俺の能力
そう唱えた途端、メリー達が騒ぎ出した。
「いやいや、なにその呪文!?大地の精霊でも呼ぶつもりなの!?」
「貴様、仏教や宗教をバカにしてるのか!?もう少しマシなのを考えられなかったのか!?」
「絶対世界中の宗教団体を敵に回したわよ」
「あの、龍星さん。他に思いつかなかったのですか?」
と、騒ぎ立てるお化け達。俺は悪びれもなく反論した。
「そうは言ってもこれが思いついちゃったんだから仕方ないだろ?なんだよ皆して俺をバカにしやがる!!」
「バカにしてるのはあんたでしょ!?何よアラスタッタピィーヤって」
メリーがそう叫びながら俺の頭を叩く。だがそんな中、すーちゃんが首を傾げながら口を開いた。
「確かに変な呪文なんだけど、実際にこうしてお岩さんの目を治したのは事実だよね。 ねぇ、龍星?私達に唱えたらどうなるの?」
言われてみれば…………。
すーちゃんに言われた俺は考え込む。
「すーちゃんの言う通りだわ。『アラスタッタピィーヤ』を使ったのはテケテケの下半身を付けた時と今回のお岩さんの時だけ。どっちも治す目的に使っただけだからどうなるか俺も分かんない」
「テケテケ!?あんたテケテケに会ったの!?よく無事だったわね!?」
テケテケと言った途端、メリーが目を見開きながら騒ぎ出す。だが、俺はあっけらかんと返す。
「まぁ、研修先で仲良くなったんだよ。その時下半身付けてあげたの」
「ふーん。面白そうだから花子達にさっきの唱えて見てよ」
メリーが花ちゃん、くねちゃん、すーちゃん、はーちゃんの4人に指を指す。
「メリー!貴様、何を言ってるんじゃ!?」
「しれっと自分だけ逃れようとしてんじゃないわよ!?」
「万が一浄化されちゃったらどうするんですか!?」
「こ、こわい…………」
怯える4人の前に俺は腕をぶんぶんと振り回して、
「俺も気になるからちょっとやって見る。お岩さんとお菊さんは離れててね?」
「わ、分かりました。お岩様、こちらに」
「お、おぉ…………」
お岩さんとお菊さん、そしてどさくさに紛れてメリーも俺から離れる。離れたのを確認した俺は4人に向かって右手をかざした。
「アラスタッタピィーヤ!!」
唱えると、4人の体は消滅してはいなかった。身構えていたメリー達が恐る恐る俺に尋ねる。
「な、なによ。何も起こらないじゃない」
「何だ、ただの虚仮威しじゃないのさ」
「み、みなさん?大丈夫ですか?」
お菊さんが花ちゃん達に尋ねると、
「ゲホッゲホッ! 急に咳が止まらん! ゲホッゲホッ!」
「ヘックシ!ズズッ!鼻水が止まりません!それに寒気が…………」
「な、なんか喉が痛くなって来た…………イガイガする」
「お腹痛い…………」
4人ともバラバラに症状が現れた。
「風邪の症状じゃないのよ!どうせなら統一させなさいよ!」
「こ、これはこれで不快だね」
「そ、そうですね…………けど、成仏しなくて良かったですね!」
お化け達の効果を見た俺は今までの事を思い出して整理し始めた。
どうやら俺の能力は【幽霊に触れたり、俺が身に付けている物に触れたり、話せたり、身体を治したり、風邪に似た症状を与える】という事らしい。テレビや映画の様に悪霊を退治したりとかは全く出来ない様だ。
「黙って考えてないで早く元に戻してあげてよ!可哀想でしょ!?」
「わかったよ、アラスタッタピィーヤ!!」
メリーに促されて再び唱えたが、4人の症状はさらに病状が悪化した。
「うぇぇおぇぇっ!!」
「頭が割れるぅぅぅっ!!」
「寒い寒い寒い!」
「お腹痛いよぉぉ…………」
「余計酷くなってるじゃない!」
「あ、あれ?おかしいな!?」
「もしかして、身体と言っても風邪の症状は治せないんじゃないのかい?」
「約立たずじゃないの!どうすんのよこの悲惨な状況!?」
「とにかく皆さんを運びますね!」
お菊さんが慌ただしく4人を運び出して行く。それを見たお岩さんは呆れた様に溜息を吐きながら、
「なんか、殺る気を削がれてしまったな。今回は帰らせて貰うよ」
「今回はじゃなくてもう二度と来ないで貰えると助かるわね」
「伊右衛門様じゃないけど、龍星が気に入っちまんだんだ」
不気味に笑を浮かべるお岩さん。それを見たメリーは、
「あっそ、なら好きにしたら?セクハラされても知らないからね?」
「ふん、望む所さ。んじゃ、あたいはそろそろ帰るよ。じゃあね、龍星」
「えっ?あ、うん。またね」
お岩さんに軽く会釈をすると、お岩さんは壁をすり抜けてそのまま帰って行った。
「やれやれ、ようやく片付いたな。風呂でも入ろうっと」
俺が着替えようとしたその時、棚からバタバタとDVDが落ちて来た。
「もー、あんた何やってんのよ」
「あちゃー。あっ…………」
「なに?どうかしたんですか?」
お菊さんが俺を覗くと、俺はレシートを確認して延滞しているのに気付いて冷や汗をかいている所だった。
「返却すんの忘れてた…………」
「つーか、名前が全部卑猥なんだけど?夜な夜な1人でこんなの見てんの?」
「卑猥?何処が卑猥なのか言ってみなよ」
俺はメリーに作品の名前を言わせようと試みる。
「えっ、ま、マジックミラーって、何言わせんのよ!」
「おい、わしらはどうなるんじゃ…………」
その後、アラスタッタピィーヤを唱えられたお化け達は3日間効果が続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます