水も滴る変なやつ
7人ミサキ達と遭遇してから数日経ち順調に研修を続けていたが、俺はあれから海が大嫌いになった。今日も今日とて踏切で立ち止まっているとテケテケが近付いて来た。
「よっ、元気?」
「元気よ。もうすぐ2ヶ月だけど、研修は順調?」
「おん、順調順調」
そう他愛のない話をしていると、突然テケテケは俺の顔を伺いし出す。
「あ、あのさ…………も、もしね?嫌な事があったら海にでも行って息抜きしない?あ、あたしも付き合うからさ」
テケテケは頬を赤らめながら俺に言ってきた。
優しい…………けど。
「あーごめん。俺この前7人ミサキに絡んで嫌われたからさ海嫌いなんだよね」
「…………は?」
「いやね?俺も見抜けなかった悪いんだけど、あっち7人でさ〜あんな所やこんな所触れたから楽しかったんだけど───」
「もいいわ、聞いただけで寒気と吐き気がする。ってか誘った相手が悪かったわ」
「えっ、もしかして風邪?」
「ちっげぇし!!あーマジで気分悪い、帰るわ」
テケテケは先程まで頬を赤らめいたのに今は打って変わって青筋を立てながら去って行った。
具合いが悪いのだろうか?夏風邪は大変なのに。
そのまま踏切を渡り、社宅に戻った時俺は夕飯の買い物をするのを忘れてしまった。
「アイヤー!買い物すんの忘れてた!」
踏切をまた戻るのもめんどくさい、今日は隣町のスーパーに行って見るか。
考えた俺は踏切とは逆方向の道を歩き始めた。土手の階段を登ると、大きな川になっており、よく早朝におじさんやスポーツマンがランニングをしている道を歩き始める。
「この街に来て2ヶ月経つけど、大体把握出来てきたなぁ」
しみじみと呟きながらイオ○スーパー○○支店に入った。今日は火曜日で安売りセールをしてるからか、人が多かった。そんな中、冷やし中華の材料を買って帰ろうとすると、夕立ちが降って来た。
「うわぁ…………雨かぁ。仕方ない、ダイ○ーでビニール傘でも買うか」
ダイ○ーでビニール傘を買い足し、来た道を帰ろうとすると土手に黒のカーディガンに黒のスカート、前髪が垂れ下がった全身ずぶ濡れの女子高生か女子大生くらいの女の子が土砂降りの中立っていた。
傘を忘れて開き直ったのかな?
不思議に思いながらその子を見つめると、その子は俺に対してニヤリと笑った。
あっ、やべ!傘取られる!?
危機感を感じた俺は敵意が無いことを示す為にびしょ濡れの女の子に対して会釈をした。すると…………女の子は更に不気味にニヤリと笑った。怖くなった俺は、
「んっ!」
「…………?」
「んっ!!」
俺は昔の男の子が恥ずかしくてムキになりながらも傘を貸してあげるという仕草をした。びしょ濡れの女の子は不意をつかれたのか、挙動不審な動きをする。びしょ濡れの女の子が傘を握った瞬間、俺は駆け出した。
どうだい?カッコイイだろ?
自分に酔いしれながら俺は帰宅した。傘をバサバサとしながら水気を切り、玄関に入ろうとした瞬間、俺の視界に人影が映った。
「ん?」
社宅の入り口からびしょ濡れの女の子が立っていた。しかも、貸した傘を刺さずに。
なんで刺さないんだろう?びしょびしょになったから諦めたのかな?
このままでは可哀想だと思い、俺は手招きをした。
「おーい、傘返しに来てくれたの?そのままじゃ風邪引いちゃうよ?」
そう伝えるが、びしょ濡れの女の子はニヤニヤしながらこちらを見つめるだけだった。
何が面白いのかな?ニヤニヤしちゃって。
「ほら、こっちおいで?衣類乾燥機とか貸してあげるから」
すると、びしょ濡れの女の子はぴちゃぴちゃと音を立てながら俺に近付いて来た。そのまま玄関に入り、靴を脱ぐとびちゃびちゃの靴を脱いで茶の間に入って来た。
あーあ、廊下がびしょ濡れだよ。
俺は風呂を沸かしている間に、俺のバスタオルとワイシャツを取り出してびしょ濡れの女の子に手渡した。
「はい。女の子物の着替えとか持ち合わせてないからこれで我慢してね?お風呂はいって体温めてきていいから」
「…………コクリ」
びしょ濡れの女の子はそのまま脱衣所に行く。俺はその間に彼女が歩いた場所を雑巾で拭いた。衣類乾燥機の音がごうんごうんと聞こえて来たのでお風呂に入ったと俺は考えた。俺は別のバスタオルを使って自分の頭を拭き始める。
「いや〜久しぶりに濡れちゃったよ天気予報どうなってるかな?」
テレビのリモコンを操作しようとしたその時。
ぴちゃ……ぴちゃ……。
「ん?なにか忘れ─────」
後ろを振り返ると、ホカホカの湯上がった彼女が立っていた。だが、貸したばかりのワイシャツを濡らしながら。
「えっ、待って!?ちゃんと体拭いたの!?どんな状態なのそれ!?」
「………………ニヤリ」
「いやニヤニヤしてないで答えてくれる? あ、ちょっとその状態で座らないで!畳濡れちゃ…………あーあ!濡れちゃった!!」
ホカホカびしょ濡れの女の子は何食わぬ顔をしながら畳の上に体育座りをし始める。俺は慌ててバスタオルで彼女を拭き始める。
「もぉ〜!子供じゃないんだから!君お母さんに怒られない!?」
ある程度拭き終えてドライヤーで髪を乾かして上げようとしたその時、ようやく異変に気付いた。
「おかしいな、全然乾かないんだけど?」
彼女の髪や体を拭いても拭いても水気が取れる気配が全くなかった。
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