ボデーチェック

 トンカラトンの豊満な胸を鷲掴みにした途端、トンカラトンは悲鳴を上げた。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

「貴様、何をしてる!?唐突に揉むな!」

 

 トンカラトンは胸を両手で防御する。花ちゃんは慌てて俺を止めてきた。

 

 あんな服装であんな乳してたら…………ねぇ?

 

「なんなんだ君は!?突然私の胸を揉まないでくれ!」

「あ、はじめまして。警備員の福山龍星です。」

「トイレの花子じゃ」

 

 自己紹介をした花ちゃんと俺は45度の角度まで頭を下げる。トンカラトンは涙目になりながら刀に手をかける。

 

「私の胸を揉んで生きて帰れると思うなよ!?我が妖刀の錆になるがいいっ!!」

「うわっ、武器持ってんじゃん!」

「ちょっと待て」

 

 俺がトンカラトンにビビっていると、花ちゃんが俺の腕を掴む。すると、花ちゃんはトンカラトンの刀を指さす。

 

「妖刀と言ったな。よし、抜いてみろ」

「なっ、なんだと!?怖くないのか!?」

「どうしたの?、本物だったらやばいじゃん!ヤダよ、俺も厨二病になっちょうよ!!花ちゃん、何とかしてよ!」

 

 少し怯みながら花ちゃんに懇願するが、花ちゃんは堂々たる態度でトンカラトンを挑発する。

 

「いいんだな!?よし、良いだろう!見せてやる!抜くぞ!」

 

 まんまと挑発に乗ったトンカラトンは腰にさしていた刀を抜いた。抜いた刀は街灯の明かりで刃がキラリと輝いていた。だが、花ちゃんは何を思ったのかズンズンとトンカラトンに近付いて刀をじっと見つめる。

 

「な、なんだ?私の刀が気になるのか?」

「龍星、龍星」

 

 花ちゃんは何故か俺を手招きして呼び寄せる。

 

 どうしたんだろう。

 

 俺は首を傾げながらジリジリと近づくと、花ちゃんは刀に指をさした。

 

「ほれ、よく見てみろ。この刀偽物じゃ」

「え?…………あっ!」

 

 これ、お土産屋さんによく売ってるやつだ!

 

 偽物と見抜かれたトンカラトンは恥ずかしくなって来たのか、突然喋り出した。

 

「ち、違う!これは本物妖刀だ!偽物の様に見える妖刀なんだ!」

「耳まで真っ赤になってるぞ?」

「うるさいっ!」

「偽物でも危ないからその刀、いや、お土産を渡しなさい」

「お土産って言うな!」

「これ以上揉めたくない。そのおもちゃを渡せ」

「おもちゃって言うな!」

 

 トンカラトンは涙目になりながら渋々刀を渡して来た。花ちゃんが受け取ると、俺は疑り深く尋ねる。

 

「他にもなんか隠し持ってるんじゃないの?」

「持ってない!」

「んじゃボディーチェックしていい?」

 

 俺が両手をワキワキさせると、トンカラトンは顔を青ざめる。

 

「い、嫌だ!その手の動きが気に入らない!」

「なんだよ、ただのボディーチェックだぞ?」

「いや、だからその手つきが問題だと言っているのだ」

 

 花ちゃんは鞘で俺の頭をコツンと叩く。頭を擦りながら俺はトンカラトンに顔を向ける。

 

「分かった、ちゃんとするからボディーチェックさせてくれ」

「わ、分かった。トイレの花子とやら、見張っててくれ」

「”花子さん”な?あまり生意気な口を聞くなよ小娘」

「す、すいません。花子…………さん」

 

 ギロリとトンカラトンを睨み付ける花ちゃんは腕組みをしながら俺を見張る。俺は生唾をゴクリと飲み込んでトンカラトンの肩から触れ始めた。ムチムチとする体を触り、武器が隠されてないか確認する。

 

 肩には武器は無さそうだ。

 

 そのまま左腕、右腕をチェックする。

 

 うん、ここにもない。

 

 そして、上半身を触り始める。ニットの上からでも分かるほどトンカラトンの体の柔らかさを感じる。

 

 エッロ!!

 

 そして、スカートへと移った。スカートをポンポンと両手で挟みながら太ももを必要以上に触り始めた。ひんやりとする太ももを触っていると、段々興奮して来た俺は息を荒らげてしまった。

 

「はぁ、はぁ…………」

「えっちょっ!?コ、コイツ触り方がいやらしいっ!!」

「そう来ると思ってたわ!この変態がっ!」

 

 俺は花ちゃんにスパンと叩かれた。だが、歯止めが効かなくなった俺はトンカラトンのスカートを両手で掴む。

 

「真っ白な服装には真っ白なパンティがお似合いだよね…………」

「うわぁぁぁぁっ!!何をする気だ!?」

「パンツ見せてくれよぉぉぉっ!!」

 

 スカートを捲ろうとするが、トンカラトンはそれを防ごうとスカートを抑え付ける。

 

「止めろ!止めてくれぇぇっ!!」

「コラッ!何をしてるんじゃ!雄犬の様に発情しよって!離れろ!離せ  なんじゃ!?  こやつの力は!?」

 

 花ちゃんは刀を使って俺の首を締めながら引き剥がそうとするが、俺は岩のように重くなり悪霊の花ちゃんですら引き剥がす事は出来なかった。それを目の当たりにしたトンカラトンは羞恥心より恐怖心が強くなって来たのか、怖がり始めた。

 

「うわぁぁぁぁっ!!なんなんだコイツゥゥゥッ!?」

「龍星!頼む、離してやってくれ!泣いておるから!」

「も、もうダメだ…………ち、力が…………」

 

 トンカラトンは遂には泣き出してしまった。だが、俺は力が弱まったのを見計らって一気に捲りあげた。

 

 おお…………レース入りか。

 

「純情ぽく見えてたけど、案外ビッチっぽいところが─────」

「いい加減にせんかぁっ!!」

 

 パンティに手をかけようとした瞬間、激昂した花ちゃんが俺の顔面を蹴った。

 

「ここはわしに任せてさっさと逃げろ!」

 

 花ちゃんに促せれて離れた瞬間、トンカラトンはスカートを直し刀を奪い返して刀を抜いてバシバシと刀で殴り始める。

 

「男はみんなクズッ!お前もクズだぁぁっ!女の敵め、しねぇぇっ!」

「痛いっ!お土産の刀と言っても鉄の塊だから痛いっ!」

「もういいだろ、止めてやれ。後はわしが叱っておくから」

「ぐずっ…………はい」

 

 トンカラトンは刀を鞘に収めて自転車に跨ろうとしたが、ピタリと止まり、乗る前にもう一度俺の腹を蹴った。

 

「お前は私が必ず殺す!覚えておけ!」

 

 そう言い放ち、トンカラトンは暗闇に消えていった。花ちゃんは俺を足でつつきながら、

 

「ほれ、晩飯が遅くなる。早く帰るぞ」

「…………はい」

 

 俺と花ちゃんは家に着くまで口を聞かずに帰った。

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