夏の終わり〜♪

 濡れ女と遭遇してしばらくして、暑い暑い夏が終わった。秋の風が吹き始めた頃、俺の研修も後数日のみとなった。俺は土曜日の昼間からゴロゴロしながらテレビを見ていた。テレビではアナウンサーが楽しそうに○○山で紅葉が始まったのを中継していた。

 

《みなさーん、私今、○○山に来ていまーす!紅葉は今がピークですよ〜皆さんもどうですかぁ〜?》

 

 紅葉シーズンが始まったのか、山々は赤、黄色、オレンジなど様々な模様を出していた。俺はあぐらをかきながら見ていた。

 

「紅葉かぁ〜。もうすぐ研修終わるし、ちょっと遠出してみるか」

 

 俺は立ち上がって着替えようとしたその時、ふと思った。

 

 このままテレビの場所に行っても混んでるんじゃないか?

 

 そう考えた俺は久しぶりに”あの方”の力を借りようと思い、家から持って来たカバンから”あの紙”を取り出した。そのままテーブルに敷いて10円玉を設置した。コホンと咳払いをして、

 

「Heyコックリ」

 

 しーん。

 

「あれ?来ないなぁ…………教えてコックリさん」

 

 しーん。

 

「コックリ〜さぁーーーん?」

 

 まったく動かない10円玉を見つめて首を傾げていると、10円玉が動き始めた。

 

(_`Д´)_な ん だ よ ぉ !!

 

 やれやれ、ようやく動いたか…………。

 

「久しぶり、コックリさん。元気にしてた?」

 

 久しぶりなので他愛の無い話から始めてみた。すると、10円玉は忙しそうにスっスと動く。

 

 いまいそがしい!ヽ(`Д´#)ノ

 

 どうやらコックリさんも色々忙しいらしい。

 

 正直何をしてるか気になるが、要件をさっさと伝えてしまおう。

 

「あー、んじゃ手短に聞きます。この近くで紅葉がめちゃくちゃ見れる場所ありませんか?それさえ聞ければいいんで」

 

 淡々と俺が説明するとコックリさんの逆鱗に触れたのか、ものすごい勢いで10円玉を動かした。

 

 それくらいじぶんでしらべろ(#゚Д゚)<ボケェ!!

 

 ヤバい、めちゃくちゃ怒ってる。

 

「そ、そこをなんとか  お願いします、これっきりにしますから!」

 

 俺が紙に向かってペコペコと頭を下げると、

 

 ○○峠、そこならいまいちばんいいところ。んじゃね(・ω・)ノシ

 

「○○峠!?え、ちょっと山じゃ───────」

 

 コックリさんは余程忙しかったのか、あっという間に鳥居のマークに戻って行ってしまった。

 

 ○○峠か…………。

 

 コックリさんの言う通りの○○峠をスマホで調べてみた。

 

 ○○峠は、心霊スポットとして有名で、○○峠は、○○県と○○県の境にある。標高はおよそ640メートルで、○○峠とは江戸時代に江戸と○○県を結ぶ道のひとつとしても使われていた。心霊スポットとして有名な○○峠だが、その豊かな自然が生かされた観光スポットもたくさんある。紅葉を楽しみたいときや、ハイキングを楽しむこともできる。

 

「うーん。○○峠ならここから遠くないし、行ってみるか」

 

 俺はハイキングが出来るようにジャージ姿になり、リュックを背負って電車に飛び乗った。

 

 ─────────────────────

 

 電車に揺られて3時間後、ようやく○○峠に辿り着いた。駅の外には、お土産などを買える売店と喫茶店や、地元の食材を使った食堂などがあった。紅葉シーズンが来ているからか、かなりの観光客が見て取れた。

 

「紅葉シーズンはどこもいっぱいだな。さて、風景でも見て帰りますかぁ…………地図地図と」

 

 ○○峠の観光マップを眺めていると、

 

「あれ?奇遇じゃん、何やってんの?」

 

 え?

 

 聞き覚えのある声を頼りに後ろを振り返って見ると…………。

 

「テケテケ!?それに、ぬーちゃん!?」

 

 俺の目の前には、リアルドールの足を付け、バケットハットを被り防寒着を着たテケテケと濡れ女がいた。雨も降っていないのに濡れ女はこんな時でも湿っていた。幸い周りに人がいなかったので、俺は2人に声を掛けた。

 

「こんな所でなにしてんの?」

「あれからあたしら意気投合しちゃってさ、紅葉でも見に行かない?ってあたしが濡れ女を誘ったの」

 

 テケテケの話によるとぬーちゃんを助けた後仲良くなり、時々出掛ける程の仲になった様だ。それでここ○○峠に来た所、俺に出会したという。

 

「へぇ〜。幽霊同士でも仲良くなる事もあるんだな」

「まぁね。ってかアレから濡れ女も男が怖いとか言ってあちこち彷徨ってて暇そうだったから声掛けたのよ ね?濡れ女?」

 

 テケテケが濡れ女に話しを振ると首をコクンと頷かせた。

 

「ぬ、ぬーちゃん?久しぶり…………」

 

 俺がぬーちゃんに挨拶をしようとすると、以前のトラウマがあるのかぬーちゃんは逃げるように俺から避ける。

 

「ごめんごめん、もう何もしないから仲良くしよ?」

 

 気まずそうに俺が言うが、ぬーちゃんはテケテケを盾にしながら俺から隠れる。

 

 恥ずかしいのか?可愛いヤツめ。

 

「そんなに照れなくてもいいじゃないか」

「どこをどう見たら照れてると思うわけ!?」

「だって、隠れるから…………」

「あんたが怖くて隠れてんのよ!それ以上濡れ女に近付くな!!バカ!」

 

 テケテケが殺意を剥き出しにしながら俺に言い放つ。俺は渋々ぬーちゃんから距離を置いた。

 

「ほんとにごめん。お詫びの印に何か奢ってあげるからさ?」

「ったく………… 濡れ女、どうする?」

「…………ニヤリ」

 

 ぬーちゃんはやり返しのつもりなのか、ゲスな笑みを浮かべる。

 

「わかった。んじゃそこの喫茶店に入ろっか」

「りょーかーい。行くよ?濡れ女?」

「…………コクリ」

 

 俺はそのままテケテケ達を連れて○○峠の喫茶店に入って行った。

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