
田中さんの話によると、駅から徒歩で数分で行ける○○道路改良バイパス道路上にある○○トンネル出口の電話ボックスだと言う。その噂の電話ボックスはこの街の心霊スポットとしても有名で、Go○gle検索してみると○○トンネルに付近にある電話ボックスには女性の霊が出ると噂が絶えないらしい。
「なるほど、まぁどこにでもある噂話ですね」
俺が素っ気ない様子で言うと渡辺さんが、
「福島くんが食い付いて来ないって事はやっぱりデタラメなんじゃないですか?」
「今Goo○leで調べて見ましたけど、この心霊写真からも何も感じませんしね。作り物ですよ」
俺は渡辺さんにスマホで写っていた心霊写真を見せる。
本当は本物なんだけどね。
「これがニセモノ!?よく出来てるなぁ……」
「今の時代ならこれくらい出来るんじゃないですか?」
「確かにそうかも知れないね。心霊番組も胡散臭い映像ばかりだしな」
これは本物ですけどね?
「はいっ!季節外れの心霊トークは止めて飲み直しまょ!」
「そうだな!飲も飲も!」
俺はスマホの画面を消してメニューを見直した。
2時間後。
飲み会も終わりを告げて俺達は解散する事にした。俺は駅に帰る途中鼻歌を歌いながら暗い夜道を歩いていると、
「トン、トン、トンカラトン」
「ふんふーん♪」
「トン、トン、トンカラ……うわっ!」
「ふんふーん……。ん?」
交差点でトンカラトンとバッタリと出会した。トンカラトンは自転車に急ブレーキをかけて止まった。
「貴様は福島龍星!?フフフ、フハハハハハ!此処で会ったが百年目!今日こそ貴様の首を貰うぞ!」
「デュフフ……久しぶりだね【トンちゃん】会いたかったよ」
トンちゃんは目をギラつかせながら偽物の刀を俺に突き付けるが、俺はいやらしい手つきをしながらジリジリと近付く。
「ま、まて!今のは冗談だ!もうボディチェックはやめてくれ!」
俺が近付く分刀で牽制しながらトンちゃんは距離を取る。埒が明かない為、俺は立ち止まった。
「っち、ノリが悪ぃな」
「きょっ、今日は随分口が悪いんだな。酔っているのか?」
「まぁね。あっ、そうそう!トンちゃん今暇?」
「暇なわけがないだろ?私は剣士、ここら辺をパトロールしなければならいのでこれにて失礼する! では、さらばっ!」
トンちゃんが自転車に跨った瞬間、俺は自転車のハンドルに手をかけた。
「硬いこと言うなよトンちゃん」
「さっ、さっきからトンちゃんトンちゃんと気安く呼ぶなっ!私には誇り高き真名がある!さぁ、貴様も呼ぶが─────」
「トンカラトン」
「……あっはい」
「はい。パトロールは終了!実はさ、この先にある○○トンネルの電話ボックスに行こうと思うんだけど、一緒に行かない?」
俺が○○トンネルの電話ボックスと言うと、トンちゃんは納刀しながら答えた。
「○○トンネルの電話ボックス?ああ、あそこか。あそこに確か、名無しの地縛霊が居たはずだ」
「へー、その子に名前ついて無いの?」
俺がそう尋ねると、トンちゃんは顔を濁らせる。
「まぁ、私の様に都市伝説になればおのずと付くのだが、まだその域まで達して無いのだろう」
「なるほど……トンちゃんその域まで来てるの?」
「当然だっ!だからトンカラトンと呼ばれているのだっ!」
「そーか、だから白のレースのパンティを履いてるのか納得!」
俺が1人で納得していると、顔を真っ赤にさせながら殴って来た。
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